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2-世界は狙われている!たぶん(前)

「で、なんでおまえがここにいるの?」

「おまえじゃないにゃん。御前崎だにゃん」

「うまいこと言ったつもりか」


 ジト目で言った俺に、にゃははと不敵に笑うエセ猫、御前崎のぞみ。

 ここは俺のバイト先である、コンビニのレジである。


「客がいないときだからいいものの、客が来たらちゃんとどけよ?」

「本気でいないにゃん。これでコンビニの経営立ち行くのかにゃん?」

「ちょっと特殊だからな、この店舗」

「特殊……エロいにゃん」

「なんでだ!?」

「つまり客が店内に入り次第、万引きの嫌疑をかけて奥に連れ込んでにゃんにゃんげへげへと……」

「男の客の方が多いが、それをやって俺になんの得があるの?」

「そこはほら、ストレートにBLだにゃん」

「ねえよ」


 ちなみにこの店にいま客がいない大きな理由は、この店のメイン顧客層が近くの大学の生徒達だからである。

 大学と駅の間にある商店街の外れの方の、微妙な位置にあるコンビニとなれば、昼時を除いて客はほとんど入らない。夕方のシフトはかなり暇だ。


「つうかおまえ、学校外でも罰ゲーム継続してんの?」

「くせにしないととっさにこの言葉遣いが出てこなくなるにゃん。仕方ないにゃん」

「親御さんはどんな反応するの?」

「もう数年口きいてないにゃん」

「……なんか事情あるの?」

「いや単なる育児放棄だにゃん」

「重い! ていうか救いがない!」


 そんな超重量の案件をさらっと言われると、ものすごい対処に困る。

 御前崎はけらけら笑って、


「にゃははは。気にしなくていいにゃん。あんなクズども、義務教育が終わったらさっさとおさらばだにゃん」

「生活していくアテあんの?」

「当面は遠矢ちゃんが貸してくれる予定だにゃん」

「ああ……まあ、あいつならな」

「そしてきっちり幸せな家庭を築いて親に舌出してやるのにゃん。それがわたしの復讐にゃんよ」

「いいこと言ってるように聞こえるが、その途中でおじさんからお小遣いもらうのはどうなんだ?」

「仕方ないにゃん。親はどうやってもお小遣いなんてくれないにゃん」

「いや、でもリスクあるだろ。身体的にも、成長しきってない女の子なんだし」

「たいていの場合、シャワー浴びてくるからっつって時間を稼げば逃げる算段は立てられるにゃん」

「……そ、そう」

「まあシャワー室が外から見えるマジックミラー方式だったりしてバレることも多いんだけどにゃ。そのときは迷わず股間蹴りだにゃん」

「いや、それは十分なリスクだろ」

「色ボケしてる男はだいたい股間がお留守だからにゃ、成功率は100%にゃん。まあ、この前悶絶して泡を吹きながらうわごとみたいに「ありがとうございます、ありがとうございます……」とかつぶやいてしがみついてこられたときは、さすがにどうかと思ったけどにゃ」

「うわあ……」


 さすがにそれはどん引きってレベルじゃねえぞ……


「まあそれは可愛いレベルだにゃん。やっぱ本質的にやっかいなのは汗のにおいがたまらんとか言っていきなり押し倒してくる奴にゃ。キモいから死んで欲しいにゃ」

「いや、だからそれがリスクなんだろ?」

「否定はしないにゃ。というか、この前はさすがにやばかったにゃん。いきなり肩関節を外されてナイフ突きつけられたからにゃ」

「……おまえ、よく生きてたなあ」

「かろうじてスタンガンが間に合ったにゃん。警察に突き出したら大量殺人犯だったらしくて、金一封もらえたんにゃけど、同時に補導されちゃったにゃん」

「まあ、そうだろうな……」


 ヘビーな生き方してんなあ、こいつ。


「つうか、いまのうちから遠矢を頼っちゃだめなの?」

「さすがに遊行費を他人にたかるのは気が引けるにゃん」

「その倫理観は間違ってはいないが、なんでそこでおじさんにたかる方向に行くかな……」

「なんだったらお兄ちゃんが養ってくれるにゃん? おっぱいくらい触らせてやるにゃよ」

「悪いがおまえは好みじゃないのでパス」

「残念だにゃん……」


 割とマジで残念そうに言う御前崎。

 まあ、そもそも金がないんだけどな。俺も。


「安定収入が……欲しいにゃん……」

「俺に無茶言うな。

 まあ、勉強だけはしておけよ。学歴は完全ではないが、大きな武器だ」

「そういうお兄ちゃんは大学にも行かずにバイトにゃん?」

「うるせえな。就職はできたんだよ。すぐクビになったけど」

「なにかへまでもしたのにゃん?」

「そりゃあ……ああ、ちょっとタンマ。おまえちょっと一歩後ろに下がれ」

「? なにがにゃん? 客は来てないような……」

「いいから。ほれほれ騙されたと思って下がる下がる」

「そもそも騙されるのが嫌いなんだけどにゃー……」


 言いながら、後ろに一歩下がる御前崎。

 直後、ひゅがっ! と、光の帯がその目の前を通過して壁にぶつかって爆発した。


「ん、よしよし。無事よけられたな」

「ってなにごとにゃん!? いまのレーザー兵器っぽいなにかは!?」

「なにごとって、霊障だよ霊障。ほれ、さっきから誰かが結界張ってるだろ」

「いきなり中二時空に飛ばされても対応できないにゃん!?」


 パニクる御前崎。……あー、そっか。霊感がないとこれ、見えないのか。


「いやわりとしょっちゅうあるぞ最近? このあたりで霊能バトルしてるグループがいるっぽくてな。たぶん世界の命運とかがかかってるんだろ、知らんけど」

「気楽に言われても困るにゃん! どうやって対処するにゃん!?」

「大丈夫だって。結界内の被害はご都合的に結界が解けると修復されるから。人間を除いて」

「わたしたちはちっとも大丈夫じゃないにゃん! 防御結界とか張れないのにゃん!?」

「無茶言うなよ。俺はただ霊感あるだけの普通の人間だし。攻撃の前兆くらいは察知できるから……お、御前崎。ちょっと左にずれないと危ないぞ」

「わわ!?」


 きゅががっ! と御前崎のいた空間を薙ぎ払う光の閃光。


「んー、なんか今日は流れ弾が多いな。人数が多めなのかな?」

「ひいいい! 世界の裏でこんな戦いが行われてるなんて初耳にゃん!」

「そりゃまあ、霊感ないと普通結界内に入れないからなあ。普通の奴はわかんねえよ」

「じゃあなんでいまわたしはここにいるにゃん!?」

「この店舗、簡易結界になってるから。霊障に反応して見えるようにしてくれるっつー機能があるんだよ。だからこの内部にいる限り近場で結界が張られたら取り込まれるっつーか」

「なんでそんな無駄機能つけたにゃん!」

「便利なことも多いんだよ。霊障には祟りとかそういう地味なのもあるからな。客にへんなのが憑いてきて店舗に移ったりしたら大事だろ」


 おかげで、霊感がある店員しか雇えないというへんな制約がついちゃったりしているが、まあそれはご愛敬である。


「あ、上から来るぞ。どこでもいいから移動」

「ひいいい! もう嫌にゃー!」


 どがーん、と上からビームが降り注ぎ、ちょっと前まで御前崎がいた場所を貫く。


「さ、さっきからなんかわたし一人だけ集中砲火にゃん!? どうなってるにゃん!?」

「いやさー、こういうの見てるとなんか切なくなるよな。マンガとか読んでても、この主人公が撃った気弾とかどっか流れ弾になって無実のひと殺してるんじゃね? とか思っちゃってさ」

「話を聞けにゃー!?」

「あ、一歩右な」

「ひー!?」

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