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9-ラーメン大好きアルシンドさん(後)

 そしてグルメバトルは無残な結果に終わった。


「味が……味が濃すぎて……入れたにんにくが多すぎた……」

「さっぱりすると思って入れたのに……酢を入れすぎて……うえっぷ……」

「おまえら、ひょっとしてそろいもそろって馬鹿か?」


 ラーメン屋前でorzの体勢でつぶやく二人の馬鹿妹分を見て、俺はあきれた顔で言った。


「ていうか、最初から言っただろうが。俺の食い方を見てアレンジすれば自然にうまくなるって。なんでガン無視してオリジナルに走るの?」

「それじゃあ勝負にならないっていうか、勝てないじゃん!」

「兄者のやりかたパクって勝ったんじゃ意味ないんだよ!」


 口々に言う二人。案外こいつら同じ人種なのではなかろうか。


「ていうか見てなかったけど、兄貴はどんな食い方したわけ?」

「ニンニク控えめ、刻み生姜と刻みタマネギ多めで、あとある程度経ったところで水を使って舌の上の脂分を流して食った」

「「絶対うまいやつ!」」


 悔しそうに言う二人。


「くっそーこうなったらリベンジだ! 兄貴、二軒目行こう、二軒目!」

「そうだよ兄者! これじゃ勝負になってない! 次は別種類のラーメンで勝負だ!」

「別種類……ねえ。じゃあこの近くにある店っていったら、アレだな」

「あれ?」「というと?」


 口々に言うふたりの妹分に、俺は告げた。


「鶏ガラ系で独特なチェーン店があるんだよ。そこ行こう」



--------------------



「あ、ここ知ってる! ラーメンのアニメで見た!」

「ボクもボクも! 漫画読んだことある!」

「はいはいおとなしくなー。ラーメン屋ははしゃぐ場所じゃなくて、飯食う場所なんだからな」


 大騒ぎしそうな二人を制して、店に入る。

 と、桜がドヤ顔で言った。


「ふ……あたしは知ってるわよ。この店のラーメンは、しばらく他の付け合わせを食べて麺が汁を吸うのを待って、それから食べるのが通なのよ。いわゆるカルボナーラみたいな味ね」

「ふふん、ボクだって知ってるよ。この店にはこってりとあっさりの中間、こっさりって隠しメニューがあるんだよ。それを頼むのが本物の通なんだよね」


 口々によくわからないことを言う二人には構わず、俺は注文を取りに来たお姉さんに対して


「あ、俺はあっさり一つで」


 と、かるーく告げたのだった。



--------------------



 そしてこの二戦目も無残に終わった。


「いくらなんでも……いくらなんでも濃すぎる……うええ……」

「こっさり、うちではやってないんですよって……なんで……」

「どうしておまえらはそう毎回自爆するの?」


 俺はジト目で、いわゆる失意体前屈状態の二人を見ながら言った。


「ていうか!」


 がばっと起き上がったのは桜の方である。


「あっさりって! あっさりってどうなの!? この店来てあっさりってあり得なくない!?」

「そうだよ兄者! ネットにも書いてあったよ! この店であっさり頼むやつはなにをしてもダメって!」

「そんな他人の評価に惑わされるやつが悪い。俺ここのあっさり好きだよ、普通に上質な醤油ラーメンで」


 まあ、こってりの方も好きなのだが。今回は家系からのはしごということもあり、身体が濃い味を受け付けにくいだろうと読んであっさりを選んだのだ。

 あと『なにをしてもダメ』ってのはひどいと思う。書いたやつは反省して欲しい。


「うううううう、納得いかない! リベンジ! 兄貴、リベンジもう一戦!」

「そうだよ兄者だけうまくいってるのずるい! 今度こそおいしく食べられるところ!」

「おまえら……日にラーメン三杯とか、確実に太るぞ?」

「「それでもいいから!」」


 後に引けなくなった表情で言う二人に、俺はため息をついて、


「よし、じゃあ無難なところに行こう」



--------------------



 そして今度こそ三人満足して、店を出ることに成功したのだった。


「いやー、メニューに直接『おいしいラーメン』って書いてあったときはどうかと思ったけど、想像以上においしいラーメンだったね!」

「ボク、白菜があそこまでラーメンに合うなんて思わなかったなー。あれは発明だよ! すごい!」

「そうか。おまえたちが満足できてなによりだ」


 ようやく溜飲を下げたとおぼしきユリーカと桜を連れて、俺は帰宅するべく歩いていた。

 桜の家は途中までルートが一緒というのもあり、またもう夜のいい時刻なので、念のために送っていくことにしたのだ。

 ユリーカ? あいつはUFOを隠さなきゃいけないのでいまうちに居候中。


「でも兄者、途中でなにか入れてなかった? あれなんなの?」

「ニラだよ。あそこニラはただでトッピング追加できるんだ。辛くてうまいぞ」

「ええー!? 気づかなかった!」

「あたしも! なんで先に言ってくれないの!?」

「いや、そんなこと言われてもな……」

「くそー、結局グルメ対決は兄貴の全勝か……あれ、でもなんで対決してたんだっけ?」

「ボクも覚えてない。なんでだっけ?」


 不思議そうに見合わせる桜とユリーカ。仲良くなったようでなにより、である。

 と。


「おう、昨日ぶりだな」

「あ、昨日の野郎じゃん!」

「あ、ども」


 昨日、桜にそそのかされてやり合った剣道家の男とスケバンに出くわしたのだった。

 桜は首をかしげて、


「なに? アンタこんな時間になにしてんの?」

「ラーメン食いに行くだけだよ! 彼氏が珍しくおごってくれるって!」

「まあ、そんな気分でな」


 爽やかに微笑む男。うん、やっぱこのひとはいいひとだ。

 と、そこで桜が、


「はあ、ラーメン? アンタ、ラーメンをうまく食えるだけの能力あるの?」

「馬鹿にすんなアホ! アタイがその程度できないほど能なしだと思ってるのか!」

「む。なにさこの女。ラーメンの奥深さも知らずによくそんなことが言えるね」

「……おい。まさかおまえら……」


 俺は慌てて、止めようとしたのだが。


「「「グルメバトルだ!」」」


 一手、遅かった。



--------------------



 ちなみに。

 この後行った店はいわゆる二郎系で、ただでさえ三杯ラーメンを食べてる桜とユリーカは食い切れなくてギブアップ、スケバンの方はちんたら食ってたら汁を麺が吸いすぎてギブアップという惨憺たる結果に終わったのだが……それは余談である。

 なんでこいつら、ラーメン一つまともに食えないんだろうな……という顔をしながら、俺と剣道家の男は楽しく食べ合い、少しだけ仲良くなった。

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