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1-俺の妹と前科者クラブ(前)

「ところでお兄様の名前はたからかず、わたくしの名前は財部ひよりと申します。今後ともよろしくお願いいたしますわ」

「誰に言ってるんだおまえ」

「いえ。なんとなく」

「なんとなくで虚空に話しかける妹はやだなあ……」

「失敬な。ただ単に、名字が同一だと提示することによって、妹分とかではなくちゃんとした妹としてのポジションを確保しておきたかっただけですわ」

「だから誰視点でのポジションだよ」


 まあ、そんなのはどうでもいいのだが。


「つうか、いくら親が海外だからって俺が毎回毎回保護者として呼び出されてるってのはどんなもんなんだ?」

「どうかお気になさらず。もう十八歳なのに大学にもいかず、かといって定職にも就かずにぶらぶらしていらっしゃる暇人のお兄様が社会に貢献する数少ないチャンスですわよ」

「人聞き悪いこと言うなよ! 会社はクビになっただけだよ!」


 というか、そこを容赦なくえぐるか……恐ろしい妹だ。

 ちなみにここは中学校の廊下。補導から帰ってきた妹を連れて、先生に平謝りした帰りである。


「で、さっき先生から、おまえの部活動をちょっと見張っててくれないかと言われたんだが、おまえらは普段どこに集まってるんだ?」

「部活動……前科者クラブですの?」

「ああ」


 なんで教師が見張らないんだとは思ったが、こちらが謝罪する側である手前、口には出さなかった。

 まあ、たぶん教師も怖いんだろうな。つうか誰だって近づきたくねえよ、前科者クラブ。


「まあ、よろしいですけれど……クラブと言っても同好会ですから、部室などは与えられておりませんわよ?」

「あ、そうなんだ」

「ええ。ですから空いた部室を適当に乗っ取っておりますの」

「おい待て犯罪者」

「失敬ですわね。乗っ取ってからいままで、当局には一回も注意されておりませんわよ」

「それはそれで問題だが、注意されてないからいいってことにはならねえよ」

「うふふ、部室の前にずらりと並べた木刀がよほど効いたのかしら」

「ひどい話だな!」


 ていうかこの妹、間違いなくスケバンとかそういうのだと思われてるだろ。絶対。


「つうか、そのクラブは他にどのくらいの人間がいるんだ?」

「ああ、十人くらいおりますわよ。一応」

「けっこう多いな! 嫌だけど!」

「まあそのうち六人は本格的に塀の向こう側へ行ってしまわれましたので、いまアクティブなのは四人ですけれど」

「もっと嫌だ!」


 どうなってんだよ、この中学。

 俺がいたころには、もうちょっと治安よかったような気がするんだが……


「さて。着きましたわ」


 言っているうちに着いたらしい。さっきの宣言通りに入り口付近の傘立てに立てられた無数の木刀は、この際無視することにする。


「入っていいか?」

「どうぞどうぞ。わたくしが許可致しますわ」

「じゃ、おじゃまします、と……」


 がらがらがら。と俺は扉を開ける。

 がらがらがらぴしゃん。と閉じた。


「よし、帰るぞ」

「お待ちなさい」


 がしっ。俺の肩を妹がつかんだ。


「離せ! あんなやばい雰囲気の場所に入れるか!」

「そうやって一人で先に帰ったひとから殺されるんですわよ」

「なんの話だ!?」

「いいから来なさい。わたくしは入ってよいとは言いましたが、帰ってよいとは一言も言ってませんわよ」

「なんでおまえが命令……まあいいや。わかったわかった。入るよ」


 言って、俺は再び扉をがらがらがら、と開ける。

 そこには、


「おー。なんかひよりちゃんのお兄ちゃんって感じのひとがいるにゃん……」

「…………」

「…………」


 三人の女の子がいた。

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