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8-兄貴と私と平将門(前)

「さて、順当に行くなら次は桜の番なんだが……」


 言いながら俺は、あたりをきょろきょろと見回してみた。

 右を見ると壁。

 左を見ると鉄格子のついた窓。

 正面を見ると机を挟んで反対側に、バイザーと見間違えそうなごついグラサンをかけた黒服のいかつい男が一人。

 その男は俺を見据え、ゆっくりと口を開いた。


「どうかしたかい? 財部のお兄ちゃんよ」

「その意味のお兄ちゃんが出てくる作品じゃねえだろこれーーーー!?」


 俺は絶叫した。



--------------------



 状況を整理しよう。

 昨日の夜、UFOからMIBとの連戦を経て家に無事帰った俺は、朝のコンビニバイトで軽く御前崎を瀕死にしたりして、その後兄君兄君と小うるさい店長を適当にあしらいながらバイトを終えて昼飯を買って……

 そしてその後の記憶がない。気づいたらここにいて、目の前にこの男がいた。


「ていうかお前、誰だよ。ジーコ史郎とか名付けていい?」

「松島だ」


 淡々と返す黒服。……やっぱ桜みたいにあしらうのは無理かあ。


「いまの状況、説明できるか?」

「難しい問いだな。俺も、財部のお兄ちゃんの状況を完全に理解できる状況ではなくてなぁ」

「とりあえずその『財部のお兄ちゃん』呼びをなんとかしてくれない?」

「まあ、構わんが。ならば何と呼ぶ? 雇い主からは名字しか教わっていない」

「あっそ」


 相手の言葉に、俺はとりあえずうなずいた。


「つまり雇い主がいるってことは隠す気がないのな」

「ああ。ついでに誰であるかも隠す気はない」

「誰だよ?」

「おまえのバイト先のコンビニの店長だ」

「…………」


 うん。わかった。とりあえずあの人が関わってる案件なら、こういう意味わからんことにもなるわ。

 問題は、なんでこうなったのかだが……それもいったん置いておく。


「で、ここはどこで、いまなんで俺たちはここにいるんだよ。お前が俺を運んだのか?」

「それは誤解だぜ。というか、気づかないか?」

「? なにをだよ」

「このビルだ。昨日お前さんが除霊のための下見をしたところじゃねえか」

「…………」


 言われて俺は、まわりをきょろきょろ見回した。


「思い出したか?」

「いや、思い出したかって言われても……そもそもあのビルは普通のビルだったろ。鉄格子窓とかあったか?」


 話の展開からして、野依が封じられていた例の訳あり物件ビルディングであることはわかるのだが、どう見ても外見だけは普通のオフィスビルだったはずだ。鉄格子があったようには思えない。


「そこは例の店長の指示だ。ほら、あのエセ退魔士が窓ガラスを割って飛び降りただろ。あの後処理をどうするか聞いたら、とりあえず霊を逃がさないために、急いで鉄格子にでもして通路を封鎖しろって言うから」

「それであそこ鉄格子なのか。

 ……いや、待て。てことはお前、遠矢の関係者?」

「雇われ人だよ。まあ、彼女と違って前科はないがね」

「あー。そういやあの黒服連中の中にいた気がしたな」


 なるほど。松島の素性はだいたい理解できた。そして、たぶん敵ではないことも。


「で、なんで俺はここにいて、なんでお前はここにいるの?」

「俺がここにいるのはアンタの監視だ。いきなりビル内に現れたんだから、監視をつけないわけにもいかんだろう」

「……俺が、いきなりここに現れた?」

「そう。しかも気絶したように寝てた。命に別状がないこと、雇い主から「兄」と言われている旧知の相手であることを確認して、他の連中は店長の言う『除霊』作業に戻して、俺だけが監視役として残っていたわけだ」

「なるほど……となると、俺が霊障に憑かれてなにかやらかした可能性が高いな」


 そう考えれば、昼からの記憶がないのはうなずける。

 うなずける、んだけれども。

 ……うーん。


(とりあえず、悪い想像しか出てこないなあ)

「どうだい財部の兄貴。なにか思い出したかい?」

「だから兄貴って……まあいいや。そういうことなら、可能性は限られているよ」

「と言うと?」

「まず、これをしでかした相手は、ビルと俺の双方に縁がある」


 ビルに縁がなければ、わざわざここに俺を運んではこない。

 そして俺に縁がなければ、このビルに近づく意思がなかった俺にわざわざちょっかいをかけたりはしないだろう。


「で、その両方に縁のある存在がどのタイミングで俺に目をつけたかって言ったら、昨日のアレしかないだろ」

「つまり……昨日のおまえの活躍を見ていた「何か」が、ここにお前を呼び寄せたと?」

「そうとしか考えられないんだよな」


 俺は腕組みをして、松島の問いに答えた。

 と。


『はーっはっはっは、見事正解にたどり着いたようだな若人よ!』

「な、なにいっ!? この明らかに機械音声で棒読みじみた、それでいてどこか憎めないボイスは……っ!?」


 松島が驚愕とともに、鉄格子の方を見やる。

 俺もつられてそちらを見ると、そこには。


『正解にたどり着いた君は偉いのです。だから私を視認し、ついでにこの鉄格子の隙間から引っ張り出す権利をあげましょう』

「…………」

「…………」

『あ、ちょっと待って無言で近づいてくるのはやめて怖いから。ちょっと、ねえ、あ、待ってそんな乱暴に引っ張らないで。中身が。中身がでちゃうううううううう!』

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