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農民さんがVRMMOを楽しむらしいですよ  作者: 笹桔梗
第2章 テスター交流スタート
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第39話 農民、鍛冶職人と相談する

「うわっ!? すごい……こちらは、ゴーレムさん、ですか?」


 工房というか、ドワーフさん……案内される途中で、名前とかを教えてくれたんだけど、やっぱり、ペルーラさんで間違いないそうだ、そのペルーラさんの家の住居部分を抜けて、奥へと入ると、そこには炉などがある工房が広がっていた。

 けっこう、立派な作りで、今も作りかけの武器とかが置かれていた。

 その工房の中央で、椅子に座って作業をしていたのが、その光り輝く大きな人型の存在だったのだ。

 俺も、他のゲームとかで見たことがある、身体が岩とかでできたゴーレム。

 その姿にそっくりだった。


 もっとも、他のゲームで見かけるそれよりも、宝石っぽくて、どこか光り輝いているようにも見えた。

 緑色が美しいゴーレムさん、かなあ、と。


「綺麗、ですね」


 俺の他にも、ファン君とかも感嘆の声をあげていた。

 うん。

 俺も同様に頷く。

 やっぱり、こんな大きな宝石、向こうだと見たことがないからな。


「ありがと、あたしの旦那さんを褒めてくれて。ふふ、やっぱり、他の人が見てもきれいでしょ?」

「えっ!? 旦那さん!?」


 いや、随分と衝撃の発言が飛び出したぞ!?

 目の前のペルーラさんは、俺たちの世界基準だと、どうひいき目に見ても中学生にしか見えないぞ?

 それも、中学に入りたて、って感じの。

 そんな人に旦那さんがいるのか?


 うん? もしかして、旦那さんって、別の意味もあるのか?


「なんだ、お前ら結婚してるのか?」

「まあね。ていうか、それがアルミナから外に出る条件だしね。アルミナ以外では、未婚のドワーフなんて、まず見かけないはずよ。旦那さんみたいな鉱物種はひとりで旅したりもできるけどね」


 その辺は色々と厳しい種族なの、と十兵衛さんの問いに答えながら、ペルーラさんが微笑する。

 てか、驚くべき事実だが、目の前のペルーラさんは、もう二十代後半なのだそうだ。

 何でも、ドワーフ自体が成長がゆっくりな種族として有名なのだとか。

 いや、すごいな。

 若奥様ってレベルじゃないぞ?

 そして、旦那さんはジェイドさんって名前なのだそうだ。

 身体が金属などでできている種族で、鉱物種。

 こっちの鉱物種さんたちは、男性限定種族で、基本はドワーフさんたちと結婚して、それで、このふたつの種族が成り立っているのだそうだ。

 何だか、子供とかはどうなるのか、すごく気になるぞ?


「だからね、そっちの……ファンって言ったっけ? ファンみたいに、アルミナ以外にいる未婚のドワーフってのは貴重なの。たぶん、迷い人だからだろうけど、狙われないように気を付けるのね」

「えっ!? ぼく、狙われるんですか!?」


 またもや、衝撃の事実に、ファン君が震える。

 ドワーフって種族自体が、鍛冶などの能力に長けているので、場所によっては、国をあげて確保しようとするところもあるのだそうだ。


「少なくとも、ここから北にある『帝国』には行っちゃダメよ? それに、一応、アルミナの周辺国なら、交流とかもあるから、表向きはそういう動きはないことになってるけど、野盗とか、そっちに狙われたら国として護ってくれないの」


 うわ。

 何だか、聞いているだけで難儀な種族っぽいんだが。

 アルミナまで行ってしまえば、鉱物種さんたちとかが護ってくれるから大丈夫だけど、それ以外の場所だと、それなりに気を付けないといけないらしい。

 性別問題以外にも、厄介ごと満載だったんだな。

 うん、ファン君がちょっと茫然としているけど、ご愁傷様としか言えないな。


「ん、大丈夫。昨日みたいなごはんを作ってくれるなら、護衛するから」


 あ、後ろにいたリディアさんがそんなことを言って、ファン君の頭を撫で始めた。

 へえ、こっちの冒険者でも護衛とかしてくれるのか?

 てか、ごはんって何だ?


「おっ! そういや、こっちの姉ちゃんも強そうだな?」

「いや、十兵衛さん、そういうのは止めてくださいね」


 話がややこしくなるから。

 何となく、リディアさんも十兵衛さんのセンサーに引っかかったぽいけど、そういうのは、昨日のカミュの一件で終わらせておいてもらいたいから。


「……えーと、話を戻してもいい? ちょっと整理するから。まず、ファンとヨシノはあたしに弟子入りしたいのね?」

「はい! ぼくが身につける装備を、自分で作れるようにならないといけないですから」

「それは、あたしが作ってもダメなの?」

「ええ。ファン君と私がずっとこの町にいるとも限りませんから。店売りの装備品がほとんど存在しない以上は、今後のことを考えれば、私たちが技術を身につける必要がありますよね?」

「ふんふん、なるほど。確かにそうかもね。でも、さっきも言ったけど、ファンが同族である以上は、あたしからは一切技術を教えることはできないけど? 変な癖がついても、後でアルミナのみんなに怒られるし」


 だから、とペルーラさんが頷いて。


「ファンと一緒じゃない時だったら、ヨシノに簡単な手ほどきはしてあげてもいいよ。最初は断るつもりだったけど、これも何かの縁だしね」


 まさか、一緒のタイミングで、紹介状を持ったお客さんもやって来るなんてね、とペルーラさんが苦笑する。


 あれ?

 もしかして、俺と十兵衛さんがやって来たのもきっかけみたいになってるのか?

 うーん、つくづく、この『PUO』って読めないよな。


「ぼくが一緒だとまずいんですね?」

「そうよ。一般的な手順と、ドワーフの種族スキルを使うやり方は別なの。並行して覚えるならいいけど、最初に普通のやり方で鍛冶とか始めると、種族スキルを使う際の妨げになったりするの。だから、ファンには、別のことをやってもらうから?」

「え? ぼくにも何か教えてくれるんですか?」


 ちょっと驚いたような表情を浮かべるファン君。

 一方のペルーラさんは苦笑して。


「まあ、技術面じゃないところはね。こう見えても、弟子として教えられないことに申し訳なくは思ってるのよ? あたしもね」

「それは、何をすればいいんですか!?」

「ふふ、あんまり焦らないの。他の人の話もしてからね。リディアさんは、別に付き添ってるだけなんでしょ?」

「ん、監督と護衛だけ」


 それ以外はやらない、とリディアさんが頷く。


「じゃあ、残りのふたりの方ね。ええと……紹介状によると、そっちのセージュ? の方が、農具を作ってほしいってことでいいの?」

「はい。俺、職業が『農民』なんですけど、一応、そっちのスキルを持ってますので、武器とかに使えないかな、って考えてます」


 ただ、まあ、良い機会ではあるので、弟子として技術を教わりたくはあるな。

 農具も普通の武器屋とかで売ってないってことは、さっきのファン君同様に、自分で作ったり、改良できた方がいいだろうし。

 そう、ペルーラさんに伝える。


「ふうん、なるほどね……で、十兵衛はどうなの?」

「そうだな。嬢ちゃん、刀は打てるか?」

「刀……? どういう形状をしてるの?」


 ペルーラさんの問いに、十兵衛さんが日本刀の形状などについて、細かく説明する。

 それを聞いて、ペルーラさんが首を捻る。


「もしかして、魔族のある一種族が使っている武器? だとすると、物が無いとちょっと難しいわね」

「魔族だと?」

「ええ。今から大分昔に、この大陸を侵略しようとやって来た外界の種族よ。今は神聖教会のおかげで、ほとんど駆逐されてるけど、当時の武器については、教会の本部に保管されてるって話ね。あたしもお師様から話を聞いただけだから、その、魔族が使っていた武器については、目にしたことがないの」


 今もたぶん、教会本部で厳重に保管されているので、部外者が見ることは難しい、と。

 へえ、元から、こっちの世界にも刀があるのか。

 いや、まあ、日本のゲーム会社が開発してるんだから、当然か。

 それが、すぐに手に入らなそうなところにあるのも、やっぱり、ゲームバランスとか、そっちの都合とかもあるのかもな。

 ドワーフでも作れない、って話だし。


 というか、だ。

 魔族もいるのか、このゲーム。

 今は、この大陸にはいないらしいけど、海の向こうには魔族が住む土地もあるそうだ。

 さすがに、別の大陸ってなると、βテスト中にたどり着くのは難しそうだけどな。


「あー、そうかい。そいつは残念だぜ。となると、仕方ねえな……なあ、嬢ちゃん、俺もあんたに弟子入りさせてもらえねぇか?」

「えっ? 十兵衛も? でも、あなた、エルフじゃないの。あたし、『木工』とかは本職のエルフほどうまくないわよ?」


 ペルーラさんによると、こっちの世界のエルフとドワーフは割と仲が良いのだそうだ。

 それで、種族的に得手不得手を考えて、ドワーフが『鍛冶』をエルフが『木工』や『魔法付与』などを担当して、それで、共作のような形を取ったりもしているのだとか。

 普通は、エルフが『鍛冶』を本格的に覚えたり、ドワーフが『魔法付与』などをしたりはしないのだそうだ。

 そもそも、スキルには相性の問題もあるから、と。


「下手にあたしの教えを受けると、今後、エルフ側の技術を覚える時に、うまく行かなかったりもするわよ? それでもいいの?」

「おうよ。それで構わねえよ。そんときゃそんときだ。要は、俺が刀を打てるようになりゃあいいわけだしな。別に、エルフ、か? そういうのにはこだわってねえし」


 正直、種族とかよくわからん、と十兵衛さん。

 ふふ、まあ、そういう人だもんな。

 あのカミュも、全然エルフっぽくないって呆れてたぐらいだし。


「わかったわ……じゃあ、一通り、全員の話は済んだわね? みんな、あたしから『鍛冶』について教わるってことでいいのね?」


 そのペルーラさんの問いに、リディアさんを除く全員が頷く。

 と、ぽーんという音が響いて。


『クエスト【職業系クエスト:ペルーラの弟子修行】が発生しました』

『クエスト【収集系クエスト:???鉱物採取】が発生しました』

『注意:鉱物採取のクエストは、種類に関しては固定されておりません。希少レベルが鉄鉱石以上の鉱物の場合、どの鉱物でも達成となります』


 おっ! クエスト発生か。

 職業系のクエストって初めて見たな。

 たぶん、これ、『けいじばん』で話題にあがってた、職人から見習い職になるのと同じような扱いのクエストなんだろう。

 俺たちの場合はどうなるんだろうな?

 別に、元の職業が、職人系じゃないけど。


「最初にやってもらうことは、全員同じよ。この町の側にある採掘所へ行って、そこである程度の量の石を採って来ること。話はそれからよ」


 何はなくとも、まず石ね、とペルーラさんが笑って。

 それが、弟子入りクエストのスタートとなった。

というわけで『鍛冶』スキル狙いのクエストスタートです。


なお、すでに『鍛冶』を持っている場合、オーギュストの武器屋でも、インゴット類や初歩的な鍛冶道具は購入可能です。

ちなみにファン君は持ってません。

本当の意味で、ドワーフの技術を用いるには、別の技術スキルを習得する必要があります。

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