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農民さんがVRMMOを楽しむらしいですよ  作者: 笹桔梗
第2章 テスター交流スタート
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第29話 農民、身の上話をする。

「じゃあな。何かあったら教会でな。ああ、そうそう、あんたらも簡単に『死に戻ら』ないようにな。教会の手間が増えるから」


 そんなことを言いながら、カミュは去って行った。

 うん、ある意味で冒険者ギルドに行ってから、ここまでずっとカミュのペースだったよな。

 完全に俺って、巻き込まれ型のプレイヤーって感じで。

 ともあれ、ようやく、これで自分のペースで色々とゲームを楽しむことができそうだ。


「そうだ、セージュ君。君の方は、リアルに関して、お互いで紹介しあうことに抵抗があったりするのかな?」

「いえ、別に大丈夫ですよ?」


 クラウドさんにそう尋ねられたので、問題ないと返事をする。

 込み入った個人情報とかは別だけど、まあ、俺がどういう人間なのかってのは別に話しても問題ないし。

 そもそも、十兵衛さんともそういう話はしてるしな。

 まあ、あれは、十兵衛さんからリアルのことを説明されたからなんだけど。


 ただ、俺としても、十兵衛さんの件もあって、他のテスターさんがどういう経緯でこのゲームをプレイしているのか、とかは興味があるんだよな。

 話を聞いてみると、クラウドさんたちも同様らしい。


「クラウドさんたちも、そう思っているんですね?」

「ああ。このゲーム、『PUO』を製作したのはSZ社……まあ、正確に言えば、『SZプロジェクト』だな。私も何人かから話を聞いたが、やはり、そちらから直接の要請という形で、テスターの仕事を請け負ったケースが多いのだそうだ」

「俺は直接じゃないけどな。一応、セミプロゲーマーとして、大学生やりつつ、そっちでも小金を稼ぐ感じで暮らしてたら、たまたま、別のルートで今回のテスターの仕事が舞い込んできたんだ。だから、てっきり、俺みたいに、ゲーム好きの中でも名の知れた連中に声をかけているんだー、って思っていたんだが」


 どうやら、違うらしい、とテツロウさんが苦笑する。

 というか、テツロウさんって、ゲーマーのセミプロだったのか。

 世界大会とかで賞金を稼いだりするレベルなんだとか。

 あー、そういうところは、ユウとかに似てるな。

 俺は、ゲームを楽しみたい派だったけど、ユウの場合、他のゲームの大会でも優勝してたって話だし。

 まあ、俺、普段は家業の手伝いの傍らでゲームやってたから、その手の大会とかって見に行ったこともないんだけどな。


「クラウドさんは、どういった職業の方なんですか?」

「ああ。俺は雑誌の編集者兼ライターだよ。『週刊VR通信』って雑誌のな」

「ええっ!? 『VR通信』の!?」


 いや、さすがの俺でも知ってるぞ!?

 たぶん、VR系のゲーム専門誌ではトップクラスだよな?

 普通にコンビニとかでも買えるし。

 へえ、すごい人なんだなあ、クラウドさんって。


「編集者として、雑誌とかでも顔出ししてるしな。本名は黒崎くろさき正人まさひとだ。だから、アバターネームはクラウドにしてるんだよ」

「あっ!? 知ってますよ、黒崎さん! あれっ? 確か、『VR通信』の副編集長じゃなかったでしたっけ?」

「ああ。いや、知っている相手に会えるのは嬉しいな。さておき、俺の場合は、SZ社経由で、仕事としてテスターに参加している。このプレイ体験記を記事や、単行本として書き上げるのも仕事に入っているのさ」


 あー、なるほど。

 それで、一か月は出向って形で、こちらのゲームに集中するのだそうだ。

 『VR通信』としても、発売前の情報を得られるので、願ったり叶ったりとのこと。

 何せ、この『PUO』は、他のVRゲームとは一線を画している、との評判だし。


「だから、黒さんとは、前々から、俺も顔見知りなんだよ。何回か、取材とかも受けたことがあるし、そっちの縁でゲーム企画とかに参加させてもらったこともあるしな」


 それで、テツロウさんとクラウドさんは何となく親しそうなのか。

 そうなると、アスカさんもゲーム関係のお仕事ってことか?


「あ、私はこっちのふたりとはまた別の話として、お仕事をもらったの。本業は旅行のプランとかを立てるコンシェルジュよ」

「へえ、そうなんですか?」


 アスカさんは、京都に本社がある旅行関連の会社に勤めているのだそうだ。

 今回のテスターの話は、ゲーム制作会社の方から、そっちの旅行会社へと持ち込まれたお話なのだとか。


「私がテスターをやっているのは、ゲームの中への旅行のプランニングね。VRMMO経由で、異世界への旅行プランを体験してみませんか、ってね」

「あ、異世界旅行ですか」


 へえ、そういう切り口もあるんだな?

 確かに、そういう意味では、旅行業のお仕事をしている人がテスターに参加するのも意味があるのかもしれないな。


「あれ? でも、アスカさん、この『PUO』が一般発売されたら、普通に、ゲーム機を介して異世界に来られるんじゃないですか?」


 俺がそう尋ねると、アスカさんは首を横に振って。


「少なくとも、数年以内での『PUO』機器の一般発売は難しい、そう踏んでいるわ。これに関しては、SZ社の方からも、それとなく話は聞いているしね」

「そうなんですか?」


 あれ?

 でも、もうすぐ発売を目指して、βテストをしているんじゃないのか?

 一般家庭での販売は数年先って、随分とスパンが長い気がするんだが。


「それに関しては、俺も同じ意見だ。普通の家庭でプレイするには、機械が場所を取り過ぎるし、人体への影響がまだどう出るかの治験が不十分だからな。そもそも、値段がそれなりに高くなるだろうしな」


 クラウドさんも、アスカさんの意見に頷く。

 この『PUO』の機械は今までのヘッドセットタイプの機器とは訳が違うから、と。


「セージュ君、君もこのゲームをプレイするために、『施設』の方から参加しているんだろう?」

「はい、そうですね。札幌の方の『施設』からです」

「うん、そうだろうね。ちなみに、俺とテツロウ君は東京の『施設』から。アスカさんは京都の『施設』から、このゲームのテスターに参加している。そもそも、まだ現段階では『PUO』のVR技術は医療目的も兼ねている現状があるからね」


 クラウドさんの言葉に頷く。

 ヴァーチャル技術は各分野で広がりを見せているが、やはり、ゲーム業界よりも早い段階で着手しているのは、軍事と医療の二分野だからだ。

 今回の『PUO』も一応はゲームの形をとっているが、その目的はと言えば、やはり、医療のため、という部分が少なからず含まれているのだとか。

 さっき、クラウドさんが言っていた『施設』も、医療関連の施設らしい。

 らしい、というのは、俺自身も今日初めて訪れた場所なので、クラウドさんやアスカさんのようには、詳しい事情と言うのを把握できていないからでもある。


 ゲームの前の事前説明で、医療介護関連の施設の一室、という説明は受けたが。


「やはり、五感を完全に共有できる、いわゆる『フルダイブ』のVRMMOは画期的だ。だが、それだけに画期的すぎる。さすがに、プレイするために個室がひとつ必要となる規模や、プレイ中の体調管理のために、二十四時間体制で、何か起こった場合、医療的な処置を受けられる環境が必要となると、どうしても場所が限られてしまうからね」

「ゲーマーの夢ではあるんだけどなー。俺も、いざとなれば、部屋を改造するくらいの覚悟はあるけど、問題が発生した時に、外からの助けが呼べない場所だと、どうしても難しいってなると、自前で条件をそろえるのはしんどいしなあ」

「そうですよね」


 確かに、今のままだと、家庭用ゲーム機ってのは難しいようだ。


「ええ、だからこそ、新しいビジネスモデルとして、『異世界旅行』っていうプランが成り立つの。自宅ではゲームをできない人でも、短期間……数日間でのVRMMO世界への旅行体験をご提供します、ってね」


 だからこそ、アスカさんはそのテストプレイとして、きちんとした業務という形で、ここへとやって来ているのだそうだ。

 旅行という視点から、『PUO』の世界を見た上で、何があって、何が不足していて、どういったものが必要になるのか。

 まずは、自らの目線で、旅行を楽しんで、その上で、『異世界旅行』のプランニングができるかどうか。

 そういったことを調査する、と。


 おお、思っていた以上に、真剣にお仕事してるんだな。


「とりあえず、問題点の第一位は料理ね」

「あ、それは俺も同意見です」


 アスカさんの言葉に大いに頷く。

 旅行と言えば、日本人としてはグルメは外せないだろう。

 そう考えると、こっちの世界の食材を生かして、お客を呼べる料理は必要だ。

 うさぎはまだしも、蛇料理を喜んで食べるお客がいるかどうか、だ。


「それで、セージュ君はどういう立場でテスターに参加したんだい?」

「あ、俺の場合は、就職を視野に入れた活動です。うちの実家が農場を経営しているんですけど、そうじゃなくて、俺はゲームに関わる仕事がしたいんですよ。それで、今回たまたま、友人の伝手で、SZ社のアルバイトとして採用されたわけです」


 これで、きちんとテスターの仕事をこなせば、正社員としての採用も夢ではない、と。


「なるほど……そういうケースもあるのか。これはどちらかと言えば、テツロウ君のような、ゲーマー枠に近いのかも知れないな」

「へえ、セージュもゲームが好きなのか? それは良かった。俺も、ゲーマーの仲間が少なくて寂しかったんだよなー」


 テツロウさんが嬉しそうに笑う。

 まあ、普通のβテストのイメージって、ゲーム好きの人ばっかりになりそうだもんな。

 そういう意味では、かなり予想外だったらしい。


「たぶん、それぞれの専門性とかも無関係じゃないかも知れないわね。私も『魔術士』を選んだつもりだったんだけど、ゲームがスタートしたら、なぜか『添乗員ツアコン』が職業欄に追加されてたから」


 本当はコンシェルジュだから、ツアーコンダクターじゃないんだけど、とアスカさんが苦笑する。

 あー、職業かあ。


「そうですね。俺も『ギフト』を選んだら、勝手に職業を『農民』にされましたしね。やっぱり、リアルの生活歴みたいなのが関係しているんでしょうね」

「おっ!? セージュは職業『農民』か? それは初めて聞いたやつだな。まだ『けいじばん』でもそれらしい話はあがってないしな」


 そう言いながら、テツロウさんが『けいじばん』の流れをチェックする。


「うん……やっぱり、セージュが初だな。となると、けっこう、『けいじばん』をノーチェックのテスターの中でも、特殊な職業持ちがいそうだな」

「まあ、まだ今日は初日だしね。それに、そろそろ、現実の方でも食事の時間とかもあるだろう? あくまでも、今日はさわりだけで、早めの宿の方を確保した方が良さそうだな。『けいじばん』なら、ログアウトした後でも、ゆっくり参加できる時間があるだろうし」

「あ、やっぱり、宿は必要なんですね」


 確か、冒険者ギルドでも大部屋があるんじゃなかったっけか?

 それに、どうせログアウトするなら、宿に泊まる必要があるのかって思ってしまうしな。


「えーと……なあ、セージュ、もしかして、お前も最初のチュートリアルで話をよく聞かなかった口か?」

「え? どういうことです?」

「いや、強制ログアウトのペナルティについての話だよ。ログアウトの時は、安心して眠れる環境を確保しないと、次のログインの時に、体力面でペナルティを食らうぜ?」

「えっ!? そうなんですか!?」


 いや!? それは初耳だって!

 テツロウさんたちが教えてくれたけど、宿屋のベッドでログアウトしないと、周囲の環境によって、再ログインまでの間の時間中、体力が少しずつ消耗してしまうのだとか。

 外のフィールドなど、モンスターが周囲にいる環境が特にひどく、冒険者ギルドの大部屋でも、仮眠程度しかできないってことで、体力が消耗するのだそうだ。

 うーん。

 ハイネのやつ、そんなこと一言も言ってなかったぞ?

 いや、俺がログアウトに関する部分を確認しなかったのも悪いんだけどさ。


「だから、宿が必要なんですね?」

「ああ。幸いこのオレストの町には宿屋が何件もあるそうだ。宿によって、それぞれグレードやサービスが異なるらしいがね」

「食事のあるなしや、オプションで衣類の洗濯をやってくれたりとかな。俺たちも、これから宿を探そうとしていたところなんだ。じきに、夕方のごはんの時間だしな。そうなったら、ログアウトして、現実の空腹を何とかしないとだし」


 ふむふむ。

 いや、テツロウさんたちと知り合えて良かったよ。

 普通に、宿じゃないところでログアウトするところだったし。

 危ない危ない。


 よし! 現実の食事の時間までに宿を探すぞ!

 そう決意して、俺は三人と一緒に、町の中心部へと戻るのだった。

『PUO』のテスターには色々な人がいます。

基本は、制作会社との契約で給与が発生する形です。

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