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気疲れするBBQ

 ゼミ生がバーベキューで盛り上がる中、静かに食を進めていた。


 周りが俄かに騒がしくなった。

 誰かがお酒を持ち込んで、皆で飲み始めたようだ。

 教授も止めているが半分は楽しんでいる。


 これにも頭が重くなってしまう。

 お酒を飲む人は周りに少ないけど、大抵は厄介になると聞く。


 この場から逃げ出したくなってきた時、厄介事が近づいて来た。


 「何々~? 皆、飲んでないじゃん。飲もうよ~」

 酔いが回ったのか、舌も回った感じで高木が赤ら顔をしながら声を掛けてきた。

 この言葉に凛は曖昧な顔をしている。私は多分、冷たい目をしている……。


 「私達は未成年でしょ? 飲んだらダメだし、飲まない! ほら、あっち行って」

 男前の山崎が高木を追い払うように厳しく言って、手で虫を払うように振った。


 この手厳しい言動に効果があったのか、高木は未練がましさを感じさせながらも男子達の元へ帰っていった。


 山の中に笑い声や奇声が響く。山に心があるなら頭に来るだろう。

 早く次の日を迎えて終わらないかと思っていると、次の日を迎えるのを妨害するような人達が来た。


 「ノリ悪いじゃ~ん。せっかく一緒のゼミ生なんだから、もっと話そうぜぇ」

 「そうそう。皆のこと知らないしなぁ。皆は彼氏とかいんの?」

 そういう話か……。何て答えるのがベストなんだろう……。

 いないって言うのも、それはそれで面倒かもしれない。


 「萌香ちゃんはいるよ。私は好きな人だけど」

 凛の言葉を聞いて思わず振り向いた。

 いきなりの話に頭が付いて来ない。


 そんな私を悟ったのか、凛は軽く目配せしてきた。

 適当にやり過ごそうとしているんだ。

 この助け舟に乗らない訳にはいかない。

 すぐに頷いた。


 「え~、そうなのぉ? あいつ等ショック受けるな」

 「だなぁ。で、どんな人? 画像あんでしょ?」

 面倒なことに更にほじくってきた。関係ない人に見せる必要があるのだろうか?


 この問いに凛もすぐには答えられないようだ。

 ただ、ありがたいことに祐の画像は天から送られている。

 大抵は酷い扱いだけど……。


 凛の為に祐が三善にいじられている画像を黙って見せた。

 男子達は食い入るように見る。それ程までに見たいものか……。


 「えっ!? 都さん、どっちと付き合ってんの!? このめっちゃイケメンな人?」

 「…私はスーツの人。…凛ちゃんは…その人……」

 「あっ…、こっちの方ね。ふ~ん……」

 三善の時の反応と、祐の時の反応の差が違い過ぎる。

 祐が聞いたら、地味に落ち込むと思う。


 「早乙女さ~ん、この人、倍率高くね? 俺達の方がお手頃だよ?」

 「そうそう。歳も近い方が良いじゃん。結構、年上だろ?」

 どうやら私は難を逃れたようだ。凛の顔に疲れが見え始めている。


 「…凛ちゃん…好かれてるから。…よく4人で会ってるし……」

 私にできる精一杯の援護に、凛の顔が明るくなった。

 聞いた男子達の顔色から形勢の悪さが見て取れる。


 「そ、そうなの。萌香ちゃんの彼氏繋がりで会ったの。気が利いて良い人なんだぁ」

 凛は少し言葉を詰まらせながらも、私の助け舟に乗り込み話を終わらせようとした。


 彼氏持ちと高レベルの彼氏候補がいる人には近寄らなくなった。

 今度はどこからか持ち出した花火で、更に騒がしい場がうるさくなった。


 その時、少し嫌なものを感じた。

 山の中に満ちている精に触れても、嫌な感じはしない。

 じゃあ、今のは?


 何かに気を取られそうになった時、携帯の着信音と思しき音が鳴った。

 教授が何やら話し込んでいるようだ。何度も頷いて、口を開いているのが見える。

 しばらくすると電話を耳元から放した。

 

 「皆、すまない。野暮用ができてしまった。明日の昼には戻るから、あまり変なことはしないようにな」

 教授は矢継ぎ早に言ってロッジに戻ると、急いで少し離れた駐車スペースまで向かって行った。


 最後の歯止めとなるであろう教授までいなくなってしまった。

 これは早々に逃げるのが得策と考えて、体調が悪いと言ってロッジに戻ることにする。

 凛の驚いた顔を一瞥して、安全な場所のロッジに避難した。


 普段の寝間着と違うスウェットに着替えて、ベッドの中に潜り込む。

 あとは寝てしまえば、残り短い時間でこの苦しみから逃れられる。

 家の壁を壊してまで伝わってくるような、外からの笑い声に思わず眉間にしわがよる。


 そんな声も睡魔によって遠くなっていく。

 耳に届いていたうるさいものが無くなると、眠りの世界へと入った。


    ・   ・   ・


 朝まで続くであろう眠りの世界が、突如終わりを告げた。

 階下から男子の声が響いてきたのだ。


 酔いに任せて無理やり遊びにでも来たのだろうと思っていると、どうもそのような感じじゃない。

 男子達の声は怒声とまではいかないまでも、取り乱したような大声を上げている。


 流石にこのまま無視を決め込むのもどうかと思い、階下に向かうと凛が駆け寄ってきた。


 「萌香ちゃん、何か大変なことになってるみたい。お化けが出たみたいで」

 凛も事態を把握できていないのか、半信半疑な言い方をした。

 でも、あの時に感じた嫌な空気がもし……。


 取り乱した男子達を見ると人が少ない。

 全員が揃っていない?


 不安な表情を浮かべてはいるが、他の男子よりは落ち着いている二宮の姿を見つけた。

 状況が分からないことには、どうしようもない。


 「…二宮くん…どうかしたの……?」

 「都さん!? そっか、女の子達は皆無事だったんだ……」

 「…何があったの……?」

 「その…正直、分からない。急に周りの林から黒い何かが出てきて……。

 それが何か見に行ったやつが黒いのに抱きつかれて……」

 黒い何か? 嫌な空気はそれだったの?

 

 「…それで……?」

 「それを…助けようとしたやつも……」

 分かった。何者かが、現れて男子達を襲った。

 だから全員揃っていない。でも、なんでこのロッジに?


 「…どうして…ここに……?」

 「このロッジに…ってこと? 俺達のロッジにも黒い何かがいて……」

 二宮は目を逸らして苦しそうに言った。

 おそらく、その場でも誰かが襲われたんだ。


 それを見ていることしかできず、私達の所に逃げてきた。

 多分、その思いもあって悔しさを滲ませた顔をしているんだろう。


 どうしたら良いか思案していた時、1階のドアをノックする音が響いてきた。

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