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猟奇的殺人

 故障車の後ろ側で、ジャケットを振りながら後続車を誘導していた。


 女性はなかなか慣れた手つきで、俺の方を確認しながら反対車線の車に対応していた。

 しっかりした女性だと感心していると、俺の方にロードサービスカーが近づいて来るのが見えた。


 色々と調べているようだ。とりあえず、作業が終了するまでは今まで通りに誘導しようと思い、手を動かした。


 しかし、いつまで経っても終わるような気配がない。

 伝送系の故障であれば、この場での修理は難しい。

 漂ってくる空気も、ここではどうしようもない感じだ。


 その時、女性が携帯で話しているのが見えた。

 車が故障をしたのだ。それを連絡しているのかもしれない。


 ロードサービスの人が女性に向かって行き、話しをしている。

 やはりあまり良い感じの話ではなさそうだ。


 ロードサービス車が故障車にウインチを取り付けて、動き出した。

 女性はその光景を眺めているだけだった。

 普通はそれに付いて行くものではないのか?


 気になって女性に近づくと、少し気落ちした顔を見せていた。

 そのままにしておくのは性分ではないので、声を掛けてみることにした。


 「あの、付いて行かなくて良かったんですか?」

 当たり前の事を聞くのに、恐る恐る聞く感じになってしまった。


 「あ、はい。私の職場と反対方向に修理工場があるようで……」

 なるほど。そうなると一緒に行く訳にはいかなかったのか。

 しかし、女性をここに1人で残す訳には……。


 「それなら、あなたの職場の近くまでお送りしますよ」

 「え!? いえ、大丈夫です。同僚かタクシーを呼びますので」

 「私も同じ方向に帰る途中なので。では交通の便が良さそうな所まで送りますよ」

 不審人物に見られてもおかしくないので、できるだけ穏やかな提案をした。


 「えっと、それでは山の麓の駅まで送っていただけますか?」

 「ええ、お安いご用です。それでは早速向かいましょうか」

 悪い人間ととられなかった事に少しだけ安心し、女性を車に招くとアクセルを踏んだ。


 女性と特に話すこともないので、今日買ったお酒の話をしたり、天気の話をしていた。

 しかし、どれも当たらない。いや、少し思い詰めている感じを匂わせている。


 そんな時、携帯の電話着信音が鳴った。

 表示を見ると、神尾 誠治の名があった。

 Bluetoothに切り替えて、電話に出る。


 「もしもし、神尾さん、どうかされましたか?」

 「守屋さん、申し訳ございません。お忙しいようでしたら、また折り返しお電話させていただきますが?」

 Bluetoothだから声がおかしく聞こえたのだろう、特に問題はないので話をしてみることにした。


 「いえ、構いませんよ。今度は何があったんですか?」

 「最近は立て続けですいません。実は女性損壊殺人事件で相談したいことがありまして」

 女性損壊殺人……。天野原ではなかったと思うが、もしかしたら別の警察署から相談されたのかもしれない。


 「分かりました。詳しい話はまた警察署で伺いましょう。それ、」

 「あの! 神尾さん…神尾 誠治さんですか?」

 神尾との会話を終了させようとしたところに、女性が割り込むように声を上げた。

 それに神尾の名前を知っている?


 「はい、神尾ですが……。もしかして、日向さんですか?」

 「はい、日向ひなた 美月みつきです。ご無沙汰しております」

 本当に神尾の知り合いだったとは……。世間は狭いものだ。


 「守屋さん、どうして日向さんと?」

 「たまたま、本当に偶然ですよ。神尾さんとお知り合いとは」

 「そうでしたか。彼女は私と同じ刑事なので」

 神尾の言葉に思わず女性を見て、すぐに前に目を戻した。


 「いやぁ、本当に世間は狭いですねぇ。こんなことは滅多にないですよ」

 「はい、そう思います。…日向さん、君の県でも同様の事件が起きていたと思うが」

 少しおどけて言ったのに対して、神尾は真剣な声で日向に声を掛けた。


 「はい、そうです。また遺体が見つかったそうで、署に向かおうとしていたところでした」

 「そうだったのか……。守屋さん、今回の事件は私の署の管轄外になります。

 別の県警の友人から相談があったので。もしよろしければ彼女に協力いただけないでしょうか?」

 日向と神尾の会話だったので、少し気を抜いていたら思わぬ形でこっちに話が飛んできた。

 正直に言って、天野原に神尾がいるからこの関係があるのであって、彼女の管轄との関係はない。


 「神尾さん、非常に申し上げにくいのですが、私はあなたがいるから協力できているようなものですよ?

 何の後ろ盾もなしに協力なんて認められないでしょう? 協力なら天野原からでもできますし」

 言った通りだ。神尾がいるから警察署内でも、一定の動きは取れるし、悪いように見られない。


 ただ、それが別の警察署になれば話は別だ。

 自分がいても良い場所なんてない。ただ追い返されるだけに決まっている。


 「そうかもしれませんが……。事件は彼女の県で起きています。止めるとしたら、そこが一番かと……」

 神尾にしては歯切れの悪い言い方だ。何が彼をそう思わせたのかは分からないが……。


 「分かりましたよ。ですが、できるだけ協力者として居場所が貰えるようにしてくださいね」

 「ありがとうございます。早速、手配いたします。…日向さん、良いかな?」

 相変わらずお人好しだと自分でも思ってしまうが、神尾の人を助けたい気持ちは本物だ。

 その思いを助けたい気持ちがある。


 「はい、何でしょうか?」

 「しばらくは守屋さんと行動を共にしてはくれないだろうか? 今回の事件、守屋さんの分野になるかもしれない」

 「え!? ですが一般人ですよ? 簡単に捜査に加えるなんてことは」

 「分かっている。だから、自分からできるだけ手を回す。その間、事件の情報などを守屋さんに伝えてほしい」

 なかなかに酷なことを神尾は日向に頼んでいる。一般人で面識もない。何者かも分からない相手を巻き込むなんて、普通では考えられない。


 「神尾さん……。この人…守屋さんをそれほど頼りにされているのですか?」

 「ああ。何度も未解決になりそうな事件を解決してくれた。守屋さんがいたお陰で命も救われた」

 「…分かりました。何とかやってみます……」

 御冗談でしょ? と言いたくなった。完全に針のむしろな所に行くことになると思うと、安請け合いした自分を少し怨んでしまう。


 通話を終えると日向が俺を見ている。品定めでもしているのだろうか。

 何にせよ、警察署での居場所の確保まで俺といないといけないのだ。

 同僚達からも奇異な目で見られるだろう。少し可哀想な気がした。


 「すいません、神尾さんとはどういう関係なんでしょうか?」

 俺が聞くより早く日向は質問をしてきた。しかし、ありがたい。話しが早く済む。


 「そうですね。私とは何度か事件を解決いたしました。まあ、変な事件の時ばかりですけどね。

 あ、申し遅れました。私は守屋 祐です。職業は一応、探偵をしてます」

 「探偵…ですか……? それが警察と関係があるんですか?」

 かなり不信気味に日向は俺の顔を見ながら質問してきた。


 それもそうだ。探偵と警察の繋がりなんて、フィクションの世界だ。

 捜査能力も勘も本当の事件を経験した人間の方が圧倒的に上だ。


 「ま、色々と変な知識と経験がありましてね。それが役に立つ時があるんですよ」

 「はあ……。よくは分かりませんが、神尾さんが言われるのなら頼もしい方なんですね」

 どうやら一定は信用されたようだ。神尾のお陰だが……。


 「そういえば事件の話は何も知らされていないのですが、簡単に教えてもらえないでしょうか?」

 「あ、すいません。報道されている内容よりも酷いものでして……」

 凄惨な事件などの場合はマスコミは報道内容を自粛することも多い。

 どこまで公表されているのかは分からないが、報道で聞いたものより酷いということか?


 「それって結構エグイ事件ってことですよね?」

 「はい……。私達の中でも最も嫌悪されるような事件です」

 「どのような事件なんですか?」

 「女性を狙った殺人事件……。その体の一部を鋭利な刃物で切り裂いて持ち去ってます」

 話しを聞くだけで頭に来るものがある。


 殺すだけでも大罪だ。その後にも更に罪を重ねる

 人の尊厳を踏みにじり、あまつさえ死んだ後すらも辱めるようなことを……。


 しかし、何故そんなことをする? 考えたくはないが考えるしかない。

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