表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/42

手にした力

処分屋 守屋祐の怪異譚

「怪異譚の始まり」と「言の葉の鎖」の話の間です。

 よろしくお願いいたします。

 『怪異』とは妖怪や化け物、悪霊の総称である。

 世にいう、超自然現象や憑きもの、怪事件等に深く関わっている。


 『怪異』は何もないところから生まれたものではない。

 全ては人の感情から生み出されたものである。


 人の感情は良くも悪くも外に流出し、その思いが基となり『怪異』を形成していく。

 元をただせば『怪異』は人なのだ。


 人から生み出された『怪異』が人を襲う。

 まるで親に対する子の反抗期のようにも感じるが、『怪異』にその念はない。


 勝手に人が生み出したもの。

 人の感情が基になって生み出された『怪異』は、生み出した人を襲い、感情等から養分を摂取する。


 人がいなければ存在しない『怪異』。

 その『怪異』を招くエサは人間の感情。


 人から生み出されたものが、人に何を与えるのか。今回はそんな話をしよう。


    ・   ・   ・


10月中旬

 知り合いの霊能力者から緊急の依頼を受け、車で急行していた。


 詳しく話を聞いている間も、霊能力者からは悲痛と恐怖を交えた声を上げていた。

 場所は天野原市の主要駅近くの高層マンションである。


 近くからマンションを見上げると思わず体がのけ反ってしまう。

 これだけ立派な所で怪異騒ぎが起きるとは……。

 今後のご近所さんとの付き合いが大変になるだろうな、とどうでもいいことを考えた。


 すでに警察と消防、救急車が来ており、マンション前は騒然としている。

 しかし外観からは目立った問題はなさそうだ。

 その事を確認し、警察が守っている規制線の前に歩みを進める。


 知り合いの刑事が自分に気付いた為、軽く右手を上げる。

 刑事は近くの制服の警官に話をつけてくれた為、規制線をくぐりぬけた。


 マンションのエントランスに入っても、大きな変化は感じない。

 霊力を集中すれば上層階に怪異がいることは把握できた。


 何事もない風にエレベーターも動いていたので上層階を目指す。


 エレベーターから下を除けば、外の喧噪もどこか遠い世界だ。

 少しだけお金持ちの気分を味わっていると、エレベーターの扉が開いた。


 外に出ると床のタイルから壁の素材まで、なかなかお目に掛かれないお値段がしそうな物だった。

 しかし、ここの階層ではなかったかと思い、階段から上って調べようと思い向かった。


 その時、階段の扉から転がるように、やや小太りの男が現れた。

 かなり狼狽している様子だ。見れば依頼人の霊能力者ではないか。


 「久坂さん、大丈夫ですか? どうやらかなり面倒そうな感じですが?」

 少し離れた所から声を掛けると、久坂は首が千切れそうな勢いでこちらを向いた。


 「良かった! 助けてくれ! とんでもなくヤバいやつなんだ!」

 久坂がこちらに這いながら言ってきた。

 ヤバいやつ……。見てみなければ、よくは分からないが……。

 

 自分の考えを読んでくれたかのように、扉から1人の少年が現れた。

 中学生か高校生くらいか? 中肉中背で、これと言って特徴は見当たらないが……。

 こちらを向いた時におかしい所があった。目が怪しい黒い光を放っている。


 「なんだ? エクソシストだけかと思ったら……。まあ、いいや。死ね!」

 まだ声変わりの途中のような不思議な高い声で言った。

 その後、すぐに少年は右手を横に振るうと、空間に炎が広がった。

 通路を覆い尽くすような炎は、かろうじてこちらまで届かなかった。


 すぐに久坂の首根っこを摑まえ、別の階段に駆け出した。

 後ろ目で確認すると、少年は急ぐでもなく、その力に酔いしれているようにゆっくりと歩みを楽しんでいるようであった。


 廊下を走りながら久坂に確認をしなければならない。

 この現象について一番多く知っているはずだ。


 「久坂さん、一体あの少年に何をしたんですか?」

 「いや、俺はお祓いを頼まれただけで……。あんなに強いのが出てくる何て思ってなかったんだ」

 おそらくはお清め程度で何とかできる霊力しか発していなかったのだろう。

 だから久坂は信じられないといった口調で話している。


 「分かりました。あと、あの炎ですが、あんなに湯水のごとく使い続けているんですか?」

 「ああ、そうなんだ……。もう部屋中が炎でめちゃくちゃになって」

 その光景を思い出したのだろう。久坂は震えながら言った。


 しかし、それ程までに強い力を使い続けることが可能なのか?

 その割には霊力を感じない気がするが?

 それに炎を使っているのに……。


 別の階段の扉に手を掛けて久坂をほおり込むように押し入れる。


 「待て、1人で何とかできる相、」

 「できると思ったから私を呼んだんでしょ? 任せてください」

 階段の扉が閉まる前に言い終えることができた。


 大体のことは把握できたが、念の為にアシスタントに連絡を取るため携帯を取り出した。


 「もっしも~し、何か問題でもありましたかぁ?」

 相変わらず気怠い喋り方で、やる気を感じさせないアシスタントの声が耳をだらけさせそうだ。


 「うん。ちょっと思い当たるのがないか調べてもらいたくてね」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ