【49話】妹御飯
眼が覚めると、そこは、見慣れた我が家のリビングだった。
どうやらここまで運ばれている途中で眠らされていたようだった。
部屋の中は、カーテンが締め切られて薄暗く、明かりは、テーブルの上のロウソクだけだった。
目の前のテーブルには、何故か豪華な食事が並べられていた。
とても美味しそうな匂いのする料理とゆらゆら揺れるロウソクの光が部屋をとても幻想的でロマンチックな雰囲気にしていた。
上手く表現するなら、新婚夫婦や同棲カップルが記念日をお祝いしたくて頑張って雰囲気を出した感じと言うのが、一番近いだろう。
この空間の雰囲気は、完璧だった。
しかし、その完璧な雰囲気に浸れない自分がいた。
何故かって⁉︎
現在進行形で座っている椅子に縄でぐるぐる巻きに縛られているからさ。
『あっ、お兄ちゃん!やっと起きたんだ!』
キッチンからフリフリの白いエプロンを着けた妹が来た。
うん。よく見たらさ…
雷花のやつ、ビキニの上に白いエプロンを着ているみたいでさ…なんか裸エプロンとか言うのに似てるけど、触れないでおこう。
夏だから暑かったんだろうきっと…
『あれ?確か、隣町に入院していたはずじゃなかったのか⁇』
『今日は、大事な日だから飛んできたんだよ‼︎』
『大事な日⁇』
『あはは、まさかお兄ちゃん忘れちゃったの⁇』
『実は…わすれて…』
『忘れてる訳ないよね??????グシャッ!ビチャッ!グチャチャッ!』
雷花が、今、キッチンから来るときに一緒に運んで来た皿の上に綺麗に盛り付けられていたミートローフを手で握り潰していた。
『ないないない!まさか忘れてる訳ないだろう!』
『だよねー!』
ミートローフの上についていたケチャップが雷花のエプロンに飛び散り、その光景は、まるで返り血を浴びた様だった。
そして、床に落ちているミートローフの中に入っていたであろうウズラの卵は、まるで…うん。グロいから考えるのを止めよう。
『あっ、お兄ちゃん!お預けされてお腹も減ったよね⁇もう我慢の限界だよね?それじゃあ〜実妹御飯にする?嫁御飯にする?妻御飯にする?それとも妹を御飯にする?』
『そうだなぁ〜MYゴハン…雷花が作ってくれた料理を見た感じでは、洋食が多いからパンも良いけど…白米も食べたいな』
俺はもう目の前の美味しそうな食事で頭がいっぱいだった。
『はくまい…白い妹を略した新しい言葉…白妹!そう私は、汚れなき純粋純白・ピュアホワイト!心も体も真白な私を汚せるのは、恭弥お兄ちゃんだけ!』
『なぁ、雷花、そろそろこの縄を解いてくれないか⁇じゃないとこの美味しそうな料理を食べられないから』
『お兄ちゃんがそこまで積極的なら仕方ないなぁ〜!縄を解いたとたんにむしゃぶりつかないでね?それから初めてのことが多いから優しくしてね⁉︎』
そうか。今日は、初めて挑戦した料理があるのか。
『凄く美味しそうだし、むしゃぶりつきたいのは、やまやまだけど、初めてをじっくり味わってみたいからゆっくり食べるよ!』
『きゃー!私が凄く美味しそうだってー!むしゃぶりつきたいってー!でもでも、初めてをじっくり味わってみたいからゆっくり食べるんだってー!お兄ちゃんったらしゅてきすぎりゅー!(《素敵すぎる》の最上級興奮系)』
何やら雷花が興奮してよく聞き取れなかったが、大丈夫だぞ雷花。俺は、雷花が作ってくれた料理ならどんな物でも美味しく食べられる自信があるから、辛口でコメントなんてせずに優しく褒めてやるさ!
『それにしても、凄い量の料理だな。一人で食べられるかな?いっぱいあるし、こんなに美味しそうな料理、雪音にも食べさせてあげたかったな…』
『お兄ちゃん⁇私との特別な日に、他の女の話をするんだ…』
雷花の雰囲気が急に変わった。
『お兄ちゃん、左足と右足どっちが先がいい?』
あっ、そうか、きっと目の前で一際異彩を放っているこの鳥の丸焼きを切り分けてくれるつもりなのだろう!
『雷花にまかせるよ!』
『そっか。もう他の女に惑わされるのに疲れたからお兄ちゃんも私の側にいたいんだね!』
ガチャッ
雷花は、席を立って、台所に向かった。
ガチャガチャガチャガチャ。
結構時間がかかってる。
何かを探してるのかな?
何故か、台所から雷花がハンマーを持って来た。
『それって、ミートハンマーってやつだよね⁇何に使うんだ?』
…返り血の付いた妹が、(ミート)ハンマーを持っています。
どうしたらいいですか⁇




