【4話】腹痛ランチタイム
『腹減ったなー』
3、4時限目の授業が終わり、昼休みになった。
『恭弥は、今日も雷花くんの手作り弁当かい⁇弁当を持って来ているなら一緒に食べようか』
遼が声をかけてきた。
『あぁ、いつも作って貰ってばかりで申し訳ないよ』
『雷花くんにとっては、それが生き甲斐なのだろうから、申し訳なく感じるのではなくて、喜んであげるべきさ』
『そうだな。家事は好きそうだし、生き甲斐ってのは、言い過ぎかもしれないけど、申し訳なく思うより感謝の気持ちを伝えるよ!』
やっぱり遼は、気が効くな〜
だから女の子にモテるのだろう。
2人で机をくっつけてご飯を食べていると聞き慣れた声が聞こえた。
『雪白雷花、結婚しても雪白雷花!そんな雪白雷花が愛する人の元に参りましたー‼︎』
おいおい雷花…雷花は 旦那を婿養子にする気なのか⁇
それに兄に向かって愛する人って…恥ずかしくないのか⁉︎
確かに俺も雷花を愛しているけど…
『雷花 今日は 遅かったな!』
雷花は 学年が違うにも関わらず昼休みになると毎日俺の教室に来て昼御飯を一緒に食べる。
用事で昼休みにいないことがたまにある遼よりも 一緒に昼御飯を食べた回数は多い。
そんな雷花が 今日は 中々 俺の教室に顔を見せないので 少し心配をしていた。たまに遅れて来ることがあったので、今日も何か用事があったのだろうとは、思っていたのだが、兄として当然妹を心配していたのだった。
『ごめんねお兄ちゃん!雷花と逢えなくて寂しかった⁉︎心配だった?逢えない間に愛しさが倍増して込み上げて来ちゃった⁇臨界点突破しちゃった⁇突破しちゃってもいいんだよ 全部受け止めてあげるからっ‼︎』
雷花が一人で騒ぐのは、いつものことなので少し放って置いた。
『ちょっとお兄ちゃん聞いてるぅー⁉︎もう!お兄ちゃんったらぁ〜 私に会えなくて寂しくてスネちゃうなんて可愛いなぁ〜私は、そんな可愛いお兄ちゃんが大好きなんだけどね!そういえば、どこに行っていたのか聞いてたよね。私、さっきまで職員室に行ってたの!体育の平田先生に用事があって!』
『用事は、もう済んだのか?』
『うん!バッチリだよ!』
何がバッチリなのかは、よく分からないが、今日は モタモタしてられない。
『雷花、悪いんだけど、今日は午後からプール掃除があるからゆっくりご飯を食べている暇がないんだ!』
朝に乙女川さんからメールをもらっていたので、プール掃除のための水着は、忘れていない。
うちの学校では、体操服ではなく水着でプール掃除を行う。うちの学校には、指定の水着はなく、好きな水着を着ても良いことになっている
『それなら大丈夫だよ』
『ん?』
何が大丈夫なのだろうか?
ガラガラガラガラ
『みんな聞いてー』
たった今入ってきたクラスメイトの女の子が皆に声をかけた。
『今日のプール掃除は、延期だってー!体育の平田先生が腹痛でヤバイらしいよー!』
平田先生、何か悪い物でも食べたのだろうか⁉︎
『ね!お兄ちゃん!昼休みを私とめいいっぱいイチャイチャしようね♪ヒラタ先生カワイソウダネ〜サッキマデ ナントモナカッタノニー!』
昼休みの残りの時間は、雷花や遼とゆっくり過ごした。
ガラガラガラ
『あれっ⁉︎なんで皆まだ、教室にいるの?プール掃除は?』
保健室にいた乙女川さんが教室に戻って来ていた。
『あっ、乙女川さんだぁー‼︎プール掃除は、延期になったんだよー♪』
雷花は、何が嬉しいのかニコニコしながら乙女川さんにプール掃除の延期を伝えていた。
『そっ、そんなぁー…この日のために新しい水着を買ったのに…(ぼそっ)雪白くんに見せるために…』
後半の台詞は、小声過ぎて聞こえなかったが、どうやら新しくかった水着を着れなかったことが相当残念だったようだ。
『この日のためにダイエットも頑張ったのに…』
ガクッ
乙女川さんがショックを受けて気絶してしまった。
今日は、倒れ過ぎだよ乙女川さん。
ちょっと心配だな…
そんなこんなで5、6時間目は、自習になった。
キーンコーンカーンコーン
帰りのホームルームの時間になったが、美空川先生が来ない。
ガラガラガラ
教室のドアが開いた。
しかし入って来たのは、白髪の中年男性だった。
『はい。それでは、帰りのホームルームを始めます。』
『なんで教頭先生が?』
そうこの中年男性は、我らが学校の教頭先生だ。
『教頭先生、美空川先生は、どうしたのですか?』
クラスメイトの一人が教頭先生に質問した。
『美空川先生は、警察署にいます。』
どよどよどよ
『警察署?美空川先生…ついに犯罪を…⁉︎』
誰かが呟いた。
『美空川先生は、中華料理屋で餃子を酒の肴にビールを煽りまくり、騒ぎを起こし、通報されて駆けつけた警察官がイケメンだったため離れなくなり警察署に居座っているそうです。』
おいおい美空川先生…何やってるんだよ…
『美空川先生のことは、忘れて下さい。帰って来ない方が皆さんの為です。皆さん、明日は、三者面談です。ご両親にも忘れずに来るようにお伝え下さい。それでは、これで帰りのホームルームを終わります』
教頭先生は、淡々と話した後、すぐ帰って職員室に帰って行った。
それにしてもどうしたものか…うちの両親は、二人とも海外にいる。三者面談は明日だ。
ホームルームの後は、すぐ校門に向かった。
『彼氏を待つ彼女!彼氏を待つ間、彼女の胸はドキドキ!まだかなまだかなって心が騒ぎだしそうなの!とっても青春してるよワタシッ!あっ、お兄ちゃ〜ん!』
約束通り雷花が校門前で待っていた。
さて、この可愛い妹と一緒に街に買い物にでも行きますか。