【42話】苺シロップと練乳
雷花と美水に無理やりラーメンと焼きそばを口に押し込まれ続け、ようやく全部食べ終わった。
『お兄ちゃん!食後には、水とあまぁ〜いデザートが欲しいよね!私って凄く気がきくお嫁さんになれるよね⁉︎あっ、もちろんデザートは、妹だよ‼︎』
『恭弥様!やはり食後には、水と食後の運動が一番ですわよね!もちろん食後の運動は、私と二人っきりで、大人な運動を御所望でよね‼︎』
『お兄ちゃんは、私と甘い時間を過ごすんだから邪魔しないでくれるかな⁇』
『邪魔なのは、雷花ちゃんのほうですわ!恭弥様は、私と大人な時間を過ごしますので邪魔しないで下さいませ』
バチバチバチバチバチバチ!
ダダダダダダッ‼︎
二人が火花を散らしながら急に走り出した。
お冷を取りに行ってくれたのだろう。
あんなに急いだらお冷もこぼしちゃうよな。
今、雷花が言っていたデザートの芋ってなんだろうか。(恭弥には、妹が芋に聞こえた。)
さつまいもアイスかな?いや、紫芋のアイスも捨てがたいな!もしかしたらスィートポテトを冷やした物かもしれないな!
美水が言っていた大人な運動ってなんだろうか…それも少し気になるな。きっと子供には、やるのが難しい運動だよな。
二人が走って行って、やっと二人から開放されたので、ふと横を見ると、雪音がかき氷を食べていた。
雪音って小さいのによく食べるんだよな。
ちなみにかき氷には、イチゴシロップと練乳がかかっている。
ぱくぱくぱく。
じーーー。
無言でかき氷をパクつく雪音を見つめた。
『パパ…ほしいの?』
雪音を長い間見ていたから、どうやら俺がかき氷が食べたくて羨ましそうに見ているのだと誤解したようだ。
『いや、今、ラーメンと焼きそばを無理やり食べさせられたから…』
ひょいっ!
ぱくっ
話の途中で雪音にスプーンを口の中に押し込まれた。
『おいしい?』
『あぁ、この苺味⁉︎美味しいな』
生まれて初めて食べる味だった。
いつも俺が食べてる様な安いイチゴシロップの味ではなく、本物の苺…いや最高級の苺が凝縮された味だった。練乳は練乳で、凄く濃厚だが甘すぎることもなく、さっぱりした美味しさだった。しかもこのシロップと練乳が絶妙にマッチするように作っているのか、このかき氷を表すなら『絶品』と言う言葉以外に見当たらなかった。
『パパ…ドキドキした?』
雪音は、今さっき俺がかき氷を食べさせてもらったスプーンを見つめながら、少しだけ顔を赤らめて聞いてきた。
『あぁ!ドキドキしたよ!』
『ほっ、ほんと?…』
『嘘じゃないよ!こんなに美味しいかき氷は、生まれて初めて食べたからあまりの美味しさに驚いてドキドキしちゃったよ!』
『………』
プイッ
もぐもぐもぐもぐもぐもぐ
『えっ⁇どうしたんだよ雪音!』
『…………』
もぐもぐもぐもぐもぐもぐ
どうして雪音の機嫌を損ねてしまったのだろうか⁇
かき氷の感想をもっと気が利いた事を言えばよかったのかな⁇
それにしても、雷花と美水はまだ帰って来ないのかなぁ〜っと思ったら、水鉄砲を持った二人が厨房の裏から出て来た。
あれ?二人は、水鉄砲じゃなくてお冷を取りに行ったんじゃなかったっけ?
というかその水鉄砲は、どこから持って来たんだよ。まさか、二人ともわざわざ家から持って来ていたのだろうか。
そのまま二人は、海の家を出て砂浜で争い始めた。
砂で砦まで築いて、本格的に争ってるよ。
あっ、雷花が美水の顔に水風船を投げつけた…
うん。あれは、美水キレたな…
『よし、雪音!お昼からも二人で遊ぼうか!』
俺は、砂浜で暴れている雷花と美水をほっとくことにした。
『パパと…ふたりきり?』
『あぁ!二人だよ!』
『…でーと?』
『あはは、そうだな。砂浜デートってやつかもな』
『…あそぶ…はやく…いこ』
ぐいぐいっ
雪音に服の裾を引っ張られた。
『慌てるなよ雪音!』
そう慌てちゃいけないのだ。
『まず、この昆布を解いてくれるか?』
『っ⁉︎…』
雪音は、忘れてたっ‼︎
って顔をした。
え?俺って縛られてる姿が全然違和感がないぐらいに自然なの?というか縛られてる姿が普通ってやばくないか?…
雪音が狐のお面をしたメイドを厨房の裏から一人呼んできた。
『それじゃあ、ハサミで切りますね…あれ?…あれっ⁉︎これ、切れないな……きっ、切れないよぉ〜………はぁ、はぁ、はぁ』
メイドさんは、昆布を切るのに苦戦し疲れ果てていた。
『どっ、どうですか?少しは、切れましたか⁇』
『……いい昆布ですね』
『え?』
『あっ、そうだ。早く食器を洗わなきゃ!』
『待って下さい!まだ昆布切れてませんよ⁇』
『では、お昼からも楽しんで来て下さいませ。』
スタスタスタスタ。
『パパ…はやく…いこ?』
『ちょっと待って!もうちょっとだけ待って!誰か昆布を切る達人は、いませんか〜?黒くて硬いとってもいい昆布がここにありますよ〜これを切った人にあげますよ〜誰か切ってくれませんかぁ〜⁇』
『わかりました』
多分声からしてさっきと違うメイドさんが名乗りを上げてくれた。
『よかっ、、、!』
俺は、驚愕して言葉を失ってしまった。
だって、メイドさんが鎌を手にしていたんだもん。
『では、早く切りましょうか。その黒くてとぉ〜っても硬い昆布さんを』
『え?まさか、まさかとは、思うけど…その鎌で切る気なの?』
『はい』
やばい。やばいよ。
『ちょっ、ちょっとだけ待って下さい!』
『待てません』
シャキーンッ。
目の前を鎌が高速で横切った。
ボトボトボトッ…
俺に巻きついていた昆布が海の家の床に落ちた。
『では、頂いて行きますね』
『………』
コクコクコク
ビビって声が出せず、頷くだけになってしまった。
『パパ…だいじょうぶ⁇』
『うん。雪音しばらくここにいて』
俺は、あまりの恐怖体験で震えてしまい、雪音にしゃがみついていた。
くしゃくしゃくしゃ
雪音が小さな手で頭を撫でてくれた。
まじ、泣きたい。
少し、落ち着いたので、雪音から離れた。
『雪音、もう落ち着いたし、そろそろ遊びに行こうか』
『……うん…』
雪音を見ると少し残念そうな顔をしていた。
あれ?どうしたんだろう。
それから雪音とふたりで、泳いだ。
雪音は、浮き輪を使って泳いでいた。
浮き輪なしじゃ怖いらしい。
雪音は、まだまだ小さいから仕方ないよな。
ひとしきり遊んだ後、雪音が疲れたのかウトウトしだしたので、家まで送ってもらおうと思い美水を探した。
美水は、すぐに見つかった。雷花と二人で海の家のカウンターにぐったりうなだれていた。
さっきまで二人で暴れていたから、暴れ疲れたのだろう。
さっそく美水の車でまた送ってくれるように頼んでみた。
『そろそろ帰ろうか。美水の車でまた送ってもらえるか⁇』
『まだ早いですわ』
『いや、もう夕方だし…』
『…わかりました。車を準備させますわ』
結構、あっさり了解してくれた。
今日の美水は、聞き分けがいいな。
そう思っていたら問題が、発生した。
『恭弥様大変ですわ〜ちょっと来て下さい!(棒読み)』
『どうしたんだ美水!何かあったのか⁇』
『こっ、これは?』
俺は、車を見て驚いた。
『車のタイヤがパンクしていますわ!』
そう。車のタイヤが全部パンクしていたのだ。
『どっ、どうしようか…』
車がなかったら家に帰れないよな…
『ふむふむ。どうやら修理は、明日までかかるそうです。なので今日は、私の家の別荘に泊まりましょう!』
『えっ⁉︎別荘?』
『さぁ、行きましょう!別荘は、すぐ近くですわ』
おいおい、マジかよ…
俺は今日、美水の別荘に泊まることになりました。




