【40話】鈍感ビーチ
雪音と2人で砂浜で砂遊びを始めてしばらく時間が経った。
強い日差しの下で遊んでいたので、かなり喉が乾いた。
『雪音、少し休憩して何か飲もうか?』
こくり
雪音が頷いた。
近くに自販機とかあるのかな…
そう思って振り返ったら……メイドさんがいた。
常に笑顔を浮かべ、薄茶色の長髪を片側(右側)に垂らしていた。
確か片側寄せって言うんだっけ?
年は俺の3つか4つ上だろう。
『お飲み物でございます』
そう言って、メイドさんは、手に持っていたお盆から俺と雪音の分の飲み物を二つ手渡してくれた。
『あっ、ありがとうございます』
『いえいえ、気にしないで下さい。私、美水様の専属メイドの理子と申します。以後お見知りおきを(ニコニコッ)』
そうか、理子さんと言うのか…綺麗な人だなぁ〜
大人の女の色気がある理子さんに少し見とれてしまった。
ムニッ!
『いてっ!』
急に太もも辺りにに痛みが走ったので目をやると、雪音が俺の足をつねっていた。
『どうしたんだよ。雪音!』
ぷくぅー
ぷいっ、
雪音は、頬を膨らませてそっぽを向いてしまった。
『あっ、そうか!ごめんごめん!雪音の分のジュースも俺が持ったままだった。早く飲みたかったんだよな!雪音も喉が乾いたよな!』
ぷくぅーーーーー!
雪音がハリセンボンのように顔を膨らませた後に、とてとて走って行った。
『あっ、雪音ジュースは?』
声をかけたが雪音は、ふりかえらなかった。
『どうして拗ねたのかな…あっ、もしかしてこのジュースがあまり好きじゃなかったのかな?』
『うふふ。恭弥様は、鈍いお方なんですね』
え?鈍い?反射神経とか運動神経は、いい方なんだけどな?理子さんの目には、俺が鈍くうつったのかな?
『私は、お邪魔のようなので失礼しますね。ゆっくり海を満喫して下さいませ。それからお体にお気をつけて下さい』
理子さんは、いい人だな。
体調の心配までされちゃったよ。
理子さんは、早足でどこかに行ってしまった。
あっ、そうだ。
雪音を探しに行かなきゃ……
『お、に、い、ち、ゃ、ん♪』
『き、ょ、う、や、さ、ま♪』
あっ、ダメだ…
今までの経験から体が瞬時に理解した。
今、後ろを振り返っちゃっダメだ!
『雪音ちゃんに聞いちゃった!』
『雪音ちゃんに聞きましたわ!』
『なっ、何を?』
振り返らずに2人に聞き返した。
『う、わ、き、したよね?』
『う、わ、き、しましたわよね?』
なんでそんなにハモってるの?
待って…怖いから…
よしっ!逃げるしかないっ!
俺は、走りだした…
シュルシュルシュルッ。
『ぐはっ!』
俺は、足を何かに絡め取られてこけてしまった。
いったいなにがっ!
足を見ると。
昆布が足に絡みついていた。
『お兄ちゃん…なんで逃げるの?痛いのは、最初だけだよ(にこっ)』
『恭弥様、痛いのは、最初だけですわ(ぽっ)』
え?雷花は、目に光がないし…
美水は、昆布を持って地面に鞭みたいに叩きつけて楽しそうにしてる…
ひょこっ
雪音が美水の後ろにいるのが見えた。
『雪音!パパを助けてくれ!』
『………………』
え?雪音さん無言ですか?まさかのスルー?
えっ、ちょっ、まっ、待って!
話を聞いてくれー!