【39話】ビキニとスク水
俺は、今、海にいる。
ついさっきまで卵かけご飯を食べて、雷花と買い物に行こうとしていたのにさ…
俺の目の前には、紺色のスクール水着に『ゆきね』と平仮名で書かれたぜっけんをつけた銀髪ショートの幼女が1名。
黒ビキニをつけた銀髪ロングの幼馴染が1名。
白ビキニをつけた黒髪ショートの妹が1名。
女の子3名に男は俺1人という状況。
しかも海には、俺達以外に客がいないようだ。
しかし、俺は、海に来て早くも満身創痍である。
何故かって?
色々あったんだよ…
そう色々とね…
時間を遡って話そう。
雷花と出かける準備が出来てリビングに行ったら…
美水と雪音がリビングに…いや、我が家に不法侵入していたのが、今日の朝のことだ。
どうやらあの馬鹿デカイ段ボール箱に入って来たらしい。
何故か美水の気配でも感じとったのか、雷花が走って二階から降りて来たから、美水と雷花がまた一色触発になるかと思って焦ったよ。
でも、その心配は杞憂に終わった。
雷花が、『今からお兄ちゃんとデートだから今日は、見逃してあげるから早く帰って』とウキウキのテンションで美水に話したんだよ。
あぁ、今日は、平和な1日になるのかなって思ったら。
『じゃあ、皆で海に行きましょう!』
とか美水が言い出してさ。
『聞こえてなかったのかな?私とお兄ちゃんは、これからデートに行くって!』
『あらあら、私と一緒に海に行ったら恭弥様が私ばかりみて、水着の魅力もとい自分の魅力ですらまったく私に歯が立たないから海には行きたくないのですか…残念ですわ…』
とか美水が雷花を挑発してさ…
雷花が怒って、
『海に行く!今から行く!お兄ちゃんを悩殺して、私しか見えない様にして、あなたのプライドなんか粉砕骨折してあげるもん!』
とか対抗意識燃やしちゃってさ、結局、海に行くことになったんだよな…
海でも一波乱ありそうで行きたくなかったけど、これって絶対強制参加みたいでさ…
唯一、『パパと…いっしょに…うみ…たのしみ』って雪音が言ってくれたのが救いかな…
なんか、純粋な雪音が天使に見えてきたよ…
そして、美水の家の黒くて大きな外車で海まで送迎してもらい。
ビーチの近くの更衣室で着替えた。
もちろん更衣室は、男女は別だ。
早く着替え終わったので待っていると、美水が最初に更衣室から出て来た。
『黒は、大人の女の色、恭弥様、私の黒いビキニはいかがですか?ドキドキしますか⁇』
出て来て早々、そんなことを美水に問いかけられた。
仕方ないな正直に答えておこう。
『うん、確かに似合ってるし、色っぽiiiiいったぁーーーーっ!』
目をっ!目をヤられたっ!
『お兄ちゃんごめんね!砂で足を滑らせちゃって手がお兄ちゃんの目に当たっちゃた!本当にごめんね!ワザとじゃなかったんだよ⁉︎(棒読み)』
『ワザとじゃないなら仕方ないな…』
どうやら雷花も着替えが終わって出て来たらしい。
目の痛みは、すぐに引いて、見えるようになった。
見えるようになった俺の目には、真っ白いビキニを着た妹が映った。
『ダメだよ、お兄ちゃん!いくらお兄ちゃんが優しいからってお世辞を言っちゃダメだよ!お世辞は、時として本当の事を言われるよりも人を傷つけることがあるんだからね!だから本当のことを言わなきゃだよ!お兄ちゃんは、清純系が好みだから白いビキニの方が好きだよね⁉︎真っ白な物をお兄ちゃん色に染めたいんだよね⁉︎私の白いビキニは、どうかな?似合ってるかな?可愛かな?好みかな?食べたくなっちゃったかな?こんなに美味しそうな雷花ちゃんを見たら絶対に食べたくなっちゃったよね!えっ⁇今、ここで?ダメだよお兄ちゃん!こんなところで?でっ、でもお兄ちゃんが今すぐ食べたいって言うなら……雷花頑張っちゃうよ!えへへっ…』
なんか質問責めだな。雷花が興奮してたから会話の最後の方がよく聞き取れなかったが、まぁいいか。似合ってるか質問されたのまでは、聞き取れたし、答えておこう。
『うーん…そうだな…雷花が来てる白い水着も凄くかわ、ぐはっ』
急に後ろから殴られた。
いきなりなんだよっ!
振り返ると美水が棒を持って立っていた。
え?美水さん…今、その棒で殴ったの⁇
『あらあら、まあまあ!すみませんですわ恭弥様!今日は、スイカ割りというものを初めて行うので、予行練習の素振りを行っていましたら、勢い余って恭弥様に当たってしまいましたわ。頭は、大丈夫ですか⁇本当にすみませんですわ(棒読み)』
そうか…スイカ割り初めてなのか…ならワクワクしても仕方ないな。
『次に予行練習で素振りをする時は、周りに人がいないか確認して、人と少し距離をとってやった方がいいよ』
『そうですわね。次からは、気をつけますわ。そういえば、恭弥様!いつもは清純系な私が、たまにこういった大人の色香の漂う格好をしたらギャップにグッと来ますか⁇ドキドキしますか⁇ムラムラしますか⁇……って!!!きゃーですわっ』
昆布だっ!
昆布が飛んで来たぞっ!
しかも美水の顔面に…
『ごめんなさい、美水さん!美味しそうな昆布があったから頑張って取ったら、手から引っこ抜けて飛んで行っちゃった!』
どうやら雷花が飛ばした昆布は、海岸近くに打ち上げられていた物のようだった。
『ふふふふふ負負負負負負負負負』
美水が不気味な笑い声を出しはじめた。
『みっ、美水?』
『雷花ちゃんには、一度きっちりと大人の魅力を教えて差し上げなきゃダメのようですわね!』
『あはははは、大人の魅力?私は、可愛い妹系清純派ガールだから、そんな魅力いらないよ〜』
『お、と、な、の、みりょく!』
『い、も、う、と、ぱわぁ!』
そう呟きながら二人は、海岸に打ち上げられていた流木(長めの棒)でチャンバラを始めた。
俺が、呆気に取られて二人をみていると、海パンをクイクイと引かれているのに気がついた。
引かれた方を見ると、雪音がいた。
『パパ…いっしょに…あそぼ…』
ほんとに雪音だけが、いい子だなぁ〜
『よし、せっかく海に来たんだから、思いっきり遊ぼうか!』
コクコク。
雪音が頷いて同意してくれた。
俺と雪音は、暴れている雷花と美水から離れて遊ぶことにした。
手を繋いでの移動中…
雪音が、少しモジモジしながら聞いてきた。
『パパ…みずぎ…』
『ん?俺の水着?どうかしたか?』
『ちがう…ゆきの…』
『雪音の水着?あぁ、スクール水着か。雷花も小さい頃に同じようなの着てたな』
ムスッ……
ぷいっ
あれっ⁇
雪音が、急に不機嫌になってしまった。
何か悪いことでも言ったかな?
急に手を離して、座り込んで砂遊びを始めた。
『ゆきねさーん⁇おーい!雪音さ〜ん?俺も混ぜてくれないかな〜?』
ぷいっ
どうして雪音は怒ってるんだろう…
雪音をじーと観察していたらポロっと感想が口に出てしまった。
『それにしても雪音は、スクール水着が似合ってて可愛いな』
ピョコッ
雪音が急に顔を上げた。
『ゆき…かわいい?』
『あっ、あぁ、雪音は、可愛いよ』
『ほんと?…みずぎ…にあってる?』
『凄く似合ってるよ』
ありのままの感想をそのまま答えた。
『パパ…いっしょに…おしろ…つくろ…』
何故か雪音に一緒にお城を作らせてもらえる許可を頂いた。
夏の海だからだろうか…
雪音の頬が若干赤いな。
熱中症にならない様に気をつけてあげないとな!
こんな感じで海に来て早々色々あったのだ。
まぁ、今日は、雪音と二人でゆっくり海を楽しめばいいか。