【32話】NEW浴タイム
呼ばれて行ってみると、雪音がリビングで待っていた。
『雪音、何か用か?』
『パパ…ゆきと…いっしょに…おふろ…はいろ?』
『え?』
思わず聞き返してしまった。
『パパ…ゆきと…いっしょ…いや?』
雪音がしょんぼりしてしまった。
『嫌じゃない!まったくもって嫌じゃないよ!』
しょんぼりした雪音を見てられなくて、一緒に入ると答えてしまった。
『やった…パパと…おふろ…はじめて』
雪音の顔がぱぁっと明るくなった。
そうか…雪音は、パパと一緒にお風呂入ったことないのか…酷い父親だな、まったく!父親の顔が見て見たいよ!あれ?父親って俺だっけ⁇いやいやいや、俺は、まだ結婚してることや美水が妻で雪音が娘だということを完璧に信じたわけじゃない!でも、こんなに可愛い雪音が娘ならそれもありなんじゃないかって思っている自分がいるのも現実だ。
それに雪音から孤独なオーラを感じているのも本当だ。
今だけは、雪音に父親として接してあげたい。
いざ、雪音とお風呂に入るために脱衣所に行くと雪音がすぐに服を脱ぎ始めた。
そう言えば、雷花以外の女の子と一緒にお風呂に入るのは、初めてだな〜と思っていたら
ズバッ‼︎
目にヤバイぐらいの衝撃が走った。
『目がっ!目がっ!』
俺は、痛みで地面をのたうちまわった。
『恭弥様が私以外の女の子の裸を見るのは、許せませんわ‼︎』
『この声、美水か⁉︎』
『例え、愛娘の雪音ちゃんでもこれは、れっきとした浮気ですわ!UWAKIですわ!』
美水が意味の分からないことを言い出した。
美水が一人で騒いでいる間に、目も大分回復して見えるようになって来た。
『いや、女の子なら雷花と一緒に入ったことが…』
ズバッ‼︎
『目がっ!目がっ!』
また目をヤられてしまった。
美水め…何をしてくれるんだ…
俺が一度目より酷い二度目の痛みにのたうちまわっていると、
ガラガラガラ…
お風呂場のドアが開く音が聞こえた。
『さぁ、雪音ちゃん!パパなんて忘れて、ママと一緒にお風呂に入りましょうね〜♪』
『うん…』
その後、目がやっと見えるようになった時、風呂場にいたのは俺一人だった…。
『ふぅ…一人で入るか…』
体をさっさと洗って、お湯に浸かった。
中々いい湯で、目を瞑って湯に浸かると、今日一日の疲れが湯の中に流れ出して行っている様に感じた。
ホッとするお湯だ。
ばっしゃーん‼︎
急に顔にお湯がかかった。
『なんだっ⁉︎』
目を開けると、浴槽の中に雪音が入って来ていた。
『雪音、さっきお風呂から上がったばっかりだろ⁉︎』
『やっぱり…パパと…いっしょに…はいりたかった』
『そっ、そうか』
こんな小さい子に慕われて嬉しくなった。
『あっ、でも美水は、どうしたんだ⁉︎止められなかったのか⁇』
『ねてる…』
そうか寝てるのか。
美水も疲れたのだろう。
『パパ…ききたいこと…あるの』
『聞きたいこと⁇』
『パパ…どんなひと…すき?』
雪音もお年頃かな?
恋バナが好きなのかな?
『うーん…大人しくて、優しい子かな⁉︎』
『ゆき…おとなしいし…やさしい』
凄く嬉しそうに雪音が言っていた。
『そうだな。雪音は、大人しくて優しいし、とても可愛いから大きくなったらきっとモテるだろうな』
『ゆき…かわいい?』
『あぁ、可愛いよ!』
雪音が可愛いというありのままの事実を伝えてあげると雪音の頬が赤く染まった。
『ゆき…がんばる』
雪音は、何を頑張るのかな?
『いちばんになる』
一番って、かけっこの一番とかだろうか?
恋バナが終わると、水かけ合戦が始まった。
最初にふざけて雪音の顔に水をかけたら、バシャバシャやり返して来てさ、小さな手で水をかけまくって来て可愛かったよ。
二人でそのままふざけてたらさ、お風呂場のドアが急に空いてさ、美水がいきなり入って来たんだよ…
その後の事は、わかるよな…
また目をヤられたんだよ…
浴槽の中でお湯をバシャバシャしながら痛みでもがき苦しんだよ。
痛みがやっと引いて…気がつけばさ、またお風呂場に一人になってたよ。
うん。
やっぱりお風呂は、静かに一人で入るべきだよね!
気をつけよう。
そう誓った。
こんなに大変な入浴は、初めてだった。