【30話】ブランコって子供からリア充、ボッチ、サラリーマンのお父さんにまで等しく優しい乗り物だよね。
砂場で雪音とお山を手で作っていたら、砂遊びをするためのバケツとスコップを美水が準備してくれた。
俺と雪音が砂遊びを始めてすぐに公園のすぐ近くのお店で買って来てくれたらしい。
雪音は、砂遊びを気に入ったのか、山を作り終えるとすぐに他の物を作り出した。
雪音の頑張っている姿は、
『うんしょ、うんしょ』
という言葉が凄くぴったりだった。
『パパ…できた』
雪音が作ったのは、どうやらお城だったようだ。それもかなりのクオリティで再現されたお城だった。
『凄いな雪音!こんなの作っちゃうなんて、雪音は天才だな!』
そう言って雪音の頭を撫でてあげた。
雪音は、照れたのか、黙って顔を赤らめて下を向いていた。
ひょこっ!
急に大きな銀の頭が俺の目の前に現れた。
『私の頭も撫でて下さいませ!』
美水が、自分の頭を撫でる様に催促して来た。
『いや、雪音が凄かったから褒めたんだけど…』
『雪音ちゃんの砂遊びのための道具を買って来ました!気が利く嫁を褒めて下さい!そして頭を撫でて下さい!』
美水は、昔から頑固だ。
一度言い出したら聞かない性格だ。
諦めて頭を撫でることにした。
クシャクシャクシャ…
少し照れたが、頭を優しく撫でてやった。
『はふぅ…もう、幸せです…』
ぱたっ
美水が、ベンチに倒れこんだ。
『よし。丁度、木陰になってるし、このままベンチに寝かしておこう』
俺は、美水をほっとくことにした。
『それにしても、雪音が作ったこのお城、本当に凄いな!』
『おしろ…じゃない…ゆきのいえ』
え?
雪音さん、今なんと仰りました?
家と言いましたか?
そっか、そっか…
きっと、将来こんな家に住みたいな〜って思っている家だよね!
『いっぱいある…いえのひとつ』
うん。世の中には、沢山家があるし、その沢山ある家の一つだよね。
お城だって、王様や貴族の家だし、うん。雪音もきっとそう言うことを言いたかったんだよね
まさか、記憶はないが、今の俺が…こんな大きな城みたいな所に住んでるなんて…ありえるのか?…
よし。この話は、辞めよう。
『雪音、次は、ブランコでもしようか』
『うん…』
二人で遊具の所まで手を繋いで歩き、雪音をブランコに座らせ、ブランコを後ろから押してあげた。
ある程度、押してあげた後は、自分一人でやってみたいと言われたので、雪音の隣のブランコに座って、雪音が一人でキィキィ揺らして頑張っているのを見ていた。
キィキィーッ!
雪音が急にブランコの動きを足で止めてブランコから降りた。
ブランコに飽きたのだろうか…
『雪音、どうした』
スポッ
喋ってる途中で雪音が俺の膝に座って来た。
『パパと…いっしょに…ブランコ…のりたい』
雪音が嬉しいことをいってくれたので、雪音を膝の上に載せたまま、ブランコをこいだ。
雪音の目がキラキラして、顔も若干赤かったので、楽しくて興奮していたのだろう。
その後も二人でシーソーやジャングルジム等の遊具を遊び尽くした。
気づけば夕方で、日が沈みかけていた。
『さぁ雪音、そろそろ帰ろうか』
『いや…かえりたくない』
急に雪音が駄々をこねだした。
今日一日ずっと一緒にいて感じた印象では、雪音は、あまり駄々をこねそうな子じゃなかったのに…
『急にどうしたんだ?』
『こうえん…たのしかったから…かえりたくない』
『公園ならまたいつでも来られるから今日はもう帰ろう?』
『パパも…いっしょ?』
『あぁ、一緒に行くよ!』
『パパ…おしごと…いそがしい』
『お仕事よりも雪音の方が大事だから、これから何回でも何十回でも一緒に公園に行ってあげるよ!公園だけじゃなくて、動物園も遊園地もプールも全部一緒に行こう!』
『うん!!!』
この時俺は、雪音の最高の笑顔を見た。
一眼レフカメラを持ってないことを一生後悔する程に素敵な笑顔だった。
雪音は、将来、美人で素敵な女の子になるな…そしたら、雪音は、きっとモテるだろう。モテたら男から告白されて…俺は、そんなの認めないぞー!
俺が一人で考え事をしていると、
『パパ…はやく…かえろ?』
雪音に急かされて手を引っ張られた。
家への帰り道は、雪音と二人で手を繋いで帰った。
あれ?
何か忘れてないかな?
まぁ、いいか。
それよりもお腹空いたな。
晩御飯は、なんだろうか…
俺は、晩御飯のことを考えながら家までの道を急いだ。