【29話】婿養子になりました。
『あら、水神さんおはようございます』
雪音と美水と俺の三人で手を繋いで公園に行っている途中、道端で見知らぬおばさんから喋りかけられた。
『おっ、おはようございます』
『おはようございます山中さん』
『おはよう…ござい…ます』
俺は、一瞬見知らぬ人から挨拶されて戸惑ってしまったが、どうやら美水は、知り合いらしい。
そうかこの人は、山中さんと言うんだな。覚えておこう。
『雪音ちゃんよかったわねー。今日は、パパとママとお出かけなのー⁇』
『うん…そう』
こそっと雪音が俺の影に隠れながらおばさんの問いに答えた。
『どこに行くのかなー?』
『こうえん…』
『あら、そうなの良かったわね〜』
『いそぐ…から…また…ね?』
『あらあら、おばさんが呼び止めちゃってごめんね〜行ってらっしゃ〜い!』
『ばい…ばい』
雪音がおばさんに手を振った。
『それじゃあ、失礼します』
山中さんに挨拶をしてから公園へ向かった。
その後もゴミステーションにゴミを捨てているおばさんや散歩中のおじさん、ランニング中の若者にも声をかけられた。
『なぁ、美水、皆、俺のことを水神さんって呼んでるんだけど…』
『恭弥様は、婿養子ですから』
『え?』
『婿養子です』
『よし!雪音!公園までどちらが早く着くか競争だ!俺に勝てたらなんでも一つ言うことを聞いてあげるからなー』
公園が目に入ったので婿養子のことは、一瞬で忘れてしまった。
『なんでも…?』
雪音が聞き返して来た。
『あぁ、なんでもだ』
『なら…まけ…ない』
『よーい、どんっ!』
一生懸命に走る雪音は、とても可愛かった。
運動会で我が子の姿をビデオに収める父親の気持ちが分かった気がした。
今度、ビデオカメラでも買ってみようかな。
この競争。
勝ったのは、勝負に参加していないはずの美水だった。
『約束ですので、何でも願いを聞いて下さいますよね⁉︎』
『いや、俺が競争してたのは、雪音とだから…』
『パパ…やくそく…やぶっちゃっだめ』
雪音が寂しそうな顔で言って来た。
『仕方ないな…男に二言はないし。なんでも聞いてやるよ。ただし、無理なものは、無理だからな』
『やりましたわぁー‼︎』
美水が、激しく喜んでいた。
美水さん、お手柔らかにお願いします。
『パパ…すなば…いこ⁇』
雪音が砂場に誘って来た。
よし、今日は、雪音と公園を遊び尽くすぞー‼︎




