【8話】三者面談は、妻と愛人の戦いです。
三者面談当日。
三者面談が行われる2週間の間、授業は、午前中までしかなく、午後からは、その日面談がある生徒だけが残る。
俺は、一日目の一番最後に面談が行われる予定だった。
朝、雷花に面談のことについて確認するとと、少し遅れるかも知れないから先に面談する教室に入っているように言われた。
雷花に言われた様に、時間になっても祖父母が現れなかったので、面談の教室に入ると、美空川先生が待ち構えていた。
『失礼します』
『やっほー!恭弥くん!今からお見合いが始まるけど緊張してない⁇あー、親御さんにあいさつと結婚の報告するのが楽しみだなー』
この発言からして、まともな三者面談になるのか不安だ。
『先生、今日の朝は見かけなかったけど、三者面談のために釈放してもらったんですか?』
『そうなのよ!今日の朝まで恋の罠にハマって愛の檻に囚われてたんだけど。相手の男性に彼女がいるって分かってね。先生に脈ありなのは、バレバレだったんだけど、先生のせいで悲しい思いをする女の子が出るなんて…先生そんなの耐えられないもん!だから、その相手の男性には、先生のこと諦めて貰ったの!それに先生、若い高校生の男の子の方が好きだから‼︎三者面談でご両親にあいさつするためにきちんと戻って来たのよ!』
あぁ、先生ふられたんだな。
ふられてなお諦めきれなくて、暴れて檻に入れられたんだろうな…
そんなやり取りをしていると
ガラガラガラ…
教室のドアが開いた。
『遅かったなー……って、え???』
入って来たのは、爺さんでも婆さんでもなく、なんと…雷花だった!!!
『こんにちは〜』
雷花がさも当然といった感じで教室に入って来て俺の隣の席に座った。
『どうしたんだよ雷花?爺さんか婆さんは、来れなかったのか?』
『え?お爺ちゃんとお婆ちゃんは、最初から来ないよ⁉︎』
『いやいやいや、両親の代わりに来てもらうように頼んでくれるって言ったよな⁉︎』
『え?雷花そんなこと言ってないよ!三者面談のこと連絡するね!とは言ったけど、両親の代わりに来てもらうようにお願いするなんて一言も言ってないよ⁇三者面談で両親やおじいちゃん達の代わりに私が家族代表で行かせてもらうように願いするために電話したんだよ』
そんな馬鹿な…兄の三者面談に妹が来るなんて前代未聞だぞ⁉︎
『改めてまして先生、恭弥お兄ちゃんの妻の雪白雷花です。』
ぺこり
雷花が可愛くお辞儀をした。
『初めまして雷花さん。恭弥くんの愛人の美空川潤です。』
ビシッ×2
一瞬で空気が凍りついた。
それに二人ともなんて自己紹介をしてるんだよ。
『ふふふ。先生、愛人だなんてご冗談を!ユーモアのある先生なんですね。』
『いえいえ、雷花さんこそ。空気を和ますためのジョークを言ってくれるなんて嬉しいです。』
ピキッ×2
何かが切れる音がした。
『お兄ちゃんは、年下が好きなんですよ。愛人なんて妄想おやめになって下さい。それに愛人なんてどうあがいても妻には、かないませんよ』
『いえいえ、そんなことありませんよ⁉︎だって妻なんて、ツマらない女じゃないですか!愛人は、愛する人ですよ⁉︎男性は、決まってこう言ってくれるんですよ「君を一番愛してる!妻とは、すぐ別れる。絶対に別れる。」男性に真の愛を誓わせる存在が愛人なのです』
俺を置いて二人でヒートアップしている。
そんな中、雷花が爆弾発言ではなく、核兵器発言を投下した。
『私のお腹の中には、お兄ちゃんの子供がいるんです!』
『ぶはっ!』
あまりの衝撃に吹き出してしまった!
美空川先生も五分ぐらいフリーズした後、
『恭弥くんの裏切り者〜!奥さんと別れるってのは、嘘だったのね〜』
ありもしない発言を捏造して、走って教室を出て行ってしまった。
教室には、俺と雷花の二人だけになった。
『雷花どうしてあんなこと言ったんだよ』
『(ぼそっ)だってお兄ちゃんが女の人と密室で一緒に喋るのなんて許せなかったんだもん!それに子供の話だって嘘じゃないし!(遠くない未来)私のお腹の中には、お兄ちゃんの子供がいるのは、確定事項だし。』
雷花が何か独り言を言っていたがよく聞こえなかった。
そこで気づいたのだが、もしかしたら雷花は、自分が俺の力になりたくて爺さんや婆さんを頼らなかったのかもしれない。昔から雷花は、俺のために行動することが多かったからな…
よし、今日は、雷花を怒らず、優しく接してあげよう!
まぁ、それでも先生と喧嘩する必要はなかったから、明日謝っておこう。
まぁ、先生もわかってくれるはずだ。多分…
『雷花、そろそろ帰ろうか。』
『うん!お兄ちゃん!』
こうして波乱万丈な三者面談は、幕を閉じた。
そう言えば…あれ?
三者面談って、志望校や将来の夢を話すんじゃなかったっけ⁇




