開戦
「コーリア様って戦えるんですか?」
ぼそぼそと殿下に耳打ちしたというのに「聞こえていますよ」と真横から底冷えする声が聞こえてきた。すすすと目を横にずらせばいつの間にかコーリア様が隣に立っていて、これまたいつも通りの冷徹な視線をよこしてくる。う
わぁ、なんか懐かしい。これを見てほっとしてしまう私は相当毒されているのかもしれない。
「戦えるのか?誰に向かって言っているのですか。」
くすりと不敵に笑みをこぼし、組んでいた片方の腕を起こして人差し指でトントンと米神あたりを叩く。敵と対峙しているというのに敵に背中を見せ、私の正面に立っている。複数の敵を前にしてこの余裕の表情とは。まさか、ものすごく強かったりして。
「私は常にここで戦っていますよ。馬鹿力だけが自慢のそこらの塵屑供と一緒にしないでいただきたいですね。」
えーーと。頭脳派だとおっしゃりたいのだと思いますが・・・え、じゃあ腕っ節は無いということでしょうか。それってまずくないですか?
「私は王子と違って繊細なんです。」
「それは聞き捨てならないな。」と殿下との応酬が始まるや否やいい加減くだらない私たちのやり取りに痺れを切らしたのか、誘拐犯の男たちがさすがに切れて口をはさんだ。
「てめぇらっっ!!今の状況わかってんのかぁっ!?あ゛ぁんっ!?」
あの薄暗い小屋の中ではこの男の凄む顏がものすごく怖かったというのに、コーリア様のブリザードに比べたらなんでもないなと思ってしまう。それに殿下の仏頂面のほうがよっぽど恐ろしい。
「貴様、誰に向かって口を利いているのです。」
武器を構えてもいないのに、堂々とし、私と殿下の前からさらに一歩踏み出す。わ、やっぱり殿下の側近様ですもの。殿下に仇なすものは許さないのかしら。いつもけちょんけちょんに言っている気がするけれど、幼い頃からいつも一緒にいたと言っていたし、心と心はつながっているという感動の主従愛・・・・!?
「私はフローリア王国の次期宰相となる男ですよ?貴様らみたいな掃溜めが私にたてつくなんておこがましい!!分をわきまえなさい!!!」
ビシッと聞こえてきそうな勢いで指をまっすぐとつきつけたコーリア様は、満足そうに笑っているけれど、その向こうにいる男たちに青筋がくっきり現れてきているのに気づいているのだろうか。
「昔から威勢だけはいいからな。」
下がっていろ、壁際に私を追いやり、殿下は剣を引き抜きながらコーリア様の隣に立つ。
「コーリア、相手を挑発してどうする。」
「おや、逆上した相手のほうがやりやすいかと思いまして。」
そう言いながら懐から取り出したのは短銃だ。
「いい忘れましたがこれだけは得意なんですよ。・・・貴女はせいぜい我々の邪魔にならないところで蹲っていなさい。」
横目でちらりとこちらを見たかと思うと、二人は同時に男たちに向かって駆け出した。




