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第一章:メル友

普通ネットで知り合った人にすぐに本名を教える事はないだろう。だが俺たちは違った。すぐに本名を明かしてしまった。どういう子か分からないし、とりあえず話を始めるために。。。「得意なスポーツとかある?」と聞いてみた。そしたら意外な返事が返って来た「テニスだよ」って。なんとメル友で同じ趣味の人が見つかるとは思っても無かった。そして俺はテンションあがりまくる。「マジか!! 俺もテニス大好きやねん。親の影響で始めたんだけどさあ。小学生の頃はやってない時期もあったけど、中学校からはテニス一筋!!」。そしたらあやは驚いてた。「え?本当に?なんかメル友でこんなに趣味があう人を見つけられるとはおもってなかった!!」

後で判明した事だが、あやは長野に住んでる。俺は大阪。会うなんてほぼ不可能だよな。その日、おれは弟たちをプールに連れて行く約束をしていたから、とりあえずメールを中断した。「また8時ぐらいになったら話そう。弟たちとプール行ってくる」ってメールを送信した。出発する少し前に受信ボックス開いてみたら、「えええ プールいいなあ。あたしも行きたい!!弟たちの面倒観るとか偉いね!! 夜が待ち遠しいよw。 じゃあまた後で。」

思わずにこっとしてしまった。直感で分かったんだよな。こいつとはうまくやっていけそうって。

プールから帰って来て、ご飯を急いで食べてお母さんに「おれちょっと疲れてるから、もう寝るな?」と言って、返事も待たずに上に上がった。そしてすぐにメールを送った。「今からメールできるよー」。二分もしないうちに返信が帰って来た。「やったああ!!」。

その夜はテニスや恋愛、学校や友達について話した。そこで分かったのがあやは彼氏がいない事。だが好きな人はいるという事だ。俺はとりあえず綾乃恋愛を応援する事にした。相手は一つ上の、休み時間にはいつもギターを弾いてる先輩らしい。なかなかロマンチックなやつだな。だがギターでは負けないぞ。結構自信があった。

次の日もまたその次の日も俺たちはメールした。一日の中で一番楽しみだったのはあやと話す事だった。

「あやってさあ、テニスどのくらい強いの?予選とか勝ち進める?」

どうせ趣味程度なら予選ぐらいで限界だろうと俺は思っていた。

「え?あたしまだまだだよ。全国大会の一回戦とかで負けるもん」

‥•。

こういう風にはっきりと、そして普通に言われてしまうとなかなか空しい。

「まじか!!」

「うん。まことさんは?」

「あ、敬語とか気にしないで。普通にタメ語でイイからさ。年上って言っても三ヶ月違いなんだし。“まこ”でいいよ。俺はまだ大阪で180位ぐらい。。。」

なんか、自分はまだまだだと思い知らされた気がする。これからがんばろう。あやに負けていたらだめだ。

次の日、おれは親とけんかした。俺が勉強しなかったのが悪いのだが、とにかくやる気が出ない。それで怒鳴られたから、言い返した。イライラしてて、悔しかったからまたいつもの方法でストレス発散。血を見てやっと落ち着く。いつまでもこんな事をやり続ける訳には行かない。それは本当に良く分かっている。だけどやめられない。なんでか、快感にさえなっているようだ。麻薬みたいに一度始めたらやめられない。

なぜかあやに少し甘えたかった。だからメールを打ってみた。

「あやー•••。つらいよー。泣きたい。」

当たり前だが返信はなかなか帰ってこなかった。テニスでもしているのだろう。夏休みなんだろうし、全国大会まで進出できるプレーヤーなら当たり前の事だろうが‥•。

そのままベッドに倒れ込んで泣いていたらいつの間にか寝てた。

夢でたくさんの事を思い出した。目の前で人が死んでいく瞬間。大切な人が離れていく。生きる気力が無い自分。テニスで怪我した瞬間。痛みで顔が歪む自分。病室で呆然としている自分。そして医者に言われた言葉。「プレイには支障が出るでしょう。出来ないとは言いませんが前のようにプレーは出来ないかもしれません。特に精神面が傷付いてしまっているので。でもポジティブに考えましょう。まだあなたはあきらめてはいけない。精神面を強くすればあなたはきっとプレーヤーとしてやっていけるはずです。応援してます」ただ単に優しい医者のふりをしているのか、本当に俺の事を考えていたのか。どっちかは分からないが、そんな事どうでもよかった。俺はもうテニスをしない。そう思っていた。


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