四話 永遠に架かる虹
土産を買い込み村に戻る道中
虹之助はある者と出会った
狐の面を被った子供だった、虹之助にはこれに覚えがあった
父親の加藤一治定晴は足軽として戦に参加する日々を送っていた
手柄をあげられずに悔しそうにする父に狐の面を被り踊ってみせると父はとても喜んだ
その自分の狐の面だった
虹之助
「何をしておるのだ?それは俺の面ではないか、返してもらえんか?」
「何を言っておるのだ?分からんか?
お主はわしじゃ、わしはお主じゃ」
語尾が上がる口調
それは虹之助が幼い頃の口調に似ていた
「まぁ聞け、お主に伝えたい事があって参った
白い雪が降り積もり、周りの景色を変えていった優しく暖かい景色へ
しかし次第に白き雪の中に赤い雪が混じりだし周りの景色を変えていった冷たく暗い死の世界」
虹之助は胸騒ぎがした
虹之助
「どういう意味だ?」
聞くと同時に走りだした、胸騒ぎを止める事が出来なくて
虹之助
「雪!雪!雪ぃー!」
何度も叫びながら走っていた
やっとの事で村に辿りついたが、そこはもはや虹之助が見知っている村ではなくなっていた
村人の骸で埋め尽くされた道
その道はただ赤かった
虹之助は村人の骸を飛び越えて、いつもの川岸に一目散に駆け出した
しかし、そこにも骸が数体
その中に一際目立つ白い肌があった
虹之助
「雪!しっかりしろ!」
呼び掛けると雪の目が弱々しく開いた
雪
「虹之…助様…」
虹之助
「雪!何があったんじゃ」
雪
「分かりません…急に大勢の武士が…
申し訳ありません…
子供…達を守る事…が出来ませんでした」
虹之助はどうにもならない状況に歯軋りを立てた
虹之助
「何を言っておるのだ!何も気に病むな!」
雪を抱き締めたまま虹之助は声を上げずに泣いた
雪
「そんなに、お泣きになられて…
虹之助様の鎧兜を着けた様初めて見ました、誠にりりしくありますね」
虹之助
「戦には出ないと決めたのだ」
雪
「良かった…戦は大嫌いにございます…
虹之助…様
虹之助様が架ける虹を見てみたかった」
虹之助
「見せてやる!これから共に生き、永遠に架かる虹を」
それを聞くと雪は微笑んだ
それと同時に雪から力が抜けていくのが分かった
虹之助はゆっくりと雪を地面に移し土産に買ってきた髪挿しを付けた
怒りに震える気持ちを抑え虹之助は歩き出した
この村を強襲したのか確かめるために
村の中心部に固まる武士達、それは間違いなく城下町でみた鎧兜の集団だった
怒りが込み上げ、血が沸くような気持ち、そこで虹之助は初めて太刀を抜いたのだった
単身突撃する虹之助
一人、二人と斬り捨て
二十人は斬っただろうか?
しかし、やはりそれは名立たる武将の配下の者達
数が多すぎたのだ
傷つき倒れた虹之助
虹之助
「すまん…雪
虹を架けるどころか、血の雨を降らせてしまった
嘘はつきたくなかった…」の日季節外れの雪が降りだした
雪から雨に変わり雲が消えた所に大きな虹が架かったという
村人の生き残りは言ったという
虹之助と雪は空で仲良く暮らしておるだろう…と