三話 陰謀
その頃
虹之助は大きな城の中の中庭に居た
自分を呼びに来た殿様に接見する為だ
久々に付けた鎧兜は少し重くなったように感じた
「そちが虹之助か?」
虹之助
「はっ」
「面を上げよ」
虹之助が顔を上げると、そこには大層な髭を貯えた男が立っていた
「わしは、この一国を預かる
波多野四郎公綱と申す
虹之助よ、よく来てくれた」
虹之助
「はっ。勿体ないお言葉深く身に染みまする。ですが、何故私を?」
波多野
「なに、近くの村で腕の立つ者がおると聞いた故にな
そんな事はどうでも良い、虹之助よ、我にその命預けよ。
近く隣国との大戦となろう」
虹之助
「恐れながら申し上げます」
波多野
「なんじゃ?」
虹之助
「その戦は何の為になさるのですか?」
波多野
「実はの、先の内乱を沈めた時に戦功として土地を与えたのだが、一国と限られた領土故に足りなくての。
心配は要らん、そちへの恩賞も働き次第で考える」
虹之助
「愚かな…
そのような理由で戦を始めるおつもりか?
それなれば、この一件、伏してお断わりする他ございますまい」
波多野
「ほう?断るか?
それがどういう事か分からぬ訳ではあるまいな?
貴様のような名も無き浪人にことばを掛けてやったのにの」
虹之助
「お斬りになるならご自由に、それでは失礼つかまつる」
「殿!良いのですか?あのように申した者を!」
波多野
「好きにさせておけ、あやつ分かっておらんの
所詮、浪人よ。吹けば飛ぶ、しかしあの村は隣国との戦で要となる土地。
必ずや落とさなければならん、出来るな?」
「はっ」
城下におりた虹之助は怒りを通り越し、もはや呆れていた
虹之助
「せっかく城下町まできたのだ、雪や子供達に土産でも買って帰るか」
土産を選んでいる途中、沢山の兵が村の方へ進んで行くのを見たが
きっと国境いの守りを強化するのだろうと虹之助は気にも止めなかったのであった