一話 出会い
時は戦国
そこに一人の武士が居た
これの名を加藤虹之介箕郷という
しかし武士と言えど決して刀を抜かぬ者であった
扱う刃物は、ハサミのみ
村の子を集めては紙を切り様々な型を作り喜ばせ笑わせていた
また、その村には一人の女が居た
その女性の名を雪という
しかし女性といえど男に愛される事は無かった
雪は体が弱く、戦国の世では避けられてきたのだ
それ故、男を愛した事も無かった
愛する者のは一つだけ、村の子だけだった
雪という名前の通り、白く透き通るような肌で子供を見ては頭を撫で微笑んだ
戦乱の世の最中
二人は子供達が遊ぶ川岸で出会ったのだった
男と口を利いた事の無い雪は戸惑ったが、その内武士が雪に話し掛けた
虹之助
「俺がいたら邪魔かの?」
雪
「何故ですか?」
虹之助
「お主があまりにも強張った顔をしておるから、気になっての」
雪
「そんな事はありません、お気になさらずに」
虹之助
「そうか」
そういうと虹之助は空に目を向けた
虹之助
「お主の名前が雪ではなく雨だったらのぉ」
雪
「どうしてですか?」
虹之助
「ん?いや、俺の名前は虹之助だろう?
雨なら虹を架けてやれるのに
さすればお主の笑顔が拝めるかとな」
虹之助はとても悔しそうに、それでも楽しそうに笑った
雪はとても驚いた、こんな笑顔は見た事もなかった。しかもそれが自分に向けられた笑顔なら尚更だった。
雪
「雪では虹を架けられませんか?」
顔が焼けたように赤くして聞いた
虹之助
「いや、雨も雪も元は同じだ。
俺なら必ず架けて見せる」
照れ臭そうに笑う虹之助を見て、雪は初めて人を愛するとは、こういう事なのだと知った
この笑顔に一目で惚れてしまったのだから