エピローグ:世界で一番サクサクな明日
数日後。
アンバー修復工房には、以前と変わらぬ――いや、以前よりもずっと賑やかな音が響いていた。
「チュロじい! その髭、また少し焦げてるよ!」
「っはっは! カロン様に直してもらったこの髭は、どんな熱さにも耐えられますぞ!」
「王様、そんなに鏡ばかり見てないで、これ食べてください!」
「うむ。このフロランタンの硬さ、私の心まで引き締まるようだ」
工房には、チュロじいやチョコの王様、そして時折遊びに来る氷菓の巫女の姿があった。 カロンは元気に工房を駆け回り、みんなに焼き立てのお菓子を配っている。
「……おい、カロン。客を甘やかしすぎるなと言っただろ」
工房の隅で、相変わらず腕を組んで火の番をしているソルが口を挟む。
「えへへ、いいじゃない! みんな幸せなんだから。ねえ、ソルも一口食べる?」
カロンがフロランタンを差し出すと、ソルは「いらん」と顔を背けた。だが、カロンがそれを引っ込めようとすると、慌てて彼女の手首を掴んだ。
「……半分だ。お前が食べるなら、俺も食ってやる」
二人は一つのフロランタンを半分こにして、サクッ、と良い音を立てた。その音は、どんな魔法よりも強く、どんな雨よりも温かく、二人の未来を琥珀色に染め上げていった。
琥珀の修復師と、世界で一番甘い塩。 二人の物語は、まだ始まったばかり。この世界に「おいしい音」がある限り、二人の絆が溶けることは、もう二度とないのだ。
ーFinー




