黒騎士
アリサの前に現れた黒騎士。夜の闇の中でもハッキリと姿形が見える程に。
その鎧は。
その存在は。
異質であった。
しかし、不思議とアリサは恐怖を覚えなかった。無害に感じたとでも、優しさを感じ取った訳でもない。
中身の無い空洞の器。それが黒騎士の印象だった。
「あの―――」
アリサが黒騎士に話しかけた途端、暗闇の中で青の光が灯った。その光の正体を確かめるように、アリサが顔を下に向けると、黒騎士の右手に青い炎が纏われていた。その炎に熱は無く、氷のように冷たい。それでも、その青い炎がどれほど危険な魔法なのかは、まだ子供のアリサにでも分かるほどであった。
青い炎が右腕全体に猛々しく燃え上がると、火花が散りばめられた。その火花は森に隠れた魔の者を的確に捉え、その身を瞬く間に消滅させた。その様子を見たアリサは途端に恐ろしくなり、その場から走り去ろうとした。
しかし、まさにその時。アリサが背にしていた大木から無数の手が生え、アリサを木の中へと引きずり込もうとアリサを捕らえた。
「ヒッ……!」
木の中へ引き込まれる寸前、アリサは咄嗟に黒騎士の左手を握っていた。その手は氷のように冷たく、実際の手の大きさよりも遥かに大きく感じた。
「グ……ク……助け、て……!」
アリサの助けを乞う声に、何の反応も示さない黒騎士。ただ、握られたアリサの手を離す事はなかった。
黒騎士はアリサを縛る大木の手からヒョイと救い出すと、ハエを払うかの如く、大木を青い炎で消滅させた。




