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第5話 またからまれてる! わたしじゃないけど。



 ラフティの屋敷に暗殺者の頭を突っ込んでから数日後。


「おい、ここで屋台を出してるんなら、ちゃんとケラマー組に場所代払いやがれ、このババアが!」


「何いってんだい、ウチはイシガー組にちゃんと場所代払ってやってるよ! 商売の邪魔するんじゃない」


「はっ。イシガー組はなぁ、今、動けねーんだ。知らねぇのか?」

「この前、組員のほとんどが動けねーくらいやられたんだってよ。残念だったな?」

「そんな……」


 いつもの焼き魚を食べようと思ったら、屋台のおばちゃんがろくでもない感じの男たちにからまれてた。


「ぐほぅっ」

「だはっ」


 とりあえず殴っておく。

 わたしの大好きな焼き魚の方が大事なのだ。だから屋台のおばちゃんはとっても大事な存在で、助けない理由がない。


「あ、おばちゃん。いつもの塩焼きひとつお願いします」

「え……あ、うん。す、すぐできるけど……アンタ、こいつらに手ぇ出して大丈夫なのかい?」


「こいつらって何?」

「ああ、こいつらはケラマー組のチンピラだよ」

「ケラマー組?」


 また組が出てきたよ……ふたつ目だよ……。


「このへんはイシガー組のなわばりなんだけどねぇ……西港の方をなわばりにしてる連中がケラマー組なんだよ」

「こっちは……東港になるのかな? それで、場所代って?」


「イシガー組にちょっと払っておくとね、お客とのもめごととか全部、どうにかしてくれるのさ」

「もめごと? そういうのって衛兵とかの仕事じゃないんだ……」


 この町ってどうなってるんだろ?

 やっぱりラフティかな? あいつがダメなんじゃないの?

 評議会議員ならちゃんとすればいいのに。


「衛兵はねぇ……ちょっとしたことだと動いてくれないよ。こっちが殴られたとかでもどうだか。なかなか難しいよ」

「殴られてもダメなんだ? あ、ならわたしは大丈夫ってことか。殴ったけど」


 この町の衛兵にわたしが捕まることはないみたいで安心した。

 殴った方のわたしも捕まらないってことだもの。


「あはは、そうだねぇ。まあ、殺されたらさすがに衛兵も動くんだけどさ。殺されてからどうにかしてもらっても意味ないじゃないか」


「それはそう。なるほど、そうなる前にイシガー組が出張ってくる感じ?」


「そういうことさ。実際には、場所代を払っておけばもめごとになることはほとんどないんだけどね。ほら、この青い布を結んでるのがイシガー組に場所代を払ってる合図なのさ」


 ……実質的な治安維持担当がイシガー組だった件。しっかりしろ、衛兵。でも、わたしのことは捕まえなくていいけど。


 まあ、公権力が徹底的に治安維持とかしてたらキリがないのも分かる。

 衛兵が町の全てを見て回ることができないくらいの人数なのかも。

 または税金でこれ以上の給料を払いたくないとかもあるかも。


 でもなぁ……ああいうやんちゃな人たちが治安維持担当か。

 そのイシガー組をわたしが殴って動けなくしたから、西港のケラマー組がこっちまでやってきた、と。

 要するになわばりを奪い取るつもりってことか。


 システムとしては、まあアリだろうと思う。民間の警備会社の遠い親戚みたいなものだろ。

 屋台のおばちゃんが納得して払う程度の金額なら、場所代が商売を圧迫するってこともないだろうし。


 問題はそれが……イシガー組が評議会議員とかいうラフティにまでつながってることか。


 うん? ひょっとして……そもそもそれがニライカナ国の基本的な形なのかも。

 有力者っていうのはそこまで含めての力ってことなのか。


 そうすると……わたしがイシガー組を殴った今は……。


「おいてめぇ! ウチのモンに手ぇ出しやがったな!」

「ふざけんなこの野郎!」

「オレたちに逆らうとどうなんのか、わかってんだろーな?」


 ……こうやってケラマー組がどんどんやってくるワケで。


 うん。

 とりあえず、ケラマー組も全部殴るか……。






「て、て、てめぇ……いったい何モンだ……?」


 西港の方にあるケラマー組のたまり場になってる酒場で、30人くらいの男たちが倒れてる。

 殺してないから死んでないとは思う。殴っただけだし。


 見た感じは死屍累々って雰囲気だけど。


「わたしはティーナ。とりあえず、ケラマー組の連中にからまれたから殴ってる」

「ふっ、ふざけてやがるが……あれだな? てめえ、東港の議員の屋敷にすげぇ大穴あけたっつー……」


 そこまで大きな穴はあけてないはず。

 だいたい頭が入るくらいの穴をふたつだったと思う。暗殺者の頭を突っ込んどいたから間違いない。

 ラフティのところはかなり大きな屋敷だったから……対比で考えればそんなに大きな穴でもないだろ。うん。


 ……そもそもあれってわたしの犯行だとバレてるの? いや、この人たちが知ってるってことはバレてる? まあバレてても問題ないけど。


「それで、アンタが最後の一人になったワケだけど……ケラマー組とつながってる議員って誰? ラフティとはちがうと思うけど。そいつの屋敷はどこなの? いるんでしょ? イシガー組のラフティみたいなのが」


「そ、それを聞いてどうするつもりだ、てめぇ……」


 ビビりながらも対話ができるのはなかなか度胸がある。

 ケラマー組の割と上の方の人かも。


「面倒だけど、話をつけとかないとキリがないし? まあ必要ならその議員を殴っとくつもり。だから案内してくれない?」

「案内? すると思ってんのか……?」


「まあ、してくれないなら、議員のところに自分で行くだけかなぁ。この港町の議員って二人だけって話だからラフティじゃない方とどうせつながってるんだろうし」

「し、知ってたのか……それならここまでやる必要あったのかよ……」


「ケラマー組がイシガー組のなわばりまで出張ってたからちょっとね」

「てめぇにからんだのか? あのバカどもが……」


「わたしというより、屋台のおばちゃんが困ってたから? まあイシガー組がいないの、わたしのせいだと思ったし」


「それだけでここまで……」

「どっちも動けなくしとけばおばちゃんも困らないでしょ?」


 わたしはあの屋台の焼き魚がお気に入りなのだ。

 毎日食べてるし。


「で? 案内するの? しないの? どっち?」

「……ついてこい」


 あ、案内するんだ。

 助かる。






「……こちらはラフティとはちがって、キミに手出しはしていないはずだが?」


 わたしをにらんでるこのソーキィというおじさんがこの港町で二人目の評議会議員だった。


 言われてみればそうだった。

 ラフティはオークションに出したクマのことでわたしにからんできたのだ。ソーキィは何もしてない。やったのはケラマー組だった。


 ラフティはダメ。クマのことがあるから。

 ちゃんと殴るだけの理由はあった。


 ……こっちのソーキィはわたしに何かをしたワケじゃない。そこは確かにそうだ。


「……わたしもあなたから100万ゴルダラをもらおうとは思ってないけど?」

「そういう話なのか……? いや、ちがうだろう……?」


 わたしとしてはそういう話にしておきたい。これでごまかそう。

 ラフティとはちがって、わたしもソーキィから100万ゴルダラをもらおうとは思ってないのは事実だし。


 まあ、そんなんじゃ納得はしてくれないか。


「……東港にケラマー組が手を伸ばしたから、かな?」

「キミには関係ないことでは?」


「無関係でもない。イシガー組が動けないのってわたしのせいだから。それで本当に関係なさそうなおばちゃんたちが困るのはちょっとちがうし」


「厳密に言えば関係はあるが……まあ、そのあたりはいいか。要求は、イシガー組のなわばりにケラマー組を入らせるなということでいいのだろうか? そもそも……キミのせいですでにケラマー組も動けなくなっているようなのだが?」


「まあそんな感じでよろしく」


 わたしとしては現状維持であってほしい。

 動けないから治安は維持できないみたいだけど。


「……問題は、イシガー組も、ケラマー組も、しばらくはまともに動けないというところにある」

「問題ないでしょ。どっちか片方じゃなくてどっちもなんだから」


「いや。あの連中は必要悪というか……実質的にこの町の治安を守っていた。もちろん乱す部分もあるが、それでも治安維持の方で役に立っていたからこそ、チンピラの集まりが存在できていたと言える」


 まあ、それはそう。

 知ってた。わたしもそういう風に理解はしてた。


「キミにはしばらくこの町に滞在してもらって……何かあれば西港も、東港も守ってもらわなければ困る。少なくとも、イシガー組とケラマー組がある程度、動けるようになるまでは」


「うーん……。まあ、もともと、しばらくはこの町にいるつもりだったけど……」


 わたしはソーキィをにらみ返す。

 引き受けるのは仕方がない部分もある。

 でも、簡単には引き受けられない。


 こういう時に交渉しない人間はなめられるから。


「イシガー組とケラマー組の中には普通に町民として登録されている者もいる。だからキミを衛兵に捕まえさせるという手も……」

「それ、本当にできると思う?」


「……いや。思わないな。だが、実態として、こちらが困ったことになっているのは間違いない」


 ソーキィはラフティの関係者がどうなっているのか、ある程度の情報を得てるんだろ、たぶん。

 その結果としてわたしの強さを認めている。

 少なくとも、衛兵程度ではどうにもできないと考えるくらいは。


 このあたりが妥協点か。


「……無期限というのは無理」

「1か月だ」

「1週間じゃない?」

「せめて2週間は頼みたい」


「……報酬なしで?」

「1日あたり……1000ゴルダラだ」

「2週間で3万ゴルダラなら引き受ける。ほかにもなんかサービスして」


「そうさせてもらおう。宿を中間地点に用意しておくが、そこの支払いはこちらがするというのはどうだ?」

「それ、いい。そうして」


 こうして、わたしはあと2週間ほど港町ナーハに滞在することになった。






できればブクマと評価をよろしくお願いします!

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