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【長編】婚約破棄された令嬢は国外追放満喫中!  作者: 相生蒼尉


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第21話 だ、だって! やりたかったから!?



 夜。シブーシの街は闇の中だ。


 でもまあ、まだそんなに遅い時間ではない。

 家の中で明かりをつけて起きてるくらいの時間だ。子どもは寝てるかも。


 わたしは魔法で宙に浮かせて運んできた男を、弱めの爆裂魔法とともにとある屋敷の窓へと放り込んだ。


 ドガンガッシャーン!!


 ……うっ。この時代のガラスはかなり高価なはず。ちょっと罪悪感。


「なんだ!? 何が起きた!?」

「分からん! 廊下の方からだ! 窓ガラスが割れたような音だったが……」

「窓ガラスが? あんなかたいものが割れたのか?」


 窓ガラスがかたいのは防弾ガラスとかではなく、単に技術レベルの問題だ。

 薄い板ガラスはまだ作れないだけ。

 だからガラスが超分厚いものになってる。


 ここはシブーシの有力者であるクオボー家の屋敷だ。

 情報ソースはイリーナ。


 アラミス連合の外交を担当している人物がここの当主の弟らしい。


「……なんだ? 人間か?」

「男だな……」

「動かんぞ……このようすでは刺客ではないようだが……まさか、トノシーさまの身内の誰かなのか?」

「クオボー家への脅しか何かということか?」


 あ、ダメだ。

 完全に勘違いしてる。そうじゃないのに。


 わたしはクオボー家を脅したいんじゃなくて、サポートしたいのだ。


 わたしはひょいっとジャンプして、割れた窓の枠の上に立った。


「なっ……」

「何者だ?」


「……その男はライターベルト。ヤーバナ王国によって国外追放となり、アラミス連合に入った者だ」


「ヤーバナの……?」

「どういうことだ……?」

「それよりも貴様は何者だ?」


 ええと……なんか間違ったような気がする。

 ライターベルトじゃなかったかも。なんて名前だったっけ……?

 でも、まあいいか。


「……この男が入国する時には、あの惨殺事件の被害者たちと一緒だったはずだ」

「なんだって!?」


 ざわり、と廊下にいる男たちが騒がしくなった。

 重要なのはその点になる。


 あ、惨殺事件関係だからって死体だと思われるとマズい。


「……安心しろ。眠っているだけで死んではいない」


 まあ、昼間はほとんど死にかけだったけど。


 昼間に大慌てで貧民街に戻って、こいつの身柄を確保した。

 前騎士団長の息子はマジで死ぬ寸前だったと思う。


 とりあえず最低限の回復魔法で治療して、生存を優先した。


 それと……イリーナによってぼっこぼこにされてた顔面の治療を優先した。

 誰だか分からないというのは問題だから。顔って大事。


 もちろんわたしのチートな回復魔法だから、顔は元通りのイケメンに。


 結果として綺麗すぎるくらいに戻ったんだけど……アイーダはそれが不満だったらしい。


 拷問を受けて綺麗すぎるのはおかしいからと、目のあたりを左右どちらもガツンと殴った。

 だから今はパンダみたいな顔になってる。


 まあ、本人だと確認できるくらいの青タンしかないけど。


「手足をよくみろ。惨殺事件と関係があると理解できるはずだ」


「手足……?」

「あ! 爪が……」

「全部はがされてるぞ……」


 そこはイリーナが悪いんであってわたしは悪くない。

 そういう怖ろし気なものをみるような目をわたしの方へ向けないでほしい。


 くっ……イリーナがうまく魔法を使えたらこの場に送り込んだのに……。


「……なぜこんな男をこの屋敷に放り込んだ?」


「ヤーバナ王国との外交交渉があるはずだ。アラミス側は悪くないという生き証人が必要だろう?」


「それは……」


 とりあえずいちいち細かくやりとりしたくない。どこでボロが出るから……。


 強引にいろいろと話して、とっとと逃げるのがいい。

 こっちに都合のいい話だけで済ませたい。


「……いいか、よく聞け。そいつはあの惨殺事件の生き残りだ。しかもヤーバナ王国から国外追放になってる。だからあっちに戻れない。もとは貴族で……平民としてはまともに生活ができるかあやしい男だ。アラミスでの生活を保障してやれば……あとは分かるな?」


「な、なんだ……?」

「アラミスにとって都合のいい証言をするってことだ。例えば……惨殺事件の犯人はアラミス連合ではなくヤーバナ王国の人間だ、とかな」


「それは……」

「うまく使えば……ヤーバナ王国の要求も、ヤーバナ王国との戦争も回避できるということだ。理解したか?」


「あ……」

「確かロードシトさまがヤーバナとの交渉にあたる予定だったぞ?」


「ヤーバナとの交渉が失敗するか、成功するかはおまえたち働き次第だ。それでは失礼する」

「待て! 貴様は何者なんだ!」


 その時、ちょっとウズっとした。

 慣れない演技でストレスもたまってたのかも。


「……われわれは闇に光をかざす者……」


 言っちゃった!

 つい言っちゃった! でも、後悔はしてない!


 わたしは窓枠を蹴って、跳んだ。

 そのまま屋敷の周りにある外壁をくるりとバク宙しながら一気に飛び越えた。


 そのあと、クオボー家の屋敷でどんなことが起きたとしてもわたしに責任はない。


 アラミス連合とヤーバナ王国の武力衝突を防ぐチャンスはあげたんだから、あとは自分たちでどうにかしてほしい。


 外壁のところで隠れて待っていたアイーダとイリーナが合流する。


「……姫さま。闇に光をかざす者って何です?」

「聞いてたの!?」


「イリーナ。忘れなさい」

「でもアイーダさま……」

「忘れなさい。これは命令よ?」


 わたしをかばってくれるアイーダの気持ちが嬉しいというよりも、とにかく恥ずかしかった。ていうか、アイーダも変な目でみてるし!


 でも、後悔はしてないから!


 だって、そういうのってやりたいでしょ! カッコいいもの!






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