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【長編】婚約破棄された令嬢は国外追放満喫中!  作者: 相生蒼尉


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第13話 戦場はスイートでした



 パリン!


「えっ!? 何よ、これっ?」


 聞き覚えしかない声が聞こえる。わたしにとってはすっかり聞き慣れた声だ。

 しかも……だいぶ慌ててるみたいだ。


「警戒音つき防御結界魔法だけど?」

「そ、そんな魔法、聞いたこともない……」


 話しかけたらマヌケなことに言葉が返ってきた。

 黒装束で顔も隠してる。でも、声で誰かは分かってるんだけど。


「……やっぱりナミーユが監視役で、暗殺者?」

「な、なぜ正体が……」


「声で」

「あ……変な結界に驚いて思わず普通にしゃべってしまったから……」


 ナミーユが有能に見せかけてややドジっ子だということは知ってる。

 あと、声は何度も何度も感じさせたことで十分に聞きなれたから、わたしが聞き間違えることはないし。


 ついでに胸のサイズも、だ。うらやましいくらい大きいのが黒装束の上からでもわかる。もいでやろうか……?

 何食べてるんだ? やっぱりおさかななのか?


 逆手にダガーをかまえるナミーユからは……前と同じ痺れ薬のにおいがする。

 また、わたしの誘拐を企んでる?

 もしくは痺れ薬で動きを鈍らせれば勝てると考えた?

 まともに戦ってもわたしには勝てないという認識はあると思う。


 ナミーユの向こう、部屋の外には他にも気配がある。薄い気配だから暗殺者タイプなのは間違いない。


 アイーダが魔力のゆらぎを抑え込んで身体強化を全身に広げていく。

 うっすらと金色に発光するアイーダの姿はメイルダース辺境伯領ならよく目にするものだ。

 アイーダに教えられて、身体強化魔法の使い手は他ではほとんどいないと知ったのはつい昨日のこと。


「……知り合いを殴るのは、わたし、あんまり好きじゃないんだけど」

「そういう性格もふまえての配置かと」


「ふん……あなたたちの正体だってもうバレてるわよ? お互いさまね?」


 ナミーユはまだしゃべるつもりらしい。余裕がある感じではないから時間稼ぎをしているはず。

 その間に部屋の外の連中が包囲するように展開するつもりだろ。


 部屋の外の気配が移動していく。


 わたしの結界魔法がナミーユの予想外だったこと……ここが問題かも。

 ナミーユの立ち位置は、どれなんだ?


 今は……情報優先の場面か?

 どうせ戦えば一瞬で終わる。


 ナミーユの後ろにいるのは……回復派? それとも戦争に舵を切った一部の貿易派? どっちだろ?

 あれだけ貿易を熱く語ったラフティではないと思いたい。


「……わたしの正体って?」

「ええ。ティーナさんの正体はもうわかっています。最初は……婚約破棄されたという噂の人かと……。でも、そこに本物があらわれた」

「え? 本物って……?」


 ナミーユはわたしからアイーダへと視線を流す。


「……そちらの……メイドや護衛のフリをしている方が、本物のメイルダース家のお嬢さまであることはもうこちらも理解しています」

「なっ……」


 アイーダが視線でわたしの発言を止めた。

 その視線で叫ばずに我慢したわたし、立派だと思う。


 いや、確かに血縁関係とかあってわたしとアイーダはよく似てるけど!?

 でも、なんでそんな勘違いを!?


「大人しく協力していただけるのであれば、手荒な真似はいたしません」

「……どうしてわたくしが本物だと?」


 アイーダがかまえを崩さずにナミーユへと問いかける。


 どうやら本物のフリ、をするつもりらしい。

 影武者としてわたしの代わりになるのがアイーダの役目でもあるから。


「……それはその……あきらかにお嬢さまらしさの格がちがうので……」

「なるほど、そうでしたか……残念ながら納得しかありません……」


 アイーダが大きくうなずいてるのはなんで!?

 わたしが悪いの!?


「わざとメイドや護衛のフリをすることで正体を隠していることも、正体が判明した理由のひとつです。その方が誤魔化せるから」

「そういう風にお考えになったのですね……」


 フリしてるんじゃなくてアイーダはそもそもわたしの侍女兼護衛だけど!?


「傭兵団の生き残りが耳にした『姫さま』という言葉が最大のヒントになりました」

「ああ、そこでしたか……」


 あれはアイーダがわたしに言ったのに!?

 逆だと認識されてるのはなんで!?


 わたしがアイーダのことを『姫さま』って呼んだみたいになってる!?


 あと、誰も殺してないからあの傭兵団は全員生きてるし!?

 それなのに生き残りって表現はおかしいだろ!

 残りじゃないから! 全員だから!


「そして……メイルダース辺境伯領の代名詞ともいえる身体強化魔法をお使いになられてます。その、全身にまとう美しい魔力が真実を語っています」

「……メイルダースでは珍しくありませんけれど?」


「逆に、ティーナさんがそのような安定した魔力をまとった姿を見たことがありませんから。それに、ティーナという偽名もあやしいですし。何よりも、その……貴族令嬢のおとりとしては、なんというか……あまりにもガサツすぎて……」


「そうです、ね……」


 アイーダ!?

 そこにうなずくのはやめて!? わたしがガサツなのは間違ってないけど!?


 ナミーユはアイーダからわたしへと視線を戻した。


「本物を見つけてしまったのなら……それは利用させていただきたいので。お願いします、ティーナさん。大人しく投降してこちらにご協力を。ティーナさんとは戦いたくないです。悪いようにはなりませんから」


「それは……わたしに勝てないから? それとも、わたしと愛し合ったから?」


 そこでアイーダがわたしにジト目を向けた。

 いや、絶対に気づいてたでしょ、この話は?


「そもそも愛し合ってはいないですよね? 一方的に責めたてて、これでもかこれでもかとこちらが意識をとばすまでお楽しみに……はっ、何を言わせるんですか!?」

「ナミーユが自分で勝手に言ったんだけど……」


「親しくなったという点は否定しません。お願いします。投降してください。ここはもう完全に包囲しています」

「うーん、無理」


 わたしがそう言った瞬間、アイーダに剣の腹で殴られたナミーユが倒れた。

 まさに一瞬のできごとだった。


「はっきりいってメイルダースをナメすぎなんだよね……」

「そういうことです」


 パリン!

 パリン!


 結界からの警戒音が連続で響く。

 窓や隣り合う部屋からも刺客が潜入してくる。


「アイーダ、なんで殺さなかったの?」

「どうやら姫さまが情けをかけたお相手のようでしたので……」


「ふうん。でも、残りの男は知らない連中だから」

「かしこまりました」


 そう答えたアイーダの姿が風のように消える。

 そのアイーダとは反対方向へとわたしは踏み出す。


「きまっ」

「ぐれっ……」

「おっ」

「れん……」


「じろっ……」

「どっ……」


 わたしが4人の刺客を殴り倒した時、アイーダは二人の刺客を斬り捨てていた。

 わたしが殴ったヤツは死んでないけど、アイーダの方は残念ながら殺されてる。まあ、別に残念ってことでもないか。


「……あぁ、スイートルームが血だらけに……」

「それはわたくしたちの責任ではございませんので。それよりも……このまま首都を出ますか?」

「そうする。屋根でいこうか」


 ちらりとアイーダはわたしが殴った4人に目を向ける。


「あちらは生かしたままでよろしいのですか?」

「殺すだけの価値もないから」

「姫さまがそうおっしゃるのなら……」


 どちらの手先かは判断が難しいところだけど……これ以上、戦力のバランスを崩すのはマズい気がする。


 そうしてわたしたちはベランダから屋根へと飛び上がった。


 さてと……どっちに逃げようか……。






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気まぐれオレンジロード(笑)
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