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ヒロインも能力者

「私の能力は、クエストが出現するっていう能力」


小鳥遊は、難しい顔をしている。おそらく、自分の能力を言葉に表すのが難しいのだろう。

結論から言うと、春希から聞いた「小鳥遊雪は能力者」という情報は、本当だった。

朝、小鳥遊から挨拶された時に、「放課後、1人で体育館裏に来て」と言うと、素直に来てくれた。

今さっき、能力者なのかを聞くと、春希が言っていたとうり、能力者だった事が分かった。

で、今は能力の説明をしてもらってる所。

小鳥遊は、数秒考える時間を取ると、話し出した。


「ゲームのクエストみたいな感じで、いつまでに◯◯を倒せとか、◯◯を手に入れろ、みたいなクエストが出てくるの。で、成功か失敗によって、報酬が貰えるの」


なんか、今までで一番マトモな能力が出て来た。

普通に楽しそうだし、俺もその能力がいい。

でも、報酬っていう単語が気になってくるな。


「報酬って何が貰えるの?」


もしかしたらゴミみたいなのが貰えるだけかもしれない。

だが、俺の予想と反して、小鳥遊の能力はマトモだった。


「クエストの難易度にもよるけど、お金がもらえたり、誰かからの好感度が上がったりするかな」


報酬もマトモだとなると、どこにゴミ要素があるのだろうか。俺も春希もゴミ要素があるのに、小鳥遊だけないなんてずりぃ。妬みもあって、粗を探したくなってくる。


「クエストに失敗したらどうなるの?」


「死ぬ」


俺が質問をすると、小鳥遊は即答で答えた。


「は?」


ありえないような言葉が返って来たので、思わず聞き返す。小鳥遊は困ったように、


「死ぬ」


と、再度繰り返し言う。

俺の聞き間違いではなかったようだ。

...今までで一番ゴミというか、生活に困るようなのうりょくだった。

俺が何も言えないでいると、小鳥遊は笑って訂正を入れた。


「あ、失敗したら、私が死ぬようになってるわけじゃないよ?...誰かしらは死ぬだけで」


「よく笑って言えたな!」


訂正されても、ゴミ能力な事には変わりない。

...一瞬、その能力のせいで人を殺めてしまった事はあるのか、と聞きたくなったが、そんな事を聞くのは野暮だと思い、辞める。

仮に殺めてしまっていても故意ではないだろう。


「安心して。クエストに失敗した事はないから」


俺の思っていた事を察したのか、俺の心の中の問いに、小鳥遊が答えを出してくれた。


「その能力のせいで、嫌な思いをした事があるかもしれない。俺も、散々この能力に苦しめられて来た」


小鳥遊に、俺の能力と、春希の能力の説明は最初にした。


「そういう思いをしない為に、俺たちと協力同盟を組もう」


俺の提案に、小鳥遊は質問で返す。


「その同盟って、具体的に何の効力があるの?」


「確か、何も無かった気がするけど」


昨日の春樹との会話は、最後のインパクトが強過ぎて、あまり覚えていないが、固っ苦しい同盟では無かった気がする。

多分だけど。


「要するに、能力者同士、仲良くしようねっていう宣言って事でしょ?」


「まぁ、そういう事」


こうやって、すぐに相手の思惑を見破れる所、頭良さそうな感じがする。


「オッケー。同盟、結ぼうよ」


ミッションクリア。これ以上は危険なので、帰ろうと考えていると、小鳥遊は言葉の続きを話す。


「ただし、条件がある」


全人類が憧れるセリフ。実際に聞くことなんてあったんだ。


「...条件は?」


こんな同盟で、条件を出してくるとは思わなかったが、俺のできる範囲だったら、条件を飲むしかない。

同盟を組めないと、能力者同士での喧嘩になったりすることもある。とか春希が言ってたし。


「まず、仲良くして行くんだから、名前で呼んで。

空くん」


条件の意図が読めない。

小鳥遊に、得なんて何も無いはずなのに。

少し不安だが、全然俺のできる範囲なので、頷いておく。


「じゃぁ、あと一つだけ。」


小鳥遊は息を大きく吸うと、


「今週の土曜日、私と出掛けて」


と、俺に言い放った。

小鳥遊が、俺と一緒に出かけたい?

ワンチャンの望みにかけて、小鳥遊に言う。


「なんか、能力関係?」


それなら、小鳥遊が謎に俺に近づいて来た理由に、納得がいく。


「いや、単純に空くんとデートしたい」


...俺は、俺の能力のせいで、小鳥遊の事を、万が一にも好きになってはならない事になっている。

だったらデートなんて言語両断。

めちゃくちゃ危険な行為だ。

だが、ここで同盟が組めなくても危険だ。

そんな事をしないと思ってはいるが、小鳥遊には人の死を簡単に決められるような能力を持っている。

俺の感覚で、30秒程悩んだ末に出した答えはこれだった。


「...駅前に、1時集合でいいな?」


「絶対に遅れないでよー?」


世界一、危険なデートの約束を取り付けてしまった。

誰もいない家の玄関を開け、部屋の中に入る。

俺は、俺の能力に巻き込まない為にも、一人暮らしをしていた。

そろそろ寂しくなって来たな。

今日起こった事の報告のために、スマホを開き、メッセージアプリで、春希にメッセージを送った。


「小鳥遊と同盟締結成功。代わりに土曜日デートする事になった。」


すぐに既読が付き、返信が返って来た。


「俺だけ仲間はずれとか、同盟破棄ていーい?」

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