2人目の能力者
「は?」
声を出した瞬間、まずいと思ったが束の間、クラス全員の視線が俺の方に集まる。
小鳥遊雪は、俺より前の方の席だったらしく、苦笑いしてるのが見えた。
「お前ら話聞けー」
先生がクラス全員に呼びかけると、俺への視線は徐々に減って行った。
「・・・」
視線から解放され、再び隣を向くと、隣の美少年は、俺に見えるように机に「放課後、体育館裏」と書いてあった。体育館裏に来いと言うことか。静かに頷いておく。
とりあえず、先生の話が終わるまで、俺は生きた心地がしなかった。
・・・・・
「お前も能力をもってんの!?」
言われた通り、いや、書かれた通りに体育館裏に行くと、いきなりこの美少年、相坂春希に自分も能力持ちだ、と告白された。
「うん。空とは違う能力だけどね」
いきなり呼び捨てにされて、少しイラッと来たが、それどころじゃ無い。びっくりしすぎて、まともな思考も出来ない。
「お前はどんな能力を持ってるんだ?」
つい、興奮気味に聞いてしまう。
春希は一瞬、興奮気味の俺に引いてるような表情を見せたが、すぐに笑顔になった。
「僕の能力は、端的に言うと、自分の近くに能力者が居た時に、直感的に分かる、と言う能力です。」
「あ、だから俺が能力者って分かったんだ」
「はい。使い所は限られていますが、能力者同士でコミュニケーションを取れる状況を作れると思うと、面白いし、強い能力だと思っています」
「ん、近くに能力者が居た時に分かるだけって事は、別に俺の能力が分かったりはしないって事?」
「はい、能力が分かったりはしません」
春希は満面の笑みで自慢げに返事をする。
...笑顔に騙されそうになったけど、雑魚能力やん。
能力者か、能力者じゃないか分かったところでどうするんだよ...デ◯ノートとか持ってない限り使い道ないって。本当に楽しむだけの能力だな。上手く能力者を利用できれる頭があれば別だが、見たところ、春希にはそんな頭は無さそうだ。
俺が微妙な表情をしていると、春希は怒ったような声で俺に尋ねてきた。
「じゃぁ、空の能力はなんなの?」
間髪入れずに
「未来予知できる能力」
と言う。
言葉だけ見れば最強レベルの能力だ。
しかも1個も嘘ついてない。話してないことが多いだけで。
「...何か隠してるよね」
春希が疑うような目で俺を見つめる。
「...よく分かったな」
もしかしたら、本当は頭も良いのかもしれない。
勝手にバカ扱いしたことは、心の中で謝っておいた。
「能力を使っている上で付いた特技みたいなものです。能力者と会話した経験は数えられない程ですから。」
特技を披露する子供のように、春希は笑う。
おそらく春希は確信があって言っているし、誤魔化すのも無駄だ。別に能力を明かしたからって、損になるわけじゃないし、信頼関係を築いておきたいので、ここは素直に能力を明かしておく。
「俺の能力は自分で発動出来ないんだ。いつ能力が発動するのかは完全にランダムだし、未来予知って言うほど鮮明に未来がわかるわけじゃない。この行動をしたら、この未来になる。くらいしか予知できない。」
俺は深くため息をつく。改めて聞いてもひでぇ能力だ。
春希は何か考えるようなそぶりを見せた。
数秒、そのままでいると、急に何か思いついたように目を見開いた。
「突然ですが、協力同盟を結びましょう」
「協力同盟?」
多分、友好にしていこうって話だと思うが、本当に突然だな。
「能力を持ってると、色々不便なところも多いですよね?」
自分もそうだったような言いぶりた。
確かに能力のせいで不便になることは多い。
俺の場合、未来予知に巻き込まない為に親とも離れて一人暮らしをしたり、なるべく人と関わらないようにして来なければならなかった。
「かなり多いな」
「そこで、協力同盟です。でも、特段変えることはありません。お互い仲良くし、困ったことがあったらお互いに助け合おう。みたいなものです。協力しておいた方が、色々お得でしょう?」
断る理由がない。こっちからお願いしたいくらいだ。
というか、こいつ、俺の能力を見定めて、協力同盟を申し出たな?別に、良いけどさ。
「じゃぁ、協力同盟、結ぶか」
「では。はい」
春希は前に手を出した。俺も手を出し、握り合う。
まぁ、同盟締結の握手みたいな物だ。男はこうゆうのに憧れてしまう。
手を離すと、春希は急に真剣な表情になり、俺に尋ねて来た。
「同盟も締結したところですし、急ですけど、相談して良いですか?」
「ああ、勿論だ」
首を縦に振る。
春希は一拍おいて、話し始めた。
「実は、同じクラスにもう一人能力者がいるんです。」
「俺以外にもまだ居るのかよ...」
今まで能力者に会ってこなかった俺が特殊なのだろうか?
もしかしたら、結構身近にも能力者がいたのかもしれない。
「はい。でも、その人をどうするか迷ってて」
「で、誰なの?」
焦らされるのは嫌いなので、率直に結論を求めると、こういうのは焦らすから良いんでしょう?と抗議して来た。それを無視して早くしろ、と目で急かすと、しょうがないなぁ感を出して、口を開いた。
ここまでやって申し訳ないけど、クラスメイトの名前なんて、一人も知らないんだよなぁ。
春希は、実は...と少し溜めてから、話す。
「小鳥遊、雪さんです」
まさか、俺が唯一知っているクラスメイトの名が出てくるとは思わなかった。