1‐5.【奴隷解放で建国】ってどうよ⁉️
ママンは顔もスタイルも抜群だが、その上、声も良い。『天は二物を与えず』なんて言われるけど、逆よね。持っているひとは、とことん持っているのよ。
ママンはそのきれいな声で子守唄を歌ってくれる。
たっぷりお乳を飲んだ昼下がり、ママンの腕の中でうとうとしていると。
バン❢
ドアが勢いよく開いて、背の高い、イケメンが飛び込んできた。短めに切りそろえた、美しい銀髪が乱れて、額には汗で貼り付いている。逞しい肩で大きく息をしている。
「リサ❢ リサ❢ 大丈夫か⁉️」
「フンギャー❢」
そんな大声出されたら、赤ん坊は泣くよ❢
誕生から5日、初めての訪問客である。
今までも、ママンに会いたいという人は、大勢いた。ママンの部屋は【闇の魔塔】の最上階だ。一つ下の階に玄関というか、応接があるのだが、エカチェリーナ大伯母さまが、来客をことごとく、門前払いしていたのだ。
中には、皇帝陛下のお遣いの人もいたようだが……
「リサが体調を崩したのは、誰のせいだと思っているのですか⁉️ 嫌がるリサをこんな所に押し込めた陛下の責任ですからね❢」
と、エカチェリーナ大伯母さまが、ガンガン撃退していたのだ。
だから、私も初めて通された人がいることに、心底、驚いた。
『ダ、だ、誰⁉️』
「レオパルト兄さま❢」と、ママンも驚いた声を上げる。
ということは、私の伯父さま?
勢い込んで入って来たレオパルト伯父さまはというと、口をあんぐり開けて、固まっている。
後ろから入って来たエカチェリーナ大伯母さまが、呆れ顔で、ドアをそっと閉めて、結界の確認をしている。
「その赤ん坊は⁉️」
「カトリーヌというの。私の子よ♥」
「……」
レオパルト伯父さまは、頭を抱えて座り込む。
「ごめん。リサ、お前が一番、大変な時期にそばにいてやれなくて」
「仕方ないわ。お兄さまにとって、人生をかけたお仕事だったんだから」
二人およびエカチェリーナ大伯母さまの話から、この国の情況や、ママンの置かれている立場が、だいぶわかってきた。
簡単にまとめると、ママンは三人兄弟の末っ子。レオパルト伯父さまの上に、もう一人お兄さまがいて、グーテンベルク公国にいる。
ちなみに、グーテンベルク公国は、闇公爵と呼ばれる、ママンのお父さまのグーテンベルク公が治める国だ。
私たちが今、いるのは、グランディア帝国の首都、グランポリスだ。
グランディア帝国は、パンタジア大陸にある、人族と亜人、その混血を中心とした、魔法使いの国だ。グーテンベルク公国は、グランディア帝国を盟主と仰ぐ、グランディア帝国連邦の一員だ。グランディア帝国連邦は、パンタジア大陸全土に広がっている。
グランディア帝国連邦には、帝国の下、グーテンベルク公国を含む七つの公国が、傘下に入っている。
闇魔法の国。グーテンベルク公国。
光魔法の国。聖ルーメン公国。
ドワーフの国。フォディーナ公国。
エルフの国。リョースアルヴ公国。
ダークエルフの国。デックアルヴ公国。
北の獣人の国。フェラピエンス・ノルド公国
南の獣人の国。フェラピエンス・シュド公国。
グランディア帝国は、300年近く前に、【奴隷解放】を掲げて、龍族の血を引く銀髪の闇の皇帝と、天使の血を引く聖女である光の皇后によって、建国された。
グランディア帝国は瞬く間に、大陸の各国を配下に収め、グランディア帝国連邦となった。
この時から、パンタジア大陸からは奴隷制度が廃止された。
パンタジア大陸の西には、パピロニア大陸が広がっている。
北部の山岳地帯には、魔族が棲んでおり、中南部の平原には、人族の国家が乱立している。いわゆる【群雄割拠】の状態だ。
パピロニア大陸の多くの国では、奴隷制度が存続している。パピロニア大陸にも、魔法使いがいるが、ここパンタジア大陸ほどは多くない。強力な魔法を使う者も少ない。高度な魔法を使いこなし、多彩なスキルを持つ獣人、エルフ、ドワーフなどは、奴隷としての人気も高い。このため、グランディア帝国連邦内でも、特に子どもの拉致、誘拐などの事件が後を絶たない。
1年前、パピロニア大陸の二つの大国の間に緊張感が高まり、亜人などの奴隷を買い漁っているという噂があった。ヘラルド伯父さまは、その真偽を確かめるため、潜入調査に行ってきたという。
無事、100人近い亜人たちを救出して、帰国したところだ。
1年前というと、ママンが【闇の魔塔】に囚われることになった事件が勃発した時だ。
【勃発】とは大げさだが、まさに帝国を揺るがす大事件だったのだという。




