表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そして僕らは。【オリジナル楽曲付小説】  作者: さかなぎ諒
第二章 僕は君の傍にいて
PR
39/134

第14話 海と水族館①(迷子の心配)

「海と水族館」編スタートです!


 七月二十八日。土曜日。

 朝八時。



「じいちゃん、僕今日ちょっと出かけてくるね」



 朝ごはんを食べ終えて、食器を洗い終わった涼太郎は、脱衣所で洗濯機を回していた重治郎に言った。



「おう、また穂高くんとか?」


「うん」



 涼太郎はそう言って、洗面台から歯ブラシを手に取って歯を磨き始める。

 重治郎は、洗濯機から洗濯物を取り出しながら、涼太郎の横顔をチラリと見やって思う。



(最近確かに涼太郎の表情が明るくなったな。これも穂高くんのおかげかな)



「今日はどこに行くんだ?」



 重治郎の問いに、口を濯いで、口元をタオルで拭いてから、涼太郎は答えた。



「えっと、水族館だよ。そのあと海に行こうって。ちょっと遠いから、あまり遅くならないようにはするけど、先に夕飯食べてて……」



 そう言っている途中で、重治郎がにやにやと笑っているので、涼太郎は怪訝な顔をする。



「なに、じいちゃん」


「いや、お前たちずいぶん仲良くしとるようで良かったな、と思ってな」


「な、仲良く……は、してもらってるけど」


「海と水族館か。昔、あいつと行ったデートコースを思い出すなあ」


「はぁ⁉︎ で……デート⁉︎」



 涼太郎が顔を赤くしてたじろぐのを尻目に、重治郎は「ハハハ」と笑いながら、洗濯物をリビングへと運んでいく。



「まあ、気をつけて行ってこいよ。小遣いは大丈夫か」



 揶揄われた涼太郎は、少しいじけた様子で頷く。



「この間夕飯代ってくれたやつ、まだ使ってないから、大丈夫」


「そうか」



 重治郎がベランダで洗濯物を干し始めたので、涼太郎も干すのを手伝う。



「あ、そういえば……」



 タオルを物干し竿に干しながら、涼太郎はふと、先日の原田さんの言葉を思い出した。



「この間、原田さんに言われたんだけど、じいちゃん、佐原さんって知ってる?」


「!」



 その名前を聞いた途端、重治郎の手がぴたりと止まる。



「あの、川のところの大きな家の……」


「知らんな」



 涼太郎が言っている途中で、重治郎が被せるように言う。



「あんな奴は、知らん」



 ぶっきらぼうにそう言って、また洗濯物を干し始めた。



(うーん、これは知ってるな)



 しかし、触れられたくない、話したくない、何か理由があるのだろうか。



「その、佐原さんのお孫さんに、水族館のチケットを、貰ったんだ」


「あいつの孫に?」


「同じ学校の先輩で、最近仲良くして貰ってて……」


「何じゃ。お前、佐原の孫とも友達なのか」



 重治郎に春人のことを「友達」と言われて、涼太郎は咄嗟に訂正しかけたが、先日春人から「友達だよね?」と念を押されたことを思い出して、なぜか否定することが出来なかった。



「とっ、友達……だよ」


「何とまあ……」



 重治郎は嘆息して驚いた様子で涼太郎を見る。



 するとそこで、玄関から「ピンポーン」とチャイムが鳴った。


 涼太郎は、晶矢と“駅前に九時”と約束したはずだが、時計を見ると今八時二十分だ。

 もしかして……と思いながら、玄関を開ける。



「おはよ。ごめん朝早くに」



 予想通り、晶矢が立っていた。

 少し申し訳なさそうな顔をしている。



「おはよ、晶矢くん。来ると、思ってた」


「お前に、預かってほしくて、持ってきた」



 背に背負っているギターケースを指して、晶矢が言う。涼太郎は「うん」と頷いて微笑んだ。



「お邪魔します」



 涼太郎に家に招き入れられて、晶矢が廊下を歩いていると、重治郎が奥からひょっこり顔を出した。



「いらっしゃい、穂高くん。今日は早いな」


「おはようございます。朝早くにすみません。出かける前に、ちょっと涼太郎に用事があって」



 晶矢が丁寧に挨拶をすると、重治郎はにっこりと微笑んで言った。



「海と水族館に行くんだってな。涼太郎は、あんまり周りを見とらんから、迷子にならんようにしっかり見といてくれ」


「はい」



 重治郎の言葉に晶矢が素直に頷くと、涼太郎が慌てて言った。



「ちょ、迷子って! 人のこと、子供みたいに言わないで……」


「うーん、でも実際お前周りあんま見てなくね?」


「お前、子供の頃何回も迷子になって、泣いとったろう」


「ななな、なんで二人して、僕を、揶揄って……」



 確かに涼太郎は普段から俯きがちなので、余り周りを見ていないところがあるが、いくらなんでも子供扱いし過ぎだ。

 涼太郎はそう抗議しようしたが、二人とも気遣うような目で、涼太郎を見つめてくる。真剣に迷子になるのを心配されていると分かって、涼太郎は顔が真っ赤になった。



「分かった、分かったから! 気をつけるから、二人ともそんな目で見ないで……!」



 そう言って手で顔を覆って、涼太郎は自分の部屋の扉を開け、逃げ込むように入ってしまった。


 廊下で重治郎が晶矢に言う。



「お茶でも持ってこようか」


「あ、お構いなく。すぐ出るので」



 晶矢がそう遠慮すると、重治郎が涼太郎には聞こえないような静かな声音で言った。



「あの子は人混みが苦手で、人酔いして具合が悪くなったりするから、よく見といてやってくれ」


「! はい」



 重治郎の言葉に、晶矢はこくりと頷く。



「涼太郎と友達になってくれて、ありがとう。本当に感謝しとる。あの子は今までずっと一人じゃったから」


「逆に俺が感謝してます。涼太郎に」



 晶矢がそう言って微笑むと、重治郎も同じように微笑んで言った。



「穂高くん。涼太郎のこと、これからもよろしく頼むな」


「はい」


「まだ何か僕のこと言ってる?」



 晶矢が頷いた直後、涼太郎が二人の様子を訝しがって、部屋から顔を覗かせる。



「「いや、別に」」



 晶矢と重治郎は、二人声をハモらせて、涼太郎ににっこりと微笑んだ。

更新は不定期になりますが、少しずつ更新していきますね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ