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そして僕らは。【オリジナル楽曲付小説】  作者: さかなぎ諒
第一章 そして僕らは。
3/132

第3話 Regret ★

https://youtu.be/azV-eM5UKNM


※このシーンで演奏している想定の楽曲です。聴きながら読むと雰囲気を楽しめます。

 歌声が聴こえる。


 優しくて温かな歌声。




 何だろう。夢でも見ているのだろうか。




 やがてその歌に寄り添うように、美しいギターの音色が流れ始める。




 不思議な空間だった。


 美しい夕焼けの空の下。公園の片隅。


 ここだけ世界から切り取られているような気がする。




 同じ制服を着た二人の男子生徒は、相手が奏でる音に自分の音を合わせたい、合わさりたい、となぜか強く思った。




 抗えない衝動だった。


 自分がどうして歌っているのか、なぜギターを弾いているのか、二人ともよく分からないまま、ただ心と体が勝手に、お互いの音に呼応しようとする。




 そうして響き渡る歌声と、爪弾かれるギターの音が、心地よく自然に調和していく。




 重なり合った声と音が、空からキラキラと降り注いでいるようだった。




 まるで、奇跡の光のように。





 曲の最後の一呼吸、ギターのストロークが鳴り終わる。




 すると辺りはしんと静かになった。





 二人は、呆然としながら初めて顔を見合わせた。




 視線が合うと同時に、心臓が跳ねる。




 そして、二人の目から涙が、ぽろりとこぼれ落ちた。





「「は?」」





 二人の第一声が重なって、一瞬時が止まった。






「う……わああああーーーー」




 顔を真っ赤にした歌の男子生徒が、急に驚嘆の声をあげて後ずさっていく。




「えっ? あっおい! 待て……」




 ギターの男子生徒が呼び止めようとするが、歌の男子生徒は「ごめんなさいーーーー」と叫びながら、何故かキャベツを抱えて慌てて走り去っていってしまった。




 ひとり残されたギターの男子生徒は、頬を伝う涙もそのままに、訳が分からず、ただ立ち尽くすしかなかった。




「何なんだよ、これ……」




 夕陽は今、完全に落ちて、頭上には一番星が輝き始めていた。

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