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第86話 恐ろしく高度な猿マネ


「どうしてダメなのか、説明してもらえますかね?」



 事情がわからないから、詳細を聞くしかない。ロッヒェンをこのまま引き下がらせるのも不憫に思えたからだ。



「そうであったな。部外者である貴公は事情を知らぬのであったな。まず、本人も申していたとおり、奴の父はルス・デルソルに敗れた。ただそれだけであれば問題はない。」


「ただ負けただけではないと?」


「うむ。問題は奴等の能力にある。奴等は相手の技をコピーする能力を持つ。正に猿真似だ。これが中々にやっかいな能力でな。通常ならば付け焼き刃程度のレベルに過ぎないが、マネの対象を殺害してしまった場合は話が異なってくる。その場合には完全に自分の物としてしまえるのだ。」



 猿の魔族だけに猿マネが得意だとう! しかも技を盗んで、相手殺して自分のものにするとか……。本物に成り代わるという意味では人間側の被害が増えるほど、ソイツらが強くなるなんてこともありえるんじゃないか?



「これだけでは終わらない。我が物とした技は奴等眷属の間で共有出来るのだ! 奴等全員がロッヒェン家の伝統技“赫灼の雨”を使えるものと思っておいた方が良い。もちろんそれだけではないぞ。今までの歴戦の戦士達の技の数々を駆使してくるのだ。」



 ゾッとする話だ。俺の嫌な予感が当たってしまった。魔族が人間の技を使ってくるのはかなりの脅威だ。ヤツらの方が身体能力や魔力がはるかに優れている。とすると、もとの技より更に強力になっているものが多いかもしれない。



「それ故、奴等は成長する魔族と言ってもよい。今は序列七位となっているが、大昔は序列十一位だったそうだ。歴史上何度も討伐もされてはいるが、数多くの戦いをくぐり抜け、その度に力を増していっているのだ。下手に上位の魔王より警戒すべきは奴等なのかもしれぬ。」



 成長して、年を経るごとに強くなる……。ヤベえな。ただでさえ強い魔王がそんな能力を持っているのか。いや、待てよ? ということは今回、俺がソイツらを倒しきってしまえばいいんじゃないか? 俺がコアを消滅させてしまえば復活できないんだからな。



「総長、俺が終わらせてみせますよ。」


「ふむ。貴公ならば魔王めを消滅させられると、イグレスから聞いておる。我々の悲願を達成させる好機がやってきたのだ!」


「……だったら、ロッヒェン君も参加させてやってほしいな。俺が色々カバーするから……。」


「ならぬ。それだけはならぬ。貴公の推薦であっても、決定を変えることは出来ぬのだ。」


「……そうすか。」



 ですよね~。大きくため息をつかざるを得ない。意地でもヤツを参戦させたくないらしい。これ以上はどうしようもなさそう。ヤツの親父さんの遺言なんだから仕方ないのかもしれない。



「それでは行こうか、ロア。」


「うん、行こう。こうしている間にも被害が増えてるかもしれないしな。」



 エルとゲイリーにも合図を送り、エドの後を付いていく。そこへミヤコが走り寄ってきた。



「ウチはワンちゃんの付き添いでもしとくね。」


「ああ、アイツのことは頼んだ。さすがに二人には危険すぎるだろうからな。」


「ハイハイ! どうせ足手まといですよーだ! でもさ、ウチはココでやろうと思ってることがあるから。ちょっと良いアイデアがあってさ……。」



 と意味深なことを言って、俺だけにわかるようにロッヒェンをチラ見した。コイツ、もしや……?



「そういうことだから、死んだりするなよ、へっぽこゆーしゃ!」


「死なねーよ! 俺が死んだらエルやゲイリーも死ぬって事になるんだからな。」


「アンタだけドジって死ぬかもしれないじゃん。」


「お前なー!」


「お前って言うなぁ!」



 死地に赴く前とは到底思えないくらいの、冗談の応酬だった。いや、戦いの前だからこそ、これぐらいの余裕はあった方がいいかもしれない。ミヤコもそれを狙ってやってくれているような気がする。最後に、ロッヒェンがうなだれる姿を見て訓練場を後にした。



(あとはまかせたぞ、ミヤコ!)



 アイツのアイデアとやらが俺の予想した通りなのかはわからないが、期待することにした。俺がこれから戦地に赴く以上、ロッヒェンの力になってやれるのはアイツしかいないのだから。

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