第85話 ルス・デルソル現る!?
「何事だ?」
「ルス・デルソルがイースト地区に現れたという情報が入ってきました!」
「何だと!?」
伝令の人から何者かが現れたという情報がもたらされたが、何のことやらサッパリわからない。だが、一瞬にして空気が張り詰めたので、余程の緊急事態であるらしいのはわかる。なかでもエドがかなり動揺している。
「奴等め! また性懲りもなく!」
「エド、何があったんだ?」
「先程、君に序列七位、猿の魔王の配下と戦った話をしたが、それと関係がある。ルス・デルソルは序列七位の親衛隊だ。」
「何ぃ!?」
じょ、序列七位の親衛隊ぃぃ!? 魔王軍で、しかも強そうなヤツらが現れただとぉ! また魔王とやり合わないといけないとは。一難去って、また一難ってところか。とほほ。
「私がこの前討伐したのはテ・ネグロスというアークデーモンだった。そいつはルス・デルソルの一員だ。今回はおそらく、その報復として現れた可能性がある。」
「報告によりますと、残り四人が一斉に現れたとのことです!」
「これはまずいことになった。奴等、本気で我々を潰す気でいるようだな!」
総長でさえ苦虫を噛み潰したような表情をしている。拳に力を込め、ただでさえ太い腕が太くなってまでいる。今にでも、魔王軍を叩きに行きたいという意志が伝わってくる。
「親衛隊ってのはそんなに強いのか?」
「奴等が揃って現れる事態は滅多にない。揃った時は街の一つや二つ、いや、それどころか国一つ滅びると昔から言われている。ただ事ではない。配下とはいえ全員揃えば、魔王に匹敵するくらいの強さだ。」
「そんなヤバいヤツらが来たのか!」
「そのうちの一角を潰したとはいえ、苦しい戦いになるだろう。」
そういえば、今まで出くわした魔王達は大抵一人で姿を現している。集団を組織する魔王とは初めての戦いになるので、色んな物が未知数だ。
「イグレスよ、すまぬが現場に急行してくれ。奴等との戦闘経験が豊富な貴様が指揮をとれば、我が軍も存分に力を発揮できるだろう。」
「奴等の狙いの一つは私の首であることは間違いないないでしょう。喜んで引き受けましょう。」
「俺も行くぞ!」
「勇者である君が手助けしてくれるのならば、心強い。ありがとう!」
俺も当然の流れで名乗り出た。ちょいと気が引けるのも確かだが、強敵が揃っているのだから、いくらエドでも危険なのは間違いないからだ。死なせるワケにはいかない。
「私も行きます!」
「俺っちも活躍できると思うッス! 助太刀は任せて欲しいッス!」
エルとゲイリーが声を上げた。エルはかなりの戦力になるだろう。魔族は闇の力を主力としているだろうから、それが効きにくいエルがいれば、ヤツらも困るはずだ。問題はゲイリーだ。コイツは素行に問題はあるが、馬鹿力は魔族にも通用しそうだ。この前見た、魔法とかを無効化する謎の能力も持っているので役に立つかもしれない。戦いを通じて教育することを考えておこう。
「頼もしいな。是非、戦列に加わってもらおう。」
「じゃあ、二人の参加はOKってことだな。」
「待って下さい! 僕も参加させて下さい!」
「ロッヒェン!」
ロッヒェンも起き上がり参加を名乗り出る。この場にいたのなら当然の流れだろう。だが、何やら様子がおかしい。総長とエドが了承の意思表示をしていない。何か問題があるのか?
「貴様には他の任務を与えたはずだが、ロッヒェン?」
「何故です、総長? 何故、僕を猿の魔王から遠ざけるのです! 父の仇がルス・デルソルと知っていて、僕に関わらせてくれないんですか!」
父の仇だと? Jrと名乗っているので、やはり、彼の父もクルセイダーズの一員だったということなのだろう。
「貴様をルス・デルソルと戦わせる訳にはいかんのだ。」
「何故!」
「では、聞くが、今の貴様は父親に勝てると言えるのか?」
「勝ってみせます!」
「それはあくまで貴様の希望であろう。実際に勝てるのかと聞いている。勝てぬのだろう? 私の見積もりでは今の貴様はまだ父親の域には到達していない。無理をさせて死なせるわけにはいかぬ。これは貴様の父から託された約束なのだ!」
仇討ちをさせてあげないのはどういう理由があるのだろか? 父親を超えていない? そこには何があるんだろうか? 事情を知らないだけに不可解な話だった。




