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第82話 団体とか組織、派閥とか?


「ハハ、例え勇者でも全ての物が怖くなくなるワケではない、と思うんです?」



 俺はそう言いつつ、肩を叩いた男に振り返った。なんか……巨岩のようにそびえ立つ初老のオッサンがいた。見るからに強者としか思えないほど圧倒的な存在感を持っていた。もうなんか「どうも一人クルセイダーズです!」とか言い出しそうなくらいの迫力があった。要するに恐い! 以上!



「あのー、もしかして総長さんですか?」



 状況的にそうとしか思えない。周囲の人間もかしこまっている。特にさっきまで盛り上がっていた訓練生達もすっかりおとなしくなっている。そう考えると、このオッサンは総長なのだろう。



「そうだ。私が総長、ユーリー・ブライアンだ。ようやく会えたな、勇者よ! 大武会の後に来いと言っておったのだがな? 私を避けておったのではないか、ん?」


「いや、まあ、それは、そのぉ……。」


「遅くなってしまったのは、私の私的な事情があったためです。ここに訪問する前に私の故郷へ立ち寄ったのです。」



 俺がしどろもどろになっているのを見かねて、エルがフォローを入れてくれた。ゴメンよ、俺が頼りないばっかりに……。



「む? エルフリーデ殿? 違うか……ご息女のエレオノーラ殿であるな?」



 エルをお母さんと間違えた? ああ、確かにほとんどソックリだったもんな。この前、幻影とはいえ、ご本人と対面した。俺自身もエルと間違えたくらいだ。誰でもそうなってしまうだろう。



「はい。娘のエレオノーラです。間違われたということは、母と御面識があるのですか?」


「うむ。エルフリーデ殿には色々とクルセイダーズのサポートに尽力して頂いたのでな。頭が上がらぬよ。」



 多分、牛の魔王討伐とかの話だろう。俺もこの前聞いた話なのだが、クルセイダーズには基本、魔術師は所属していないらしい。ファルはかなりイレギュラーな存在だそうだ。昔からクルセイダーズと魔術師協会はあまり中が良くないらしい。



「彼女の功績はかなり大きい。今のノウザン・ウェルがあるのは彼女の力無しではあり得なかったと言っても良い。」


「母の功績を讃えて頂いて、ありがとうございます。」



 エルのお母さんがクルセイダーズとの仕事を引き受けたのは、魔術師協会を脱退した事が影響しているそうだ。ある意味、嫌がらせのような形であの任務に当てつけられた事情があるという。恐いね、権力ってのは。



「それにも関わらず、十字の吻首鎌が迷惑をかけてしまったようだな。深くお詫びしたい。」


「いえ、彼の組織は閣下の指揮下にはないと存じています。それにあれは私の伯母が引き起こした事です。お気になさらないで下さい。」


「済まぬ。法王庁の直轄の組織故、彼奴らにあまり口出し出来ないのだ。私も歯がゆい思いをしている。今回も察知が遅れた故、暴挙を許してしまった。」



 クルセイダーズも一枚岩の組織ではないらしい。治安部と黒の兵団等、軍隊を中心とした兵団派、治療院や処刑隊など神官を中心とした法王派の二大派閥にわかれているらしい。俺はここに来る前に処刑隊について文句を付けようとしていたが、この話を聞いて閉口した。ほとんど違う団体なんだから仕方ない。



「ところで、この件において魔王が姿を現したと聞いたが、よく退けられたものだな?」


「ハハ、倒せなかったんですがね。逃げられてしまったもんで……。」


「それだけでも十分だ。魔王を敗走させた者などほとんどおらぬ。近年では私ぐらいしかいなかったのだからな?」



 魔王が尻尾を巻いて逃げる? 俺らの場合はとてもそんなふうには感じられなかった。だが、このオッサンが嘘をついていないのは良くわかる。このオッサンは間違いなく……ヴァルや宗家に匹敵する力はあると思う。あの二人と同じぐらい圧倒的なプレッシャーを感じたのは言うまでもない。

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