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第77話 怪物? それとも天才?


「あ~あ、ホントにもう、ワンちゃんたら、情けないんだから!」



 セルフでクリティカルヒットが発生する事案が発生したため、タニシは医務室に担架で運ばれていった。その間、訓練生達は笑いをこらえるのに必死な様子だった。なんか俺らも笑われてる気分だ。恥ずかしい……。



「まあ、場が和んだということで、彼は一役買ってくれたのだろう。君の仲間の資格は強さに依らないという事を証明してくれたのだ。訓練生達には良い教訓となろう。」



 エドは真面目にタニシをフォローしてくれている。ヤツのアホ行動をそんな無理して好意的に解釈してくれなくてもいいのに……。



「ンッフッフ! とうとう、満を持して俺っちの出番がやってきたようッスね! タニシパイセンの仇討ちッス!」



 しまった! もっとやべえヤツがいるということを忘れていた! 我がパーティー最大の問題児が、怪物がしゃしゃり出てきた!



「そういえば、彼も君の仲間なのか?」


「うん、仲間というか、俺の押しかけのファンというか、弟子っていうか……。」


「何? 彼は君の弟子なのか? 大したものだ! なかなか良い体つきをしているな。実戦経験も豊富とお見受けするが? 彼のお手前を拝見させてもらおう。」



 見た目は強そうな戦闘ゴリラなんですがね……。でも……アホなんですよ。空気読めないし。ヤツも俺やタニシに続いて、技を披露しようとしている。



「ちょえあーーっ!! 戦技一0九系ぇぇい!!」



 戦技? 一0九? チョイ待て! 一個増え取るじゃないか! 一0八だ! 勝手に増やすな! それにしてもヤツには技の類いはまだ教えてないんだけどな? 基礎的な精神統一とか硬気功を教えただけなのだが……?



「爆! 竹撃!!」


(ボガッシャ!!! ドガァァァン!!!!)



 うわぁぁぁぁぁい!? 人形どころか根元の地面まで豪快に爆砕した! 周囲もその威力に驚きを隠せない。俺だって驚いた。これは破竹撃ではなく、“爆竹撃”か。確かに丸ごと爆砕するような一撃だ。でもこれは……、



「どうっすか? 師匠の技、完コピっす。見ただけで出来たッス! 俺っち、天才っしょ?」



 見ただけでコピーできたのか? 確かに教えた覚えはない。俺は習得するのに何ヶ月もかかった、あの技を! とはいえ、威力がデカすぎる。本来の技の本質を逸脱している。



「確かに天才かもしれないが……やり過ぎだ。この技はな……その名の通り、竹を割るように綺麗にスパッとやる技なんだ。今度正しいやり方を教えてやるから……、」


「お堅いッスよ、師匠! 敵なんて倒してなんぼのもんッスよ! 強けりゃ強いほどいいモンっす!」



 ゲイリーはドヤ顔で主張する。完全に自分が正しいと思っている。強さ本意ではダメだ。それを何とかしてコイツに教えてやらないと……、



「フフフ、少し脳みそまで筋肉な考えには賛同できないが、敵に対する考え方に関しては僕も賛成だな。」



 突然、誰かが会話に乱入してきた。さっきまでは聞かなかった声だ。でも……どこかで聞いた覚えがある。



「ロッヒェン。」



 誰? 名前を聞いただけではわからない。見た目はかなり若い。ここにいる訓練生達やミヤコと同じくらい、少年と言ってもおかしくない外見をしている。そして、美形だ。適度な長さに切りそろえられた赤毛が目を引く。



「待ちくたびれたので、自分から会いに来てしまいましたよ、勇者殿?」



 彼はエドのように黒い制服を着ている。黒の兵団の人間のようだ。どこか気品のある佇まいを漂わせている。貴族のお坊ちゃんかもしれない。雰囲気的に魔術師のラヴァンと同じ系統の人間だ。そして、何度も戦いをくぐり抜けてきたかのような気配も持ち合わせている。その若さとは不似合いなくらいに。間違いなく、ただ者ではない。何者なんだ?

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