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第71話 やって来ました、勇者のターン!!

 

 力士は二種類の料理を出していた。串に三個刺して焼いた物と具だくさんなスープのような物だ。ライセンス試験のときのような鍋料理に酷似している。そんなのありか、と思ったが、よく見ると同じハンバーグを使っているようだ。だがどちらも小さめなのでハンバーグというより肉団子に近い。



「ムウっ!? こ、これはっ!?」


「う、う、う……、」


「おおっ!?」


「なんやこれ? 一つ一つがエラいちっちゃいやんけ?」


「ハンバーグを二種類の方法で調理したでゴワス。極東で修行していた時に憶えたツクネという料理をアレンジしてみたでゴワス。」



 力士の料理を一口食べた審査員の面々は驚きのリアクションを取っていた。約一名文句を言っているが、口だけだ。明らかに表情が嬉しそうな感じになっている。態度は嘘つかない。



「素晴らしい! やるではないか! 貴様には8点をやろう!」



 この大会で初めて、至高帝が素直に褒める言葉を聞いた気がする。



「うーーーーーーまーーーーーーーーーーいーーーーーーーーーぞーーーーーーーーーーっー!!!!!!!!!!!!!!! 9点!」



 うるさい! いつにも増してうるさい。いい加減にしろ!



「うまいね。これは“サケ”が進むね! 9点!」



 結局、酒。今度は力士の作った物に合わせて極東の国の酒を出してきている。前に侍が持っていたヤツに似てる。ビンのラベルには漢字で“両面宿儺”と書かれている。どういう意味?でも、なんかほのかに寒気がするのは気のせいだろうか?



「うまいやんけぇ!! くやしいわぁ! “アホまぶし!”使うた方がウマイはずやのに、これには勝たれへんわ! しゃーないけど、10点付けたるわ!」


「おおーっと!! ここにきて圧倒的高得点を叩き出しました! 合計36点です!」



 ぬう! ヤツめ、トップに躍り出やがった!これはわからなくなってきた! 俺のハンバーグはイケるとは思うが、力士に勝てるかどうかは不透明だ。だが、作った後だからこれ以上は何も出来ない。あとは結果を待つだけだ。



「さて次はビッグなゲスト出場者の登場です! なんと勇者様です! あの大武会を制した勇者様です! 今大会でも優勝して見事V2を獲得することになるのでしょうか!」



 よしきた! 俺のターンが回ってきた! 俺のハンバーグをとくと喰らえ、審査員達!



「さあ、いっちょ、おあがりよっ!!」



 料理の皿を審査員席にそれぞれ配る。見るがいい、驚愕するがいい! 俺のびっくりハンバーグを食べてくれ!



「ふむ、勇者と聞いて王道の料理が出てくると思っていたが、変わり種で来るとはな。」


「まさか、食材そのものを器とするとは!」


「ぱっと見、ハンバーグじゃないよね? でも、俺、こういうユニークさは好き。」


「はっ、なんやねん、タマネギ丸ごとやないかい。肉料理とちゃうがな!」



 そうだ、見た目はな! 俺が考えた最強のハンバーグの正体はこれだ!



「その上の部分を開けてみてくれ!」



 タマネギの上の部分を切り蓋代わりにしてある。茶色い皮はそのままだが、ちゃんと火を通してあるので、剥けばそのまま食べることが出来る。



「何っ! 肉詰め方式だと!?」


「タマネギの中身をくり抜いて、ハンバーグを詰めるとは、素晴らしいアイデアだ!」


「面白いね! タマネギの器だ!」


「はんっ、こんなんでちゃんと火ぃ通るんかいな? けったいなモン作りおるわ。」



 フフフ、どうだ? 度肝を抜かれただろう?俺の特製“タマネギ・ハンバーグ”だ! ただタマネギ野郎がタマネギーグなんてシロモノを出しやがったせいで、少しモヤモヤするのは言うまでもない。さて、採点はどうなる?



「フム、タマネギのうまみが良く引き出されている。奇をてらってはいるが、見た目だけに頼らず、味も極上で申し分ない。9点をやろう。」



 な、何ぃ! 至高帝が珍しく素直に褒めている! 快挙だ! やったぜ!



「これぞ、タマネギが持つ潜在的なうまさを見事に昇華している! うーーーーーーーーーーまーーーーーーーーーーーーーいーーーーーーーーーーーーーぞーーーーーーー!!!!!

9点!!」



 はいはい、相変わらずうるさいですねえ。



「ウマイね! ワインとよく合うよ! さっきの子と味はどっこいどっこいだね。いい勝負。新しい戦前な予感? 9点! ところで話は変わるけど、髪切った?」



 切ってねえよ! また聞くのか! 前回も無意味に聞いたよな。そんなに俺の髪型が気になるんか? ていうか、“新しい戦前”というキーワードが気になる。それは何?



「せやから、“アホたれ♪”を使うた方が絶対にうまなんねん! アホタレ! ワイ的にはさっきのヤツの方が好きやから、9点。」



 くっ!? ゲス王からマイナスをもらっちまった! しかも好みがどうとか、理不尽すぎる! しかも、また“アホ”シリーズ押しか!いい加減にしろ!



「勇者様の得点が確定しました! なんと先程のヴォルフさんと同率の36点です! こうなると多数決で決められることになりますが……、あと一人、出場者が残っていますので、そちらの採点が終わってからの判断となります!」



 あと一人残っているとはいえ、そこまで採点に差が出るとは思えない。もしかしたら、多数決での判定にもつれ込むかもしれない。



「フフフ。」



 ハンバーグ仮面は不適に笑う。この後、俺ら二人の採点に勝つのは難しいはずだし、トリなのでプレッシャーも半端ないはず。何をそんなに余裕ぶってるんだ! その自信の根拠は何なんだ?

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