第69話 逆転の発想ッスよ!
その後、審査は次々と続けられ、とうとうアイツの出番が回ってきた! 我がパーティの問題児、不肖の弟子のアイツである。
「え~、次は29番、ハンバーグ先生、です?」
ほら見ろ! 司会の人も戸惑ってんじゃねえか。何が“先生”だ! なんかおかしいんだよ。ハンバーグを名乗っているクセにタマネギマスクを被っているから、さらに混乱する。
「ハンバァーーーーーーグゥッ!!!!!」
そして無駄にうるさい。ウザい。会場の方々もざわざわしている。ドン引きしている。ヤツは気にもせずに審査員のところへ向かっていく。料理をノリノリで審査員に配る。しかも、丁寧さのかけらも感じられない、雑なやり方だ。なんかこれだけで不合格になりそうな雰囲気だ。
「なんじゃありゃ!?」
ヤツのハンバーグが何かおかしい。色が薄い。明らかに肉の色じゃない。なんかこう、野菜とかを炒めたような色……ていうか、タマネギなんじゃないか? アレ。
「なんだこれは?」
「これはまた、風変わりな?」
「ハンバーグっちゃあ、ハンバーグ?」
「なんやねん、これは? なんかヘンなモン……?」
審査員も全員戸惑っている。そんな中、アイツはゲス王にそっと近寄り、何かを手渡し、さっとその場を離れ口笛を吹き始めた。怪しい。何かしやがったな。
「一つ聞く。貴様、これはほとんど肉を使ってないな? ほぼタマネギなのではないか? んん?」
「タマネギっちゃあ、タマネギ?」
至高帝と仙人が物言いを付けた。大皇は目を閉じ腕組みをして黙り込んでいる。それに対し、タマネギ仮面がヅカヅカと審査員席に近付く。おお? 文句でも言うつもりか? ヘタすりゃ一発退場になるぞ。
「別にハンバーグに肉使わないといけないっていうルールでもあるんスか? もちろん使ってませんとも! 肉は1%、タマネギは99%使用ッス! 逆転の発想ッスよ! 斬新っしょ!名付けてタマネギーグ!」
あああ! やりやがったぁ! また空気読めないことしたぁ! 何がタマネギーグだ! コンテストの主旨ガン無視じゃねえか。肉料理じゃないハンバーグとは一体……。しかし、ほぼタマネギのみでどうやってあの形に固めたのか気になる。ヘンな所で謎テクニック使ってんじゃないよ。うまさにつながるように使えよ……。
「せや! ええこというわ、アンタ! おもろいし、こんなうまいもん食うたことないわぁ! 40点やぁ!! ワテが満点出したるわぁ!」
なんかゲス王があのアホに賛同している! しかもうまいとか言ってるし! 気でも狂ったか? ……待てよ? さっき渡していた物はもしや、賄賂か! 前科もあるからな。タニシを買収してたし。謎の調理テクも気になるが、ヤツの財源はどこから来ているんだろう? ますます怪しい。
「まあ何はともあれ、規定違反ですな、司会殿?」
大皇は司会にルール違反を進言している。そんなルールがあったとは。まあ、あれはハンバーグじゃないし、肉料理ですらない。残当か。
「大皇のおっしゃるとおり、規定違反でございます。ハンバーグ先生さんは失格となります!」
「え、何? 特別賞? 照れるッスよ! 何、何? なんかVIPルームにでも連れて行ってくれるんスか?」
相変わらず、空気が読めてない。空気どころか、耳も悪いだろ、アレは。素直に退場しなかったので、ヤツは運営の人、数人の手によって強制的に摘まみ出されることになった。残当。




