第68話 行け行けタニシ! ドンと行け!!
「お次は25番の方、タニシ・オガワさん、お願いします!」
審査員が出揃い、ハンバーグの審査が始まった。審査の順番はくじ引き抽選でランダムに決められた。俺は後の方、タニシはわりかし早い方の順番になった。
「アニキ、行ってくるでヤンス!」
「ウム! 健闘を祈る!」
俺たちは互いに敬礼を交わした。勇者パーティーの実力を見せつけてやれ! ちなみに審査の終わっているヤツらは轟沈してしまっている者が多い。四天王どもは相変わらずの辛口批評だ。中には食べる前に処されたヤツもいる。さあ、タニシはどうなる?
「なんとタニシさん、コンテストでは初のコボルトの出場者となります! さあ、どんなハンバーグが飛び出すんでしょうか?」
何ィ!? コボルトでは初だったのか。めちゃくちゃおいしい役どころじゃねえか。行け行けタニシ! ドンと行け!!
「審査員様、お召し上がり下さいでヤンス!」
タニシはハンバーグを審査員達に取り分け、配膳した。ん? ハンバーグ自体が何かに包まれている? あれは……キャベツか! キャベツの葉でハンバーグを包んだというのか。キャベツを食材に選んでいたのは見ていたので、てっきり付け合わせで使うのかと思っていた。ヤツめ、変わり種で来やがった。キャベツ好きなアイツらしさが出ている。
「これは面白い。変わり種だな。」
「ほう、ロールキャベツ方式か。」
「キャベツっちゃあ、キャベツだね。」
「見た目がハンバーグちゃうやんけ。」
ロールキャベツ? キャベツ巻きみたいな呼び方? そういう料理があるんだろうか? 後で例の辞典で調べてみよう。試食が始まり、審査員達はそれぞれ個別のリアクションをしている。首を捻ったり、ウーンと言って見せたり、どこからともなく酒を出して飲んだりしている。コラ、仙人、酒飲むな!
「では採点をどうぞ!」
司会から促される。このコンテストでは審査員一人につき、最大10点まで付けられる。その合計点で競い合う形になる。最大40点だが、ここまでの時点で20点以上が出ていない。非常に厳しい。だから何人も轟沈しているのだ!
「フン、この程度、2点。」
「ふむう、5点かのう。精進せいよ。」
「酒に合わなくもない。4点。」
既存の四天王は相変わらず厳しい採点だ。タニシでさえ、この点なのかよ! そこまで悪そうに見えないんだが。残るは味のゲス王の採点だ。どうなる?
「ぐえへへ、おまはん、運がなかったな! これや! これ見てみい!」
ゲス王は指で何かをつかんで、何かを見せつけた。一瞬、何も持ってないように見えるが……毛だ! その指は茶色く短い毛をつまんでいる!
「毛ェ、入っとった! ありえへんで! こんなモン、不合格や! マイナス10点! 犬の餌や! 作ったのが犬だけに!」
「しょ、しょぎゃわわわーーーーーーん!!!!!!!」
毛が入ってただとう! 確かにタニシが作った料理にはしょっちゅう毛が入っているのは確かだ。俺は慣れてたから特に気にしてなかったが、毛が入ってたらアウトなんか!
「おおーーーっと!? サンディイ氏から物言いが入りました。氏はマイナスの採点を付けておられますが、今大会の規定により異物混入の場合は無条件で失格となります! 残念!」
「おーまいごっど!!」
不合格を突き付けられ、満身創痍となったタニシはフラフラと俺の元へと歩み寄ってきた。
「あ、アニキ、あっしはもうダメでヤンス! ぶふう!」
「た、タニシーっ!?」
失格の前に、四天王の採点も良くなかったのでかなりショックを受けている! 今にも死にそうなくらいに体がぷるぷるしている!
「あ、あとは……あとは、頼むでヤンス。仇を討ってほしいでヤンス。死後はゴッツン・ゴーのビンを集めて墓標にしてほしいでヤンス! きょかい……キュウ!」
「タニシーーっ!?」
タニシはがっくりとして、そのまま失神した。チクショウ、仇は俺が必ず取ってやるからな! あの世から見ていてくれよ!
(※タニシは当然、死んでません。生きています。)




