第67話 奇人変人、大魔境!?
「しゅーーーりょう!! クッキング終了です! 調理中でもストップして下さい!」
ハンバーグ仮面におかしな調理を見せつけられ動揺したものの、オレ自身の調理には影響はなかったので無問題! 前の時は米を炊くところから始めたので時間カツカツだったが、その反省を生かし無理なく終われるように計画していたのだ。例の食の大辞典にも調理時間の目安が書かれていたのにも助けられた。ただのお荷物が初めて役に立った。
「さて、参加者および会場の皆様も気になっている方も多いと思いますが、審査員の先生方に登場してもらいましょう! どうぞ!」
審査員か……。前みたいに味の四天王とか出てきたらどうしよう。いやいや、流石にリーダーのサヨちゃんが現在多忙だろうから出てこないだろう。まあ、大体あの手の食通なんてどこにでもいるだろうし。
「皆さんご存じ、味の四天王の登場です!」
「ブッ!?」
結局、アイツらかよ! 司会のコールに合わせて、大物オーラを醸し出している三人のオッサンが出てきた。……ん? 三人? ちっこいロリババアの姿は見当たらない。やっぱいないか。良かった。ホッとした。また出てこられたら困る。トラウマが蘇ってしまうからな。
「味の至高帝、味の大皇、味の仙人、揃ってのご登場でございます! なんと残念な事に味の女帝は今回不参加ということになっております。」
会場全体からため息がもれるのが聞こえる。そんなにガッカリする事なんだろうか? 出てきた時も声援が凄かったので、割とヤツらの知名度は高いらしいのはわかる。紅一点だし、サヨちゃん人気あったのだろうか? でも正体を知ったらみんなビビるだろうな。ちびる人もいるかもしれない。決して言えない秘密だけどな。
「不参加ではありますが、今大会に向けてメッセージが届いております。これから読み上げたいと思います!」
おおー、と会場から声援が起きる。出ない代わりにいちいちメッセージを送りつけてくるとは。予想外の展開。
「食を愛する者達よ、我が名は味の女帝サヨ・ギーネである! 今回は諸事情により参加は辞退させてもらう事となった。中でも肉料理は我が好物故、毎回楽しみにして参加しておったのだが、残念である。しばらくの間は参加できぬが、当然復帰はするので期待しておいて欲しい! ハンバーグに栄光あれ!」
何が栄光あれ、だ! 大げさに言いやがって! ただの食いしん坊以外の何者でもないクセに!
「PS……勇者ロアよ。当然そなたも出場しておるのじゃろう? リベンジに燃えておるのが妾にはわかるぞ。せいぜい頑張って、前回のような無様な醜態を晒さぬように気を付けるのじゃな! わっはっは!」
ちょっと待てぇ!? 俺のこと名指しのメッセージだとぉ! なんで参加してること知ってんだよぉ! ヤベーよ、おかげでみんな、こっちに注目してんじゃないかぁ! 恥ずかしー!
「ほう、味の女帝ともお知り合いとは。中々、顔が広いのだな。」
うるさい、ハンバーグ仮面は黙ってろ! 余計に注目が集まってしまうだろぉ! ちくしょー! サヨちゃんのせいだ! みんな、サヨちゃんのせいだぁ!
「ええー、メッセージは以上となりますが、今回、女帝は不参加により、代役の特別審査員を指名しております。それではご登場をお願いします!」
代役の新顔が登場した。オーク族だ。ゲンコツのおっちゃんと同じ猪人。とはいえいかにも悪人っぽい風貌なので印象が正反対だ。会場のリアクションからすると、無名の人間ではなさそうだ。多少ザワついている。
「味の首領こと、サンディイ・オータニ氏です!」
「皆はん、よろしゅう頼んます! 味のゲス野郎が満を持して、やってきましたでぇ!」
何よ、その肩書き! しかも自らゲスを名乗るとは! ヒール系なのか? またヘンなヤツが出てきおったでぇ! ハンバーグコンテストというより、奇人変人だらけの魔境になってきた!




