第59話 玉葱に始まり玉葱に終わる
―――――数日前。
「もう! 酷いでヤンス! あっしはペットではないヤンスよ! こうなったら、一人でボイン・ボッショク祭りを開催してやるでヤンス!」
みんなでタマネギ料理店に入ったら、メニューにタマネギ料理しかなくて、しかも、ペット扱いされたヤンス。腹いせにおいしい物いっぱい一人で食べるヤンス。ついでにゴッツン・ゴーがぶ飲み大会もするヤンス。コドクのグルメ満喫するヤンス! ボーイング・ボッシュート全開ヤンス! ……あれ、違ったかな? ボヨヨン・ロッキュート? なんかしっくりこないヤンス。
「……うんぬ。」
「……?」
なんか、モヒカン頭の雑魚が死んだみたいな声が聞こえたような? 周りを見ると……何もおかしい所はないヤンス! 物陰に隠しきれてないヘンなマッチョがこちらの様子を窺ってること以外はっ!
「そこで何してるでヤンス!」
「……ハハッ、ゲイリー。気にしてはいけないッス。怪しい者ではないッスよ。」
絶対怪しいヤンス! 気になるでヤンス! 体を物陰に隠しきれないマッチョが隠れているのはおかしいでヤンス! 変質者の類いでヤンスな! 通報してやるでヤンス!
「時に、そこのお犬様。何かお困りでわ、ないッスか? 俺っちに任せてもらえれば、ご希望にお応え出来るかもしれないッス!」
「お犬様じゃないでヤンス! 何かのカルト宗教とかの勧誘かもしれないから、お断りヤンス!」
怪しいマッチョが怪しい提案をしてきたでヤンス。これはヘタに誘いに乗ると、怪しい施設に連れ込まれて、身ぐるみ剥がされた挙げ句、洗脳されて、悪の戦闘員にされるパターンに違いないヤンス!
「そう硬いこと言わずに! 俺っち、この辺でとびっきりにおいしいステーキ店を知ってるッスよ。御馳走するッス! いくらでも食べていいッスよ!」
「そんなあからさまな誘いには……乗るヤンス!」
あっしの開いた口からよだれが滝のように流れ出るのを感じるヤンス! こんなチャンスを逃す訳にはいかないヤンスぅ!
「商談成立ッスね! 代わりと言ってはなんなんスけど……?」
「へあ? 何ヤンスか?」
頼みくらい何でも聞くヤンス! ドンと来いヤンス! でも、タマネギ一気食いとかは止めてほしいヤンス。死ぬヤンス。
「タニシさん、勇者さんのお仲間ッスよね? 俺っち勇者さんの弟子になりたいんスよ! 弟子になれるよう、タニシパイセンに口利きをお願いしたいッス!」
「アニキの弟子志望? 容易いご用でヤンス!」
おいしいお肉が食べれるなら、何でもやってやるヤンス! うへあっ、早く、お肉、ニクニク、マシマシ、マッシング、でヤンスぅ!
「そうッスか! マジうれしいッス! では約束の店にご案内するッス!」
マッチョについて店に行くヤンス。……ん? 何か紙切れが落ちてるヤンス? 何か書いてあるヤンス?
“こちら、スネーク。潜入に成功した……なんてね! ああ、これは君の方が似合うセリフだったね、シャロット?”
意味がわかヤンス? 誰が落としたんでヤンスかね? 何かのセリフでヤンスかな? でも気にしてはいられないでヤンス! お肉お肉!




