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第54話 悪夢から来た少年


「あなた……エピオンよね?」



 エルは仮面の戦士に問いかけた。エピオン?初めて聞いた名前だ。エルにこんな知り合いがいたのか? そういえば、彼女に触れるな、と言っていた。少なくともコイツ自身はエルのことを知っているみたいだ。



「……だったらどうだというんだ?」


「間違いないわ。そんな格好をしていても私にはわかる。この声を忘れるはずがないもの。弟の声を忘れたりなんかしない。」



 弟!? アイツか! 名前を知らなかったから何者かと思っていたら……。そういうことだったのか。でも、異空間で見たときと姿が違う。変な兜や不気味な鎧、黒い刃なんて使っていなかった。本当にアイツなんだろうか?



「なんか格好が違いすぎないか? お前、ホントにエルの弟分なのか?」


「あはははははっ!!!」



 戦士は大声で笑う。いきなりだったからビックリした! 何か笑う要素あったか? 俺、おかしいこと言ってないと思うけど?



「呑気な男だな、勇者ロア! お前の敵が目の前にいるのに!」


「なっ!?」



 戦士は兜を脱いだ。当然、見覚えのある顔が現れた。やっぱり、正体はエルの弟分だった。



「オレはお前の実力を見るために来た。ヴァル・ムング様から許可をもらっている。」


「ヴァルだと!?」


「オレはヴァル・ムング様の配下、暗黒騎士エピオンだ。倒せそうだと思えば、倒してしまってもいいと許可も出ている。」



 エピオンは自信ありげにアピールしてくる。とはいえ、お前は俺相手に二回不覚を取っている。一回目は気絶、二回目は剣を折った。異空間の中でとはいえ、だ。なんで、そんなに強気なんだろう?



「勘違いしているんじゃないか? オレがあの空間で力を発揮しきれているとでも思ったのか? 今も見せたようにこの“ダークソード”は強いぞ。お前が異空間でみせたように、この剣は折ること出来ない。試してみるか?」



 言うや否や、エピオンは黒い刃で鋭い突きを入れてきた。思わず反射的に避ける。それだけでは終わらず、なぎ払う追撃が来た。回避が間に合わないので、剣で受ける。ギリギリ体勢を崩さずにはすんだが、その衝撃は思っていたよりも強かった。異空間で戦ったときより強いかもしれない。



「これがオレの力だ。異空間には持って行けなかった本来の力だ。この力は魔王にも匹敵する。いや、オレが使うから魔王以上だろうな。アクセレイション・オーバーライド!」



 さっきとおんなじだ! ドス黒い波動が周囲に響き渡る。特に今は剣を通して接しているので、ダイレクトに伝わってきた。恐ろしい殺気だ。エピオンはそのまま力押しで剣をなぎ払い、俺をガードの上から吹き飛ばした。持ちこたえられるとか、そんなレベルではない怪力だ!



「ぐはっ!?」



 吹き飛ばされた反動でゴロゴロ転げ回る。体勢を立て直す前に、追撃が来る。上から突き刺す攻撃を何度も繰り出してきた。おかげで立ち上がるチャンスが巡ってこない!



「どうした勇者! 為す術がないようだな!」



 エピオンは突き刺す攻撃から一転、叩きつけるような攻撃を放ってきた。辛うじて避けたが、凄まじい衝撃波を伴っていたので、再び吹き飛ばされた。今度は反動でうまく立ち上がることが出来た。



「どうだ? あのままじゃ、面白くなかったから立たせてやった。」


「はは……、こりゃ、どうも。」



 はっきりいって、なめられている。いや、俺になめてかかれるくらい、コイツの強さは並外れている。魔王、いや、昔のヴァルに匹敵するくらい強いかもしれない。



「強いだろう? 当然だ。この鎧にはデーモン・コアが組み込まれているからな。そして、コレを使いこなせるのはオレしかいない。幼い頃から闇の力を持つオレだから出来ることなんだ!」



 魔王に匹敵する……例えとかそんなんじゃなかったんだな。本当に魔王の力を取り込んでいる。でもコアはどこで手に入れた? 俺が倒してきた牛、虎双方のコアは破壊済み。それ以外に倒された魔王がいたのだろうか? 入手経路は不明だが、本物なのは間違いない。コイツからは魔王と同等の気配を感じる。紛い物じゃないのは確かだ。



「この鎧はオレたち被験者から得られたデータを元にして作られている。オレや姉さんが辛く苦しい実験を耐え抜いたからこそ、実用化できたんだ。闇に浸食された経験のある人々を虐げてきた連中をこの力で根絶やしにする! 報いを受けさせてやるんだ!」



 エピオンから強い憎しみの感情を感じる。この世の全てを呪うかのようだ。同時に悲しみの感情も交じっているような? この感じどこかで……? 異空間で会った貧しい少年、あれはエピオンの幼い頃の姿ではないか? 確信はないが、可能性はある。でも、あの少年がこんな憎しみに囚われた復讐鬼になっているなんて、想像したくはなかった……。

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