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第43話 鯉の滝登り的なモノ


「……スター・バースト!!」


(ズドォォォォォォォォォォン!!!!!!)



 眩しい光と音で空間が埋め尽くされた。結局、魔術が放たれてしまった。これじゃ避けようがない。周り一帯が魔術に巻き込まれてしまっている。次第に光が収まり、被害の大きさが見えるようになってきた。魔術の直線上にあった家が瓦礫の山に変化してる! ここが現実の世界ではないといっても、これはやりすぎだ!



「これで終わりだ。私の邪魔をする者は誰であろうと許さない。」


「それでは永遠に儂は許されないんかのう。」


「な、何!」



 何事もなかったかのように、お爺ちゃんが立っていた。しかも、怪我一つしていない。着ている服とかもそのままだ。どうやって切り抜けたの?



「今度はどんな小細工を使ったんだ!」


「どんなって、儂ゃあ、ただお主の妖術に合わせてちょいと手を添えただけじゃぞ。要はさっきの坊主にしたことと同じじゃ。」


「馬鹿な! 魔術の心得も無しに防げるはずがない!」


「防いだのではないぞ。通り抜けただけじゃ。基本的に全ての道は一つの真理に通じておるものじゃ。力の奔流というものは川の流れや滝みたいな水の流れに似ておるのじゃよ。その中を魚が泳いでいるのと同じじゃ。儂はある意味魚の真似をしただけじゃ。」


「馬鹿な! そんなことが出来るはずがない!」


「出来たから、儂はここにおるんじゃろうが。」



 意味がわからない。魚の様にあの破壊の閃光を泳いだって事なの? 意味がわからなすぎて、頭が痛くなってきた。



「だいたい、お主の妖術は無駄に力を使いすぎなんじゃ。ただ破壊力だけを追求し過ぎておるのではないか? 物を破壊し、拒絶することしか頭にないようでは、いずれ大切な物を失ってしまうぞい。その妖力をもっと創造的な事に使うのを考えるべきじゃ。それがお主らの求める真理なのではないかのう?」


「くっ……!?」



 たしかにそうかも。ウチはあの婚約者みたいに攻撃する魔術は使えないけど、物を作ったりすることは出来る。魔力はあんまり強くないから大それた事は出来ないけど、あの人ぐらい魔力があればもっと面白い物作れそうな気がする。



「ホホホ。ご老人、大したお手前のようね。ますます警戒せざるを得ないわ。」



 急に例のオバサンが涌いて出てきた。でも、声が微妙に違うから、魔王がオバサンの姿をかりているだけかもしれない。



「お主か。ロアの奴はどうしたのじゃ?」


「ホホホ。ご心配なく。彼らはまだ生きているわ。そのおかげで私は苦汁を嘗めさせらたけれど。」


(グワァン!!)



 空間がいきなり歪んで裂け目が出来た。その裂け目から二人の人が飛び出てきた。ゆーしゃとエルるんだった!



「よお、みんな無事か! エルの本体を救出してきたぜ! あとは蛇の魔王を倒すだけだ!」


「アニキが戻ってきたでヤンスぅ!」



 ワンちゃんも普通に戻った。さっきまでビビリ散らして固まってたし、前みたいにちびってたのに。



「良かった。無事だったんだ。やるじゃん!」



 これで目的がほぼ達成した。敵の方ももう後がないんじゃない? これなら勝ったも同然なんじゃないの。



「ホホホ。なにか勘違いをしているようね。あなたたちがここへやってきた理由をお忘れではないかしら?」



 ここへやってきた理由? エルるんが里帰りしたかった理由は……お母さんの遺品を取り戻すためだったっけ? それが魔王と何の関係があるの?



「母の遺産のことを知ってるのね?」


「ホホホ。当然。この婦人と結託した時点で私の手中にあった様な物よ。いずれあなた達とやり合うときの駆け引きに使えると思っていたからねえ。只では手に入るとは思わない事ね。」



 遺産まで持っているなんて……。何でもかんでも、人質とかとっちゃうなんて、やっぱり魔王らしいな。どこまでも意地汚い。



「それにまだ切り札はあるわ。記憶の断片は戻っていないものね。これを最大限に利用しない手はないのよ。」



 エルるんの分身をウチらの視界から遮るように立ちはだかった。戦いに巻き込まれないように離れた所にいたみたいだけど、それが仇になっちゃってる。お爺ちゃんが戦ってる間にウチがなんとかしとくべきだった。



「ねえ、魔術師の坊や、私に手を貸すつもりはないかしら?」


「手を貸すだと? 馬鹿な、魔王と組むつもりはない!」


「へえ、このままではエレオノーラは勇者に取られてしまうのではないかしら? それにあなたも遺産に興味があるのではないの? あれには魔術の奥義書が含まれているかもしれないと、あなたも考えているのでしょう? 協力するのならあなたに差し上げてもよいわ。」



 婚約者は考えている。もしかしたら、魔王の提案を受け入れる事を考えているのかもしれない。でも苦しそうな顔をしている辺り、良心の呵責に悩んでいるのかも。魔王の誘惑に負けないで欲しい。



「……わかった。協力しよう。」


「おいおい、マジかよ! アンタ、そこまでしてエルと結婚したいのかよ!」


「君にはわかるまい。魔術師の家系を継ぐことがどれほどの意味を持つのかを。途絶えさせてはいけないのだ。途絶えさせる事は自らの先祖を侮辱する行為に等しい。当然、グランデ家も同様だ。」



 家を継ぐ事を理由に魔王と手を組むの? なんでそこまでして、エルるんにこだわるの? 遺産が目的? 他にも理由がある? エルるんの地位を復権させると言ってたけど、それと関係があるのかもしれない。ウチの友達を何に利用しようとしてるの、この人?



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