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第325話 そんなこんなで旅立ちます!


「結局、退学になってしまったでヤンスね。」


「しゃあないさ。俺ら、学長の独断で入学出来たようなもんだからな。新学長の下した決断だし、従わざるを得ない。」



 俺達は新学長から退学を言い渡された。とはいえ表向きだけだが。タルカスと学長を討伐したとはいえ、俺やタニシが学院にいることを不服に思っている人間も多い。そうした人達への配慮ということになっている。それ以外の理由はここに留まるよりも多くの人を救いに行く方が有益だと判断されたからだ。



「少しの間とはいえ離れ離れになるのはさみしいな。」



 紛争が終結し、行方不明事件は明るみに出た上で解決した。学長が急死したため、R教授が次の学長に就任した。だが条件付きの就任で、学院が復興を果たした後に辞任する意向を示していた。R教授は高齢な事を理由に最初断っていたそうだが、その条件でなら引き受けることになったそうだ。



「頻繁に手紙書くから、大丈夫。ここで勉強に専念してくれていいから。」



 俺達は退学処分になったので、やむを得ないが、エルやミヤコ、ロッヒェン達はそのまま学院に残ることになった。俺に付いていくと言い出しはしたが、折角の機会を奪うわけにはいかない。今は勉強に専念してもらった方がいい。それが最善だと思った。



「次の行き先にエルを連れて行くのは危険だから仕方ない。素性がバレたりしたら、処刑隊に捕まりかねないからな。」


「安心しな。コイツのことは俺とメイが見張っててやるから。浮気でもしたら縛り首にしてやるさ。」


「その前にモテないから。浮気すら出来ないよ、このポンコツゆーしゃは!」


「ああ、言われてみればそうだな。非モテのオーラ強すぎて無理だな、これは。」


「オイ!」



 非モテで悪かったな! 好き勝手い言いやがって! パーティーメンバーが一時的に俺とタニシだけになってしまうが、代わりにファルとメイちゃんが同行することになった。これは次の目的地にも関係している。



「ごめんね、エルちゃん。今回は法王猊下と聖女様が勇者さんに会いたいとおっしゃっているから……。」


「仕方ないわ。私が聖都に行くと大騒ぎになってしまうし……。」



 そう、次の目的地は聖都。クルセイダーズの二大派閥のもう片方、法王庁の本拠地に行くことになったのだ。向こうの言い分としては今回の件で救護隊を派遣したので、一度顔出しに来い、と言うことなのだろう。



「コイツでさえ、大事になるかもしれんしな。だから俺も付いていく。アイツらも結構胡散臭い事で有名だからな。」


「ファルさん。法王猊下と聖女様のことは悪く言ってはいけませんよ。」


「悪い。つい口がすべっちまった。」



 メイちゃんは否定していたが、ファルは裏があると警戒を呼びかけている。今回の同行は法王庁側への牽制が目的であるらしい。今までの学院同様、油断ならない組織だからだそうだ。



「あと、ジムやローラにもよろしく言っておいてくれ。」


「ええ。今日は顔を出したかったそうだけれど、まだ二人とも新しい体の調整の途中だし……。」


「とはいえ、普通に人間の体だったら意識さえ無い状態だったかもしれないしな。意識がある分、二人とも元気そうだったから安心したよ。」



 二人ともトープス先生とフォグナーの元で新しい体を用意してもらっている。タルカスが極秘に開発していた新型ボディを改良して使用するらしい。



「ジムとはまたどこかで顔を合わせるかもしれない。魔族との戦いが終わらない限りは。」



 ジムも俺達と同様、退学扱いになった。アイツ自身が希望して学院を離れることにしたそうだ。これからは魔法戦士として生きていくことを決心したらしい。しかもクルセイダーズに入団し、ゴーレムの体を生かし、格闘技の習得を目指すそうだ。俺と戦ったときに喰らった技に興味が出たのが切っ掛けらしい。ジェイに新たな弟子が出来そうだ。



「ローラもラヴァンと結婚するんだろ。末永くお幸せに、とでも言っておいてくれ。」


「うふふ、別に結婚するとは言ってなかったわよ? 今後、かけがえのないパートナーとして生きていくそうよ。」



 ローラは俺が手術している間の時間稼ぎをしていたそうだが、その中で愛の大告白をしたらしい。俺があの場に現れるまでの間にそんなことが起きていたとは思わなかった。後から聞いて仰天したのは言うまでも無い。なんかあの時のラヴァンが吹っ切れた様な顔をしていたのは、そういう理由があったからなのだ。



「そういえば、アイツは…トニヤはどこへ行ってしまったんだ?」



 アイツとは例の実習島以降、顔を合わせていない。目撃したという話も聞かない。学院を離れたのだろうか?



「例の銀仮面と関係があると言っていた小僧のことか? 銀仮面と共に逃げたんだろうさ。雇い主の学長がああなってしまってはどうにもならんだろうからな。他に雇い主がいた可能性もある。」



 銀仮面は学長の命で動いていたとはいえ、あくまで雇われているだけの様にも感じた。あの鎧自体学院で作られたという感じがしない。他の勢力が提供した可能性がある、とファルは分析していた。あと、相棒として現れた金色の方の正体も気になる。銀仮面とはお互いかばい合う仲だったらしいので、もしかしたら正体は……と考えずにはいられない。



「今後も警戒した方が良さそうだぜ。未知の技術満載の装備だったからな。ある程度財力のある組織が関わってるだろうな。」



 警戒か……。ヴァルもそれらしい事を言っていたな。あの戦いの最中、よからぬ気配を持った者が遠くから監視していたと。



「まあ、色んな勢力から狙われてるからな、俺は。」



 しかも、二人だ。片方はおそらく魔王。もう片方は魔王に似た気配を持っていたという。例えるなら“鬼”。激しく荒ぶる殺気を放っていたそうだ。異質な気配だったことからこの国の者ではない可能性があると言っていた。もしかしたら、宗家が言っていた“蚩尤一族”が関係しているのかもしれない。



「小難しいこと言ってないで、早くバカンスに行くでヤンスよ!」



 聖都へ向かう前に寄り道する事になっている。サヨちゃんからの手紙には今回の報酬的な物が同封されていた。新たなる旅へ赴く前に体を休めていけと、宿泊や食事のタダ券が入っていた。……なんでそんなコネがあるんだ? 相変わらず“味の女帝”の豪腕ぶりは凄まじい。



「まあ、短期間だがバカンスではあるか。サヨちゃんからのご褒美だからまずはそこで羽休めしてから、考えるとしよう。」



 何でも、バカンスの地にはタニシの友人がいるらしい。付近の牧場を経営しているそうだ。そこで昔ホームステイをした時に仲良くなったらしい。



「そうね。今は楽しんできてね。今後休む時間がないかもしれないから。」


「じゃあ、行ってくる。みんなも元気でやれよ。」



 再開するまでそれほど長くないということを期待しながら、次の旅に向かうことにした。そういえば……アラムさんの件は残念だったな。他に仕事が入ってしまったらしいので、俺との同行取材は延期となってしまった。あんな大事件が発生した後だ。その詳細を取材する事にでもなったのだろう。

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