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第324話 任務完了……?


「なんか色んな意味で後味の悪い結果にしてしまってすみません。」



 トレ坊先生をはじめとして、トープス先生、フォグナーやクエレさんといった関係者が集合している。聞かれてはマズい情報もあるため会合は仮想空間で行われた。“学生行方不明事件”の調査という名目で始まった本件。事の顛末をクエレさんに報告するために当事者達に立ち会ってもらっている。



「いえいえ。色々と大変な目に会ったみたいですね。サヨ様も肝を冷やしておりましたし、無事生還されたという事でホッとしております。」


「些細な事件が学院全体を巻き込む紛争に発展するとは誰にも想像できませんよ。この件を影で操っていた学長が全ての根源だったとは……。」



 ちょっとした事件から、陰謀にまでつながっていき、学長が意図的にタルカスが反乱を起こすように仕向けていた。加えて勇者の抹殺まで行おうとした。



「学長が手を引いていたとはいえ、タルカスの暴走を止めることが出来なかったのは私の責任です。」


「トープス先生の責任ではないですよ。あなたの言葉に耳を傾けなかった彼らがいけないのです。あなたの責任というのなら、ゴーレムである私も当てはまるのでは? 自分を責めすぎてはいけませんよ。」


「学長……フェルディナンドの悪意がタルカスを操っていたのです。誰かが阻止する動きに出たとしても、彼が強引に軌道修正するのは必然だっと言えます。」



 トープス先生は説得できなかった事を気に病んでいるようだ。それをフォグナーとトレ坊先生がフォローしている。トープス先生の落ち込み様は酷かった。事態が収束してからはマシになったが、よっぽど学長に酷いことを言われたんだろうな。



「目的を実現できなかった私に比べて、勇者殿は立派に事を成し遂げられた。戦いという形ではあったがあれは対話に近いことを実現していたと思います。」


「いや、俺こそ大失敗ですよ? 結局、学長死んじゃったし。」



 あの時の戦い、俺と学長の殴り合いは一部の人には見えていたらしい。あの場に来れたのは数人だけだったが、外側から見ていた人は割といたようだ。これも“勇気の共有”が引き起こした現象らしい。



「あれは殴り合いではありましたが、学長の隠れた本質を表面に暴き出していたと思います。勇者殿に武術を禁止するほど嫌っていた人が、武術を使って勇者殿を圧倒していました。しかも何をしているときよりも楽しそうに見えたのは私だけではないはずです。」



 それはトープス先生だけではなく、他の何人かも言っていた。学長をこちらの提示したルールに従わせただけでも、お前は勝ちなのだと。しかも、学長自身が罠にはまったと自覚させないほど自然にそれを行っていた。あれほど真剣に殴り合いをする姿は誰も見たことがなかった、とも聞いた。



「最終的に本人のミスとはいえ、自滅へと追いやったのは見事という他ありません。普段の本人にはあり得ないようなミスをしていました。それに気付かせないほど本気にさせていたのですから。」



 今度はトレ坊先生が俺の作戦の巧みさを讃える。先生は学長を罠に嵌めたと思っている様だが、俺にそんなつもりは毛頭無かった。ただ、対等な条件で決着を付けたかった。そういう事しか頭にはなかった。



「他の誰も想像できない形で収束させたのは、勇者殿の理想が立派だからこそなのです。私も見習って今後に役立てていこうと思っています。」


「あなたの行動が多くの人々に勇気を与えたのは間違いありません。長く生きてきたゴーレムの私でさえ心動かされました。」


「でも、タルカスはまだ生きているはず。アイツはまだ目的は捨てていないはずだから、いつかまた、俺と対峙することになると思いますよ。」



 人々は感謝してくれているが、物事の根本を解決できていない。学長は事故で死んだようなものだし、タルカスは説得しきれずに逃がす結果になった。アイツは本体を学長に破壊されたが、ヘイゼルの義手に緊急用の記憶装置を仕込んでいたので、まだ生きているらしい。タニシとセクシー先輩がそれを目撃したらしい。ヤツらは追い込まれた後に逃亡したらしい。



「いえ、あなたとの戦いで彼の信念は揺らいだものと考えています。以前の彼は復讐心に囚われていましたが、少し弱まっている様にも感じました。学長の呪縛からも解放されましたから、元の性格に戻っていく可能性もあります。」



 長い付き合いのあるフォグナーはタルカスの変わり様をそう分析しているようだ。確かに時間を経れば変わっていくかもしれない。ただ問題なのは一緒にいる少女が復讐心に囚われているということだ。タルカスがヘイゼルに振り回されるということはないだろうが、二人の関係性もいずれは崩れ去ってしまうのかもしれない。



「何はともあれ、今回の依頼の完遂、ありがとうございました。サヨ様も喜んでいられると思います。今後も手厚く支援すると申されていましたので、今後の活動にお役立て下さい。」



 と言ってクエレさんは手紙を手渡してきた。サヨちゃんからの手紙のようだ。資金援助をしてもらっているのは毎度のことだが、今回の報酬的な物なのだろうか? また後でゆっくり読ませてもらうとしよう。

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