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第319話 梁山泊名物……!?


「もちろん、特別ルールで行う。それは……、」



 俺は義手を外し、額冠を外した。義手は外したのだから、武器は使わない。額冠は外したから勇者の力は使わない。時々にじみ出てくる力もあるがそれも極力使わない。どれだけ抑えられるかわからないけど。



「あえて自分から不利な状況に持っていくなんて、馬鹿だぜ! しかも人類の存亡がかかっているっていうのによ! でも俺は……そういう馬鹿が大好きだ!!」



 兄さんは俺を馬鹿とは言いながらも、気に入ってくれたようだ。でも、それは理由のうちの半分に過ぎない。



「素手でやり合うとでも言うのか? 馬鹿げている! 野蛮人の手法には付き合うつもりはない!」


「へえ? このルールを聞いて何か思い出すことはない?」


「ない!」


「アンタが俺の入学を認めるために出した条件と同じなんだけど? わざわざアンタに合わせたんだ。これなら引き受けるよな?」


「くっ!?」



 ハンデとして提案したのも確かだが、あえて学院に来た条件と同じにしてみたかった。自分がどれぐらい強くなったのか確かめたかったのだ。それで勝てないのならここに来た意味がない。あえてここに来たけじめを付けたかったんだ!



「さあ、どうする? 今のアンタは拳だけの俺にさえ勝てないって言うのかい?」


「貴様らの野蛮な行いに付き合ってられん! 私は戦いすら拒否する! この場から即刻出て行け!」



 逃げるんじゃなくて、「出て行け」か。そんな状況じゃないのに、虚勢を張っている。プライドが高いだけで、どこまでも自分だけが優位に立っていると思いたがっている。情けない男だ。



「アンタ、ちょっとくらい体張ってみろよ? 神を名乗るくらいなら、それくらいの覚悟くらいは見せてみろ。」


「私に対してその様な物言い……許さんぞ!」



 学長は乗ってきた。さすがにプライドを刺激されたのだろう。このまま引いたら更にみっともなくなってしまうからな。



「では、私がこの戦いの立ち会い人となろう。全ては公平に。どちらにも肩入れしない事を誓おう。」


「勝手にし給え! 私は誰の手助けが無くとも戦える。野蛮人などには負けん!」


「さあ、おっ始めようぜ! 史上最大の戦いを!!」



 開始宣言からの先制攻撃! それは以外にも相手の方から来た。俺の接近に合わせたストレートパンチだった。もちろん俺はガードすら出来ずにまともに顔面へ食らってしまった!



「ぐあっ!?」



 思わぬ一撃、思わぬ威力に俺は即刻ダウンしてしまった。魔術師であるはずの学長がこんないいパンチを持っているなんて。武術を嫌っているクセに意外だった。痛みを堪えつつ起き上がる。一本目は取られたが、そのままダウンしていたら負けと見なされかねない。そうするしかなかった。



「武術嫌いな割には素敵なパンチをお持ちのようで……?」


「武術の心得くらいはある。普段使うまでもないから使っていなかっただけだ。天才は何でも難なく熟すのが常識だ。貴様とは出来が違うのだ!」



 くそっ! 間違いなく、俺よりは天性のセンスはありそうだな。経験だけでは才能を超えられないようだ。それはイヤというほど今まで経験してきたことだ。落ち込んでいる暇なんてない。ひたすら攻めるしかない。



「もしかして、また“風読み”とか使ってない?」



 攻めても全部躱されるか、ガードされてしまっている。こうなるとアレを使っているのでは、と思いたくもなる。



「使っていない。貴様の攻撃など容易に躱せる。魔術など使うまでもない!」



 心得があると言うだけのことはあった。護身術として習得していたのかもしれない。その割には現実では魔術に頼りっきりで、武術の要素はほとんど無かった。両方使えばもっと強いはずなのに。



「無駄だ! どう足掻いても、地力では貴様に勝ちはあり得ないのだ! このようなルールに自分で持ち込んだ時点で貴様は負けていたのだ!」


「ふぐっ!?」



 カウンターで腹部に一撃をもらってしまった。これで二度目のダウンとなった。二本立て続けに負けてしまったのだ。それでもすぐに起き上がる。負けているとはいえ相手に休ませる暇を作ってはいけない。俺はそういう部分で勝負を仕掛けていくしかないのだ。



「来いよ。俺からばっかりじゃつまらないだろ?」


「負けている癖に生意気なことを言いおって。後悔させてやる!」


「生憎、負けることには慣れてるからな。」


「負け犬根性が染みついているのだな。恥を知れ!」



 それでもめげない。折れない。諦めない。俺の勝ち筋はそれしかないから。それを十分生かせると踏んだから、この対戦方式を選んだんだ。今は負けていても、勝てる。俺の強さが十分通用すると思ったから、不利に見える賭けに出たんだ。

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