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第317話 思い返せば……、


「凄いな、これが“魔王の復活(リザレクション)”か!」



 俺の体は次第に回復していった。千切られた四肢は血管や神経から先につながっていったため、最初の方は激痛が再発した。そこから痛みが緩和されていき、骨も再生していった。義手まで元通りだ。もはや体の一部と化しているな。



「本当に他人の能力を再現しやがった! とんでもねえぞ、これは。」



 俺に「お前なら出来る」と励ましていたファルでさえ驚いている。信じてなかったワケではないんだろうけど、発現の早さについて驚いてるんだろう。不器用な俺がアッサリと他人の能力を使っている。コレには自分もビックリしている。



「“|勇気の共有《Cling Together》”……。ひょっとしたら私達はすでにその恩恵を授かっていたのかも。」


「どういうことだ?」



 エルは俺の再生を見守っている最中、何かに気付いた様な素振りを見せていた。それは今話そうとしている事に関係あるのかもしれない。



「私は先生から技を教わり、流派梁山泊の奥義を身に付けるまでに至りました。自分でも驚くぐらい武術のセンスがあったからなのかな、と最初は思っていました。」


「ああ。確かに最近始めたにしては上達が早かったみたいだな。アンタの事情を聞いた時は驚いたぜ。俺もアッサリ追い抜かれるんじゃねえかと焦ったぐらいだ。」


「でも、今、気付きました。この現象は彼から力を借りていたから出来たんだって、思えてきたんです。」



 俺は特に何も教えたりとかしてない。狐面、レンファさんからしか教わってなかったはず。俺の戦っている姿を見て、という可能性もあるが、俺とエルの戦闘スタイルはあまりにも違う。月とスッポンくらい違う。もちろんスッポンは俺の方だけどな。



「私だけじゃないです。ファルさんもそうなんじゃないですか? 勇者の奥義を修得しましたよね? もしかしたら剣技もそうなのかもしれませんよ。」


「俺が? コイツの影響で? 冗談はよしてくれよ。こんな馬鹿の影響なんか……。」



 ファルは照れくさそうに俺とエルから顔を逸らした。エルはシャイニング・イレイザーのことを言ってるんだろうけど、剣技はどうなんだろうか? 俺と共通点が全くといっていいほど、ない。



「彼自身の能力だけじゃなくて、額冠の歴代の勇者達から授かった可能性はあると思います。勇者はそういう力を使えると、サヨさんが言ってました。」



 俺は以前、剣豪勇者ムーザや先代のカレルの力を借りたことがある。無意識的に他の人達の力も借りているかもしれない。特にヴァルとの対決の時はそうだったと思う。あの後は数日、意識が戻らなかったしな。



「みんな、少なからず影響は受けていると思います。サヨさんやイグレスさんもそういう話はしてましたから。今回はそれを本格的に機能拡大して使っているんだと思います。」


「拙者もその意見に賛同しよう。拙者自身も今、傷の修復に使った。皆の力を享受出来る様になった証拠がここにある。」


「侍!?」



 侍は俺やエルと同様に傷だらけになっていたはずだが、それが一切消えている! 侍自身は回復魔法の類いは一切使えないはずなのに。俺と同様に“魔王の復活”を使った結果なのだろう。



「使いこなすの早くない?」


「そうでござろうか? 我が身の回復を一心に願っただけでござるよ。」



 相変わらず手の早いヤツだ。なかなか侮れん、恐ろしい男よ! 敵に回したくはない男だが、たまに戦いを挑んでくるから困ったものだ。



「これからどうする? あの戦いに参戦する余地は俺らにはないぜ?」



 ファルは学長とヴァルの戦いぶりを見ながら言う。竜騎兵と嵐が決戦を繰り広げている。加勢はしたいが、下手に手を出すと巻き込まれかねない。ヴァルだって手出しされるのは嫌う性格だしな。



「英雄殿に任せておれば良い。お主は本体を見つける方法を模索するのだ。」


「……実はもう、本体の居場所へと向かっているんだ。」


「……は!?」


「どういうこと?」



 あれ? 俺、今なんて言った? おかしいこと言った? ん? まあ、おかしい事を言ったような気がするが、自然と無意識的にそんな言葉が頭に浮かんできたのだ。しかも、嘘ではないという実感もある。ナニコレ?



「……わからない。でも、実感としてはあるんだ。もう一人の俺が学長のいる次元に向かっているのが。俺以外に付き添い人が二人いる……? 誰かはわからないけど。」


「何言ってんだ、お前……?」


「不思議と私もそんな予感がします。彼からそんなイメージが伝わってくるんです。」


「それも“勇気の共有”の影響か?」


「ええ……多分。」



 不思議な感覚だった。ここではないどこかで俺が行動している。学長の本体の居場所へ向かっている。それは間違いないようだった。そしてそれは現実にも影響が現れた。



「……!? き、貴様!? 私の本体の居場所が何故わかった! そこにいるというのに何故だ!」



 学長は突然動揺し始めた。確かに今……本体を見つけた様な気がする。もう一人の自分が辿り着いた。



「学長殿、貴公の命運は尽きたようだな。後は時間の問題。滅びゆく姿をじっくりと観察させてもらおう。」


「まだ終わっていない! 負けるわけにはいかんのだよ!」



 王手に手がかかったのは間違いない。ここからどうやって学長を倒すのだろう? 後はもう一人の俺に命運を託すしかない。

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