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第304話 風読み《バンデルオーラ》


「同じ風の魔法でもそれはセーフなんだ?」


「そりゃフカしてはないからな。風属性の魔力を凝縮しただけだ。風自体は発生させてなきゃセーフなんだろうよ。」



 何か良くわからないルールだな。風魔法全部が禁止になるわけではないようだ。逆に魔法ではなくても、風が発生するような行動は却下される。この事をよく考えて抜け道がないか模索するとしよう。



「無い知恵絞ってないで、とっとと手を動かせ! 相手に行動の隙を与えるな!」


「わかってるよ、そんなこと!」



 ファルはもう既に行動に移っていた。二本の剣で矢継ぎ早に攻撃を仕掛けている。ごく自然に剣術を披露している。見てるとアイツが魔術師であることを忘れてしまいそうな感じがする。余程強い本職でなければ、アッサリ負かされそうな雰囲気だ。



「くそっ! 二人がかりでも全然当たらないじゃないか!」


「そりゃ、俺らが風起こしまくってるからな! 読まれるのも当然だ。」


「フフ、無駄なあがきがどれだけ続くかな?」



 これだけ俺達二人が攻撃の雨あられを浴びせているにも関わらず、涼しい顔で攻撃を躱している。まるで心地良い風を楽しんでいるかのようだ。でも一向に相手からは仕掛けてこない。何故だ?



「なあ学長さんよ? なんで攻撃を仕掛けてこないんだ?」


「貴様らのような馬鹿共に付き合ってやる必要がないからな。最低限の力しか使わない。貴様らに私は最低限の力で勝てるということを思い知らせたいのだよ。」


「最低限……。随分と余裕なこった!」



 最低限? 回避だけに専念しているのに最低限の力は使っているんだ? 俺は学長の言葉に違和感を感じた。風を読むのに魔力は使ってないんだろうが、“無風”は? 今も効果が続いているということは、これをずっと維持し続けているのだろう。ひょっとして、“無風”を維持し続けている理由と、攻撃してこないことに関係があるんじゃないか?



「最低限か! じゃあ、俺も最低限にしてみるわ!」



 俺は攻撃を取りやめ、少し離れたところに移動した。そこにドカッと座り込む。



「あん? 何やってんだ、お前?」


「諦めたのだな。私に対して負けを認めたか?」


「いいえ、あきらめてないよ! 最低限を気取っているだけです!」



 俺の奇行に二人は呆れているようだ。それでいい。味方も欺いてこそだ。とはいえ、二人ともよそ見をしながら戦いは続けている。顔だけを俺のいる方向に向けている。



「サテ、ドウシテナノカ、ワカルカネ?」



 学長のセリフをマネしてみた! 意図のわからない行動を問うのなら、同じ対応をしてやろうじゃないか。



「……似てねえよ! ちょっとお堅い雰囲気出しただけで、賢そうな感じを出せると思ったら、大間違いだ。お前のはどうやっても阿呆さが漏れ出てるから無理な話だけどよ!」


「漏れてないわ! アホは漏れるモンじゃないから!」


「私を相手にしながら、戯れるとはいい度胸だ。まあいい。人生最後の戯れなのだから存分に楽しんでおくことだ。」



 学長の目を欺けているのか? 反応からすれば、俺がふざけているように見えてるだろう。あくまで表面上は気付いてないと見せかけているのかもしれない。でも気にしちゃいけない。不安に思えばかえって気付かれるだろう。道化を演じきるんだ!



「相棒が戦意を喪失したのに、貴様はまだ続けるのか、無駄なあがきを?」



「無駄じゃないから足掻いてるんだ。相棒が戦いをやめても、仲間はアイツだけじゃない。こうしてる間に他の連中もここに戻ってくるだろうからな。」



 エルや侍達がどこまで飛ばされたのかはわからない。でも、いつかはここまで戻ってくるだろう。その時間稼ぎをする価値はある。数が揃えば、学長の魔法を打ち破る知恵が絞れる可能性も高くなる。“三人揃えば文殊の知恵”とか侍も言ってたしな。



「それにな、相棒が奇行を始めたら、何か面白い策を思いついたときなんだ。そうなれば俺は陽動に徹するだけでいいのさ。」



 その時ちょうど、ファルの立ち回りのおかげで、学長が俺に対して背を向ける位置関係になった! 今がチャンスだ! この時を待っていた!



(……パァン!!!)



 峨嶺辿征を使った。これを使っても“無風”のように効果が持続する魔法は解除できない。出来ても一瞬だけだ。



「私の見えないところで魔術無効化を使ったな? “無風”を解除するつもりなのだろうが無駄な事だ。私が解除しない限り効果は永続する!」


(……ザンッ!!)



 学長の肩口に切り傷が発生し、血しぶきが上がった。俺が無明八刃を放ったからだ。剣を振ったことを悟られないように、一時的に峨嶺辿征で“無風”を途切れさせた。一瞬だ。ほんの一瞬にかけて、相手の防御を掻い潜る攻撃を放った。



「ムウ! 何をしたのかは知らないが、防御障壁を掻い潜るとは大したものよ!」


(ブオァッ!!!!)



 俺は学長の放った風に吹き飛ばされた。だが、それは学長が“無風”を解除した事を証明する行為でもあった!



「倍返しに切り刻んでくれる! 散々苦しませてから……は!?」


天降雷刃衝てんこうらいじんしょう!!」


(ドズッ!!!!)



 その一瞬の隙を突いて、侍が学長の頭上から落ちてきて肩から串刺しにした! 流石にこれは致命傷だろう。以外とあっさり片が付いたな!


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