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第300話 嵐VS乱気流


「人払いは済んだが、次はゴミ掃除をせねばならんな。」



 ほとんど人がいなくなたところで、学長はゴミ掃除なんてふざけたことを言い始めた。ゴミとは何なのか? 戦いを前にしてするようなことなのか?



「ぐ……ううっ!?」


「た、タルカス!?」



 俺やファルから離れたところにいる、トープス先生達に異変が起きた。タルカスの体が宙に浮いている。タルカスが自らそんなことをするはずがないので、学長の仕業だろう。



「私の長きにわたる実験は失敗に終わった。結局、人工生命は人を超えることは出来なかったのだ。貴様の破壊を以て実験を終了とする。」


「や、やめろーっ!!」



 制止する俺の声は届かず、タルカスはより高い場所へ巻き上げられていった。学長を直接攻撃して止めようと思ったが、突風を吹き付けられ、近付くことすら出来なかった。



「勇者よ! 私の無念を晴らしてくれ! 私のような憐れな存在を二度と生まないような世の中にするのだ!」


「無理だな。人間はどこまで行っても進歩はせん! いくら切っ掛けを与えようと無駄だったのだ!」


(ドォォォォォォン!!!!!)


「タルカスーっ!?」



 空高く巻き上げられたところで、タルカスの体は爆散した。これではタルカスを再生することは出来ない。頭脳装置が残っていれば他の体を用意することも出来たはずなのに。これでは望みを絶たれたも同然だ。タルカスは完全に死んでしまったのだ!



「新たなる時代を作り上げる狼煙代わりの花火といったところだな。汚い花火ではあるがな。愚かな者が辿る末路としては当然の事だ。」


「よくもタルカスを! 散々弄んで失敗とわかれば排除する。それがあなたのやり方なのですか!」


「これはあまりにも短絡的ではありませんか?これから、勇者殿と共に歩める未来もあったでしょうに!」



 タルカスへの仕打ちにトープス先生とフォグナーは遺憾の意を学長へとぶつけている。この後に及んでも、学長は平然とした態度を取っていた。



「短絡的? 違うな。私は損切りをしたのだ、フォグナー。失敗したのならば損害を最低限に抑えるため、早めに見切りを付けるのだ。そうすれば新たなる目的にリソースを費やす事も出来よう。」


「タルカスを物扱いしやがって! アイツはゴーレムだったけど、紛れもなくその心は人間だったぜ!」


「勇者、貴様のような者には発言権はない。あえて答えてやるが、人間と同程度にしか進歩出来なかったからこそ、失敗だったのだよ。」



 失敗だから切り捨てられた。タルカスの身の上は俺自身の人生と重なる物があった。俺も梁山泊に切り捨てられ、放浪の旅に出る羽目になった。その後、俺は偶然なのか運命によるものかはわからないが勇者になった。タルカスも生きてさえいれば、俺のように他の目的を得られたかもしれない。その望みを学長が絶った。そう思うと、怒りが収まらない! 可能性を切り捨てるなんてことは許される事じゃない!



「じゃあ、俺がアンタを切り捨ててやる! タルカスのような事を二度と繰り返させない様にするためにな!」


「貴様如きに何が出来るというのだ?」



 俺は猛然と学長のもとへ突進していった。この男を野放しにしておいてはいけない! これ以上被害者を増やしてたまるか!



「トープス、フォグナー、貴様らはこの男に希望を持っているようだが、私の前では無力に過ぎないということをよく見ておけ!」



 二人を退場させていないのはそのためなのか。無残に俺が負けるところを見せつけるつもりでいるらしい。そんなことは覆してやる!



「破竹げ……、」


ヴァキュウム・レイブ(真空・舞踏)!!」



 学長に向けて剣を振り下ろそうとしたその時、妙な感覚に襲われた。耳が……鼓膜が押される様な感覚に見舞われたのだ!



「ヴォルテクス・カノン!!」



 背後から異常な風圧が叩きつけられ、俺は学長の後ろ側へ吹き飛ばされた。これはファルだな。何をするんだ! 邪魔なんかして……。



「気を付けろ! 無闇にこの男へ斬りかかるな! お前は危うく、空気に握りつぶされるところだったんだぜ!」


「え、ええ……?」



 俺は一瞬、訳がわからなかった。ファルは俺を助けてくれたらしいが、学長は何をしたのだろう? ぱふゅーむ・れいく、とか何とか言ってたような?



「一思いに殺してやろうと思ったのだがな? 楽しい踊りを舞わせて、タルカスの二の舞にするのも一興かと思ったのでな。」


「良く言うぜ! 人が圧縮される様が踊りなモンかよ! アンタがそのつもりなら、俺らが楽しく踊らせてやんよ!」



 え? 俺って圧縮されて殺されるところだったの? それが踊り? 相変わらずえげつない事考えるな、このイカレ学長は! ファルの宣言通り、休む間もない攻撃の雨あられをお見舞いしてやる!

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